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第193話 新館(しんやかた)


 うちに帰ってスマホを見たら、ダンジョンセンターからメールが届いていた。

 中身を見ると魔法盤のオークションの案内だった。

 説明を見たらSランク以上の冒険者に案内を出したようだ。

 記されていた最低落札価格は俺が買い取ってもらった価格の2割増だった。


 税金とか経費とかあるのでそういうことになっているのだろう。

 案内が来ている以上俺も参加できそうだが、俺がオークションに出向いて値段を吊り上げたら、やっぱまずいんだろうな。

 メールの最後に自衛隊による魔法実演動画のURLが載っていたのでちょっとだけ見たところ、氷川で分かっていたことではあるが、魔法の威力、効果が俺の魔法よりだいぶ落ちるようだ。

 氷川の魔法の威力は少しずつ上がってきているようだし、魔法を取り混ぜることで多彩な攻撃も可能になるわけなので、高レベルのダンジョンワーカーにとっては値段相当の価値はあるのだろう。




 学校の方は何事もなく金曜の授業が終わり、土曜である今日の4限も終わった。

 掃除当番でもなかった俺は学校の門を出て、少し歩いてから横道に入り半地下要塞前に転移した。


 石畳の道路は池を挟んで半地下要塞の反対側に伸びていてその先が新館用に大きく切り拓かれていて、道路の両脇もかなり広く切り拓かれていた。


 新館用に切り拓かれた土地の広さはだいたい100メートル四方。

 俺はあまり大きくない方がいいと言ったはずなのだが、あっちの館の敷地の広さと同じくらいある。


 アインに何か考えがあるのだろう。

 その土地の上で4、5名ほどの自動人形たちが測量の機械のようなものと巻き尺を使いながら杭を打っていた。


 あと、館からここまで運河を延長するのか道路の脇を掘り返してもいた。

 掘り返した土は、荷車に積んで、道路の脇に空けて均していた。



 母さんがうちで昼食を用意してくれているはずなので、俺はそれだけ見てうちの玄関前に転移した。


「ただいま」

『お帰りなさい』


 2階に上がって荷物を置き、普段着に着替えた俺は食堂に下りて、用意されていた昼食を食べた。

 今日の昼食はカツ丼と味噌汁だった。

 こういうのもいいよな。

「母さん、このカツ丼だけど、調味料は何使ってるの?」

「どうしたの?」

「何となく」

「醤油とみりんとお酒と砂糖。それに粉末のだしの素よ」

「それだけで出来ちゃうんだ」

「和食はたいていその4つで何とかなるのよ。

 今日は使っていないけれど、あと味噌と米酢くらいじゃないかな」

 さすがは主婦。


 なぜそんなことを聞いたかというと、向うの館でも和食を食べたいと思ったからだ。ミアも喜ぶだろうしな。

 お米と和食用の調味料を揃えたうえで、適当な料理本を向こうに持っていけば何とかなるんじゃないか?

