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第19話 3階層


 買い取り所で嬉しい悲鳴を上げた俺はルンルン気分で武器預かり所に回って武器を返却した。


 それから1階に下りて売店に寄り、モンスターの核を入れておくためちょっと贅沢に革製のケースを買った。


 ケースは上下2段になっていて、1段は4センチ角に仕切られて横5×2列で10個の核が入るようになっている。

 2段で全部で20個。

 直径4センチの核は10階層のモンスターの核の大きさだそうだ。

 10階層はDランク冒険者の範囲なので、かなり先になるだろうがそれまで使えるわけだ。


 それだけ買って精算した俺は家路を急いだ。




「ただいまー」

 うちに帰って玄関に入った俺は大きな声で母さんに帰宅を告げた。

『お帰りなさい。

 元気いっぱいだけど何かいいことあったの?』

 台所から母さんの声がした。

「うん。ちょっとね」

『一郎。冒険者もいいけどほどほどにね』

「分かってるー」

 俺はそう言ってバタバタと階段を上って2階の俺の部屋に入った。


 荷物を片付けてから普段着に着替えた俺は、リュックの中のタオルを持って1階に下りた。

「母さん、タオル洗っといてね」

『いつものように洗濯機に入れておいて。

 すごく汚れているようなら、洗濯機の前のバケツに入れておいて』

 タオルはすごく汚れている感じでもなかったので、脱衣所にある洗濯機の中に放り込んでおいた。

「母さん新しいタオルある?」

『あなたのクローゼットの中の引き出しのいつものところに下着と一緒に入れてるわよ』

「サンキュー」


 母さんに装備タオルの整備をしてもらっているわけだから今度母さんに何かプレゼントしてやろ。

 母さんだけだと父さんがひがむかもしれないから、父さんにも何か買わないとな。

 そうだ! たしか9月になれば父さんと母さんの結婚記念日だったから、旅行券でもプレゼントしてやるか。

 後でネットで調べてみよう。


 その前に母さんの肩を揉んでやろ。

 肩を揉みながらヒールの魔術をかければ肩こりも一発で治るからな。

 母さんが風呂から出たらさっそくだ。




 風呂から上がり夕食を食べて食器を流しに片付けた俺は、テレビなど見ず2階の自室に戻り明日の作戦というか下準備をすることにした。

 準備といっても3階層に出てくるモンスターをスマホを使って確認するだけだ。

 おっと、その前に金色の核の値段だ。


 検索した結果、金色の核はおろか金色のスライムの情報もぜんぜん見つからなかった。

 うーん。

 情報が全く無いということは、超希少ってことだろう。

 とんでもない高値で売れるかも知れない。

 あんまり目立ってしまうのもどうかと思うので、アレはもう少し後に様子を見て買い取りに出そう。


 俺は金色の核を調べることは止め、3階層に出てくるモンスターの確認を始めた。

 なになに?

 

 3階層に出てくるのはスライム、ムカデ、大ネズミ、蜘蛛。いずれも単体で出現するとあった。

 2階層のモンスターも単体で出現すると書いてあったけど6匹も出てきたから、3階層なら10匹くらい出てくるんじゃないか。

 明日も嬉しい悲鳴を上げたいものだ。

 簡単に調べただけでも各モンスターに対する戦い方のようなものも書いてあったけれど、俺にとっては高々3階層。

 行き当たりばったり、出たとこ勝負だろうと苦戦は考えられない。


 スマホを閉じたところで1階(した)からヘアドライヤーの音が聞こえてきた。

 母さんが風呂から上がったみたいだ。

 


 ヘアドライヤーの音が止まったところで少し時間を置いて1階に下りていったら、母さんは居間のソファーに座ってテレビを見ながら寛いでいた。

「母さん、肩をもんであげるよ」

「あら、一郎ありがとう」

 ソファーの後ろに回って母さんの肩をもみもみしながらヒールの魔術をかけてやった。


 俺の魔術の腕前は自分でも大したことはないと思っているくらいなので、ヒールの魔術も小さな傷くらいしか治せない。

 それでも肩こりくらいには効いたようで、母さんがしきりに俺のカタモミを褒めてくれた。

 そういえば聖女マリアーナは癒しの祈りで、賢者オズワルドはヒールオールだったかキュアオールで部位欠損も重篤な病気も治せたが今彼らがこの世界にいたら大騒動になったことは間違いない。

