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第194話 和食。シュレア


 今日は新しく買った防刃ジャケットを着て館の書斎に転移した。

 お供はリュックの中のタマちゃんと右肩の上のフィオナ。いつも通りだ。


 午前7時に書斎に現れたところ、書斎では美人が待っていた。

「おはよう」

「おはようございます」

「アイン、美人だな」

「ありがとうございます。

 食事の準備はできています」


 アインはストレートの黒髪を肩口で揃え、切れ長の目、瞳は茶色。薄目の唇。鼻はそこまで高くはないがまっすぐ伸びた鼻梁がスッキリして上品な顔立ちだ。

 しかも俺の知人と違って色白だ。

 日本人顔ではないが西洋人顔でもない。

 館の前の主人の関係者の顔立ちなのかもしれない。


 タマちゃんの入ったリュックを下ろして、アインと一緒に書斎を出て食堂に下りていった。

 アインとは途中で別れ、食堂に入るとミアが椅子に着いておとなしくしていた。

 カリンとリンカも食事できればよかったが、そこは仕方ない。


「ミア、おはよう」

「イチロー、おはよう」

 ちゃんとイチロー呼びだった。小さな女の子にこの呼び方で呼ばれると呼び捨てというより逆に親しみがあっていいものだ。


 すぐにワゴンで料理が運ばれてきた。

「マスター、おはようございます」

「おはよう」

 運んできた自動人形もアイン同様日本語を話せる人間、それもかなりの美人だ。

 俺の好みに合わせてくれたのか? それとも前の主の好みなのか?

「名まえは?」

「16号です」


 16号によって料理の載ったお皿とうつわそして茶碗が並べられていった。

 おー、日本食じゃないか。昨日の今日で日本食なのだが大丈夫だろうか?


 長四角のお皿には焼いた鮭かマスの切り身。皮が若干焦げているところが食欲をそそる。

 そして少し大きめの器には豚汁。

 大きく膨らんだだし巻き玉子。

 そして白飯が盛られた大き目の茶碗。

 フィオナ用には小皿にハチミツが用意されていた。


 俺の前には箸置きが置かれその上に箸。

 ミアの前にはナイフとフォークとスプーンだ。

 そして最後にテーブルの上に醤油差しが置かれた。


 食材が揃っていないなかでよく作ったものだ。

 ワゴンの上にはおひつが置いてあった。器もおひつも半日で用意したということか。

 しかも、おひつのフタとおひつの間には布巾が挟まれている。なるほど、うちでは電気ガマから直接茶碗にご飯をよそっているけれど、フタに着いた水滴がご飯に落ちないように電気ガマのフタとカマの間に布巾を入れてるものな。そんなこと俺が買ってきた本に書いてあったのだろうか? 状況から判断したのだろうか? たぶん後者だな。 

 

 テーブルに料理を並べ終えた16号が「お代わりは沢山あります」と言って一歩下がった。

「それじゃあ、いただきます」

「いただきます」


「イチロー、これは何?」

 ミアが茶碗に盛られたご飯を差して日本語で俺にたずねた。

「これはご飯だ。パンの代わりになるものだ」

「ゴハン、ゴハン」と2回言ってミアはフォークで茶碗からご飯をすくって口に運んだ。

「#%&」

 何と言ったのか分からないが、生まれて初めてご飯を食べたのだろうから、変わった味、とかそんな感じだろう。


 俺もご飯を口に運んだ。もしもうまく炊けてなかったら、料理がいくらうまくできていても台無しだからな。

 ご飯は少し柔らかめに感じたが合格だ。いや大合格だ。


 さて、おかずの方はどうかな? まずは焼き魚。

 さすがにこれは失敗しておかしな味になっていることはないだろう。


 焼き魚に醤油差しから適量の醤油をかけた。

 俺が醤油をかけたところを見てミアも真似をして醤油差しで焼き魚に醤油をかけた。

 かけ過ぎることもなく、ミアも適量の醤油をかけた。


「いまかけたのが『醤油』だ」

「ショーユ?」

「そう、ショーユだ。ソースの一種だ」

「ショーユ、ショーユ」


 ミアは醤油をかけた焼き魚をナイフとフォークで口に運んだ。

 俺も箸で身を取って口に運び、すぐにご飯を口に運んだ。

 うまい。まだ焼きたてだしな。


 さて、次は豚汁だ。

 これは味噌とだしの素が適量入っていればいいのだが、お味はどうだ。

 具は大根、ジャガイモ、ニンジン、玉ねぎ、そして豚肉だった。

 まず器を手に取って味噌汁をすすった。

 いい味してる。

 中の具も食べてみたが間違いなく豚汁だ。うまい!