 食べるのは俺とミアだけだから、和食用の食材はそれほど大量に買う必要はないだろう。

 あと、館にはコーヒーはなさそうなのでインスタントコーヒーを仕入れておくか。


 食べ終わったらタマちゃんを連れて近くの総合スーパーに行って仕入れてこよう。

 そこの上の階に小さい本屋が入っているけど、さすがに料理本くらい置いているだろう。


 俺はカツ丼をおいしくいただいて最後に味噌汁をズズーっと飲んだ、

「ごちそうさまでした」

「おそまつさま」


 食器を流しに下げた俺はいったん2階の自室に戻って、タマちゃんにスポーツバッグに入ってもらい、机の中から財布の中にお札を補充した。

「かあさん、ちょっと出てくる。

 4時か遅くても5時までには帰ってくる」

『いってらっしゃい』


 玄関を出た俺はそのまま家の門を出て、スーパーまで走った。


 スーパーのカートを押して、食料品売り場を回り醤油、みりん、酒、砂糖をカートに入れたのだが、そこでふとみりんと酒って未成年者が買えるのか心配になった。


 スーパーの人を見つけて聞いたら、未成年ではみりんと酒は買えないそうだった。

 そのかわり、料理酒とみりん風味調味料は買えるようだった。

 何だかわからないけれど、料理本にはそこらのことは書いてあるだろうから後は日本語が読めるはずのソフィア先生に丸投げすればいいだろう。


 俺は料理酒とみりん風味調味料をカートに入れ、味噌と米酢、そして白い粉末調味料と粉末のだしの素も見つけてカートに入れた。


 そこから米を置いているコーナーに行って10キロ入りの袋を2つカートに入れた。

 最後にインスタントコーヒーの大きな瓶を2つカートに入れ、レジに回った。

 時間帯が良かったのかレジは空いていて、現金で精算した。


 階段横までカートを押していき、そこでタマちゃん入りのスポーツバッグの中に買った物をどんどん突っ込んでタマちゃんに収納してもらった。


 次は3階にある書店だ。

 カートを出入口前のカート置き場に返してからエスカレーターで3階に上って書店に行った。


 店の中を見て回り並んでいた料理本のうち初心者用のものを数種類と和食の料理本を数冊、そして家庭料理用の料理本を何冊か買った。

 初心者用の料理本には鍋で米を炊く方法が載っていた。向こうには炊飯器がないからこの本を見つけることができてラッキーだった。

 他に何か役に立ちそうなものがないかと店の中を見て回ったら絵本を見つけた。

 これはいい。

 ミア用にメジャーな内容の絵本を10冊ほど買っておいた。

 ミアの頭ならすぐに中身を覚えそうだが、こういった絵本の中のお話は一般教養だから無駄にはならないだろう。


 スーパーの3階は比較的空いていたので適当なところで館の書斎に転移した。

 机の上にタマちゃん入りスポーツバッグを置き、今日買った物をタマちゃんから受け取ってどんどん机の上に並べていった。

 並べ終わって机の椅子に座り机の上の呼び鈴を鳴らしてアインを呼んだら、いつものように20秒でアインがやってきた。


「マスター、予定より早いお越しですが何かありましたか?」


 あれ?

「用事の方は大したことじゃないんだけど。それよりアイン、言葉、それも日本語が話せるようになったんだな。口もあるし」

 アインの声はソフィアの声に近い落ち着いたアルト声だった。

「はい。発声できるよう改造し、マスターの日本語データと国語辞典、漢字辞典のデータを取り込みました」

「話せるようになったのはいいけど、口だけでなく、顔の造作も造ったらどうだ?」

「了解しました」

「アインだけでなく、自動人形全員人間っぽくしてくれよ。難しいのなら仕方ないけれど」

「難しいわけではありません。すぐに取り掛かります。

 それで、用事というのは何でしょう?」

「大したことじゃないんだけれど、俺の国の料理をここでも食べられるように調理方法を書いた本を用意した。

 それと、ここじゃ手に入りそうにない俺の国の主食と調味料を用意してきた。

 ソフィアと協力して料理本を参考にマスターしてくれるとありがたい」

「了解しました」

「最後に、ミア用に絵の描かれた日本語の本も買ってきたから日本語の勉強に使ってくれ」

「はい」


「あと、新しい館の予定地を見てきたんだけど、広すぎないか?」

「今後の拡張のことも念頭に敷地は広めにとっています。

 新館には工房や資材倉庫など作りませんから、大きさはそれほど大きくはありません」

「アインに任せているわけだから適当でいいけどな」

「はい」


「用件はそれくらいだからそろそろ帰る。

 そういえばミアのための自動人形はどうなっている?」

「マスターの指示通り2体の小型の自動人形を製作し、カリンとレンカと命名しています。ミアともどもソフィアの監督の下、学習などを行なっています。

 お会いになりますか?」

「今ミアと一緒にいるんだろうから、それはいい。

 ミアのふたりに対する反応はどうだ?」

「生まれて初めて友だちができたと喜んでいました」

「ふたりを作ったのは正解だったようで良かった。

 日本語関係はいいとして、ミアは将来ミアの国に返すわけだから、ミアの国の常識を教える必要があるよな?」

「おっしゃる通りです。

 しかし、ミアの国に関しては資料などありませんのでそういった教育を施せません」

「明日はあの街に行って本屋でも探してみよう。ソフィアを連れていかないと言葉がちゃんと通じないからソフィアを連れ出すことになる。そうすると教育できなくなるからミアとカリンとレンカも連れていってやろう」

「了解しました。

 ソフィアに伝えておきます」


「それじゃあ」

「はい」


 俺はアインを置いてうちの玄関前に転移した。



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