 もちろん俺はヒールオールもキュアオールも使えませんよ。


 5分ほど母さんの肩をもんでいたら、目を瞑って気持ちよさそうにしていた母さんが目を開けた。

「ふー。

 一郎、ホントに肩こりが治ったみたいよ。ありがとう」

「それは良かった。

 また肩がこったらもんであげるよ」

「そのときはお願いするわね」

「うん」


 喜んでもらって俺もうれしいよ。

 俺からすれば10年以上留守にしていたわけで、なんとなくだけど、できる時に親孝行しようと思うんだよね。


 2階の自室に戻って、明日のために3階層のマップをスマホにダウンロードしてベッドの上に寝転がっていたら、父さんが会社から帰ってきた。


 風呂に入ってから夕食を食べると言ってるのが聞こえてきたから、カタモミはそのうちだな。

 そういえば明日は土曜で父さんは休みか。

 明日にでも父さんが風呂から上がったらカタモミしてやろう。




 翌日。


 朝食を家族3人で食べた。

「きのう一郎に肩をもんでもらったのよ。そしたら嘘みたいに肩こりが治ったの」

「ほうー」

「父さん。父さんが風呂から上がったらもんであげるよ」

「おっ! それは楽しみだ」

「期待してていいから」

「なんだか、一郎は少し変わったな」

 やっぱり分かるよな。


 朝食を食べ終えて少し休憩してから俺は装備を整えてサイタマダンジョンに向かった。

 今日は昨日考えていた通り3階層まで下りていくつもりだ。

 サイタマダンジョンセンターに到着したのが8時。

 売店で食料を調達しようと思っていたので途中でコンビニに立ち寄っていない。


 今の時間帯は冒険者の通勤時間のようなものなので、売店の中には客=冒険者が結構いた。

 何人かの客が俺の方をじろじろ見ていた。

 高校生そのものに見える冒険者が青いネックストラップを付けているのが珍しかったんだろう。


 俺は注目を集めていることを意識しつつ食料品売り場に回った。

 いつも買っていたコンビニのおむすびと同じように個装されたおむすびもあったけれど小さめのおむすび2つにたくあんが付いたおむすびセットがあった。

 上等そうな真っ黒な海苔でくるんであるしっとりタイプ。実においしそうだ。

 俺はそのおおむすびセット2つとペットボトルの緑茶を2つ、それにチョコレートバーを2つ店のカゴに入れてレジに並んだ。


 支払いは冒険者証。

 冒険者証専用のカードリーダーにかざすだけなので何気に便利だ。

 ちなみに、ここの売店のレジは冒険者証と現金しか受け付けていない。


 売店での買い物を終えた俺は売店から直接ダンジョンセンター本棟に入り武器の預かり所に回ってメイスとナイフを受け取りその場で装備してついでにヘルメットを被った。

 手袋は改札で冒険者証を出さなければならないので後回しだ。


 俺の被っているヘルメットは自転車用のヘルメットのような形なので顔は丸見えだ。

 高校生顔だといろんなところで注目されるので、ライダーヘルメットのようなフルフェイス型のヘルメットに代えた方がいいかもな。

 俺自身、本当はそっちが欲しかったんだけど予算の関係で今の形にしただけだし。

 善は急げだから、今日の帰りにダンジョンワーカーに寄って良さそうなヘルメットを買ってしまおう。

 今のヘルメットはちょっともったいないけれど予算は潤沢だからな。


 さーて、今日も頑張るぞ!


 束になってモンスターが現れることを願って俺はダンジョンの渦の中に入っていった。




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― 新着の感想 ―
この世界に扶養控除があるなら、親に早めに言わないと不味いかもしれないね
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