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第184話 ミア2


 書斎に用意された小さなテーブルでミアと一緒にアップルパイを食べお茶を飲んだ。

 白銀のヘルメットを交換しながらミアと話をしたところ、街の東側に港がありその先が海ということが分かった。

 その他にも街のことを聞いてある程度のことは分かった。


 俺を威嚇していたゴロツキたちは、あの街の中心部一帯を取り仕切るヤクザだったようだ。

 ミア自身、連中に上前をピンハネされることがしょっちゅうで、稼ぎのないときにはチンピラにたびたび暴力を振るわれたという。

 機会があったらあの連中を懲らしめてやりたいが、ああいった連中が街の中心部でのさばっているということは、街の顔役などにコネがあると思って間違いないので、うかつに相手をすると火傷することもある。

 殲滅できるなら後腐れはないが、文字通り皆殺しできなければお尋ね者になる可能性が高い。

 おっと、物騒なことを考えてしまった。高校2年生の考えていいようなことじゃなかった。



 お茶を飲み終えたら自動人形がお茶のポットを手に取って差し出すようなポーズをしたので「頼む」と言ったらお茶を注いでくれた。

 ミアがお茶を飲み終わったところで同じようなポーズを自動人形がしたので、ミアもうなずいた。

 それで自動人形はミアの空になったカップにお茶を注いだ。

 これではまるで無言劇だな。



 俺の手に入れた核を今回アインは1つだけ使ったので残りは5つ。この5つで館の中の自動人形を5体レベルアップできる。言い方を変えれば5体しかレベルアップできない。

 明日の午前中は28階層?に潜ってなるべくたくさん核を手に入れよう。

 午後からはミアを連れてあの街の海を見に行ってもいいか。その際通訳代わりにミアの家庭教師も連れて行けば白銀のヘルメットの交換ごっこをしなくて済むしな。


 アップルパイは別腹だったようで、ミアは全部食べた。

 いいことだ。

 俺は食べながらアップルパイのリンゴを少しちぎってフィオナにやった。

 最初からミアはフィオナのことをあまり気にしていなかったし、今も全然気にしていなかった。

 気になったのでミアにあの街で妖精をよく見るのかと聞いたところ、フィオナを見たのが生れて初めてだと言った。

 ミアは好奇心が枯れているのかもしれない。ちょっと心配だ。



 ミアとヘルメットの交換ごっこをしていたら1時間経っていたようで、アインが新しい自動人形というか新しい人物を連れて書斎に戻ってきた。

「マスター、でき上がりました。

 マスターが名まえをつけてください」

 俺が好みは言わなかったからか、アインが連れてきた自動人形は西洋風とも東洋風ともいえない美人だった。

 見た目の年齢は20歳。顔の造作は切れ長の目と、小さめの口が特徴的だった。

 明るめのグレーの髪を肩口で切りそろえていて、前髪も眉毛の辺りで切りそろえている。

 その関係で非常に知的な美人に見える。

 着ている服は黒の上下。足元は黒のサンダルだった。


 名まえねー。こういうのは困るよな。

 見た目はクロちゃん、ないしグレガミちゃん。それはないよな。

 なにかいい名まえはないか?

 そうだなー。頭が良さそうだから英知という意味でソフィアはどうだ。俺とすればかなりいいセンスだと思うのだが。

 これでいいよな。

「ソフィアと名づけよう」

「マスター、良い名を与えていただきありがとうございます」

 そうソフィアが日本語で答えた。ソフィアの声はきっとアルトだ。間違いない。


「それじゃあソフィア。さっそくだがミアに日本語を教えてやってくれ」

「はい。ミアさん、ソフィアです、よろしくお願いします」

 後半はミアの国の言葉だった。

 できるな。


「アイン、ミアに勉強部屋を用意してやってくれ」

『了解しました』

「俺はちょっと出かけてミアの勉強の本を仕入れてくる。

 ソフィアも俺の知識だけの日本語じゃうまく日本語を教えられないかもしれないしな」

『はい』

「アイン。その前に、そこの机の上に置いたコアは使ってくれていいからな」

『はい。そのコアを使い自動人形のレベルアップを行ないます』

「任せた。

 それじゃあ行ってくる」


 俺はタマちゃんの入ったリュックを背負って隣街のデパートの近くに転移した。



 そのデパートには本屋と文房具屋が入っている。

 最初に本屋に入って小学生用の学習書のあるコーナーを見つけ小学校1年生から3年生くらいまでの学習書とソフィア用に国語辞典、漢字辞典を買いそろえた。

 学習書をリュックの中のタマちゃんに預けた俺は本屋を出て、文房具屋に回った。

 そこでノート、鉛筆、鉛筆削り器、消しゴム、定規などを買いそろえた。

 これではまるで小学校の児童を持つ保護者だな。


 買うものを買った俺はデパートの階段に出てそこから館の書斎に転移した。


 買ってきたものを机の上に並べて呼び鈴を押しアインを呼んた。

 アインも初めて見る物ばかりのハズなので一つ一つ説明したあとミアの勉強部屋に運んでおくように言ったところ、アインは手に持てるだけのものを持って部屋を出ていき、何回か往復して全部持っていった。


 腕時計を見たら午後4時近かった。

 今日は朝から濃い一日だった。

 

 帰る前にアインを呼びミアの現状をたずねた。

「ミアは勉強してるか?」

『はい。熱心にソフィアの言葉を聞いています。

 彼女は勉強が嫌いではないようです』

「ほう」

 どんな才能が眠っているか分からないわけだから、子どもに機会を与えることは大切だな。無制限にできるわけじゃないけれど。


「ミアに向いていることが早めに分かればいいな。

 勉強ばかりでは体が弱くなってしまうから、ある程度の運動もさせてやってくれ」

『はい』


 俺はミアのことを頼み、明日の朝また来ると言って専用個室に転移した。


 そこから武器預かり所に走って駆け込んだ俺はそこで白銀のメイスの登録をした。


「これはまたすごそうなメイスですね。

 これも刻印は難しそうですからタグをつけておきます」

 係の人が白銀のメイスの持ち手の先の孔に俺のIDが刻まれたタグを取り付けてくれた。

 礼を言って専用個室に駆け戻った俺は武器をロッカーにしまい、カードリーダーに冒険者証をタッチした。


 今日は少し早かったのでうちに直接帰らずスーパーの近くに転移してミア用に歯ブラシ数本と練り歯磨きを数個を買った。

 カートに入れた歯磨きセットをタマちゃんに収納してもらい、スーパーからは歩いてうちに帰った。


「ただいま」

『お帰りなさい』



 その日の夕食はキンメダイの煮つけだった。俺は酒を飲むわけではないが、父さんが久しぶりに日本酒を飲みながら『うまい!』と言っていた。

 日本酒がうまいのか、キンメダイの煮つけがうまいのか? おそらくどっちもなんだろう。


 母さんと俺はご飯で煮つけを食べているけどご飯で食べてももちろんおいしい。日本酒にあう料理はご飯にあうし、逆もまた真。



 明日はゴールデンウィーク最終日。

 明日の朝ミアの様子を見たら、28階層?でモンスター狩だ。


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