 俺の真似をしてミアも豚汁をスプーンですくって口に運んだ。

 今回も「#%&」と言っていた。

 その後俺の方を向いて「おいしい」と言った。

 ミアの口にも合ったようだ。


 そして素人目にも最大の難関と思われるだし巻き玉子だ。

 箸で挟んで切ったらだしがしみ出てきた。

 かなりだしが入ってる。

 口に運びゆっくり咀嚼そしゃくする。

 うまい。ちゃんとしただし巻き玉子だ。


 ミアがまた俺の真似をしてだし巻き玉子に手を出した。

 今回は最初から「おいしい」と言った。

 和食のおいしさが分かったようで何より。


 次に俺がご飯を口に運んでかみしめていたら、ミアもまねてご飯を口に入れよくかんで飲み込んだ。

「ゴハンおいしい」

 そうだろう。そうだろう。

 おかずと一緒に食べればご飯のありがたさが分かるはずだ。


 ご飯と豚汁をお代わりしたところで、16号によって紅茶が淹れられテーブルの上に置かれた。

 紅茶でも和食に合わないというほどではなかった。が、合っているというわけでもない。

 次回ここに来るときには忘れず緑茶を買って持ってこよう。


 あと、味付け海苔が欲しいところだ。お茶漬けの素も用意してもいい。

 体に悪いかもしれないがカップ麺も買ってみるか。たとえ体に悪くとも治癒の水もあるしそれ相応の果物もあるから心配ないだろう。

 今度スーパーに行ったら、ちゃんと色々見て歩いて良さそうなものが他にもあれば買っておこう。



……。


 ご飯と豚汁を一度お代わりしただけでお腹いっぱいに成ってしまった。

 ミアも満足そうにしている。

 濡れたナプキンを16号が手渡してくれたので、それでフィオナの手と口を拭いてやった。

 フィオナも満足したようで俺の右肩に戻った。


「ごちそうさま」

「ごちそうさま」


 ミアと連れだって食堂を出て2階に上がり階段を上ったところで別れた。



 書斎に戻ったらアインがいたのでミアのいた街シュレアに行こうと思うから、ソフィア以下に用意ができたらこの部屋に来るよう伝えてくれと言っておいた。


 アインが部屋を出ていったところで俺は机の椅子に座って寛いだ。

 社長の椅子など座ったことはないけれど、この椅子は社長の椅子くらいゆったりして座り心地のいい椅子だ。


 リクライニングは付いていなかったがその気になって腕を組み、ふんぞり返って目をつむっていたら、扉が開く音がした。


 ソフィアに連れられてミアと銀髪と茶髪のかわいい女の子がふたり書斎に入ってきた。そのふたりがカリンとレンカのハズだが、もちろん初めてなのでどっちがどっちだかわからない。

 ミアも含めて3人は半ズボンのジャンプスーツのようなものを着て、足元はランニングシューズのようなものをはいていた。こういった衣装もココで作ったのだろうから大したものだ。


 スポーティーな3人に対してソフィアの方は落ち着いた明るい茶色のワンピースに黒いパンプスをはいていた。


「マスター、お待たせしました」

「「マスター、お待たせしました」」

 ふたりが同時にあいさつした言葉がハモった。


 俺はうなずいて、ふたりにたずねた。

「それで、どっちがカリンでどっちがレンカなんだ?」

「わたしがカリンです」と、茶髪の子が元気に答えた。

 次に銀髪の子が「わたしがレンカです」と、こっちも元気に答えた。

「ふたりともミアをよろしくな」

「「はい!」」



 俺は席を立って机の前に置いていたリュックを背負い、4人の前に立った。

「それじゃあ、そろそろ向こうに行こう。

 4人とも俺の手をとってくれ」

 4人がそれぞれ俺の手を取ったことを確かめて俺はミアの街シュレアのダンジョンギルドの前に転移した。


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我が家の豚汁はタマネーギは無くて、代わりにゴボウとスライスこんにゃくが居ます
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