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第15話 Bランク冒険者、2階層


 うちに帰ったら5時近かった。

 ドアを開けて「ただいまー」と言ったら、台所から母さんが『お帰りなさい。それでどうだったー』って聞いてきたので「楽しかったー」と、当たり障りなく答えておいた。

 まさか、初日だけで息子が1千万円も稼いだとは思わないだろうし、言っても信じないだろうし。


 スマホのダンジョン専用アプリを使えば冒険者証の残高と累計買い取り額が分かるようになっている。

 それを見せれば母さんも納得すると思うけど、そこまでする必要はないだろう。

 父さんの年収がいくらか分からないけれど、1千万円より少なかったらかわいそうだしな。


「夕食は6時だから。

 お父さんは今日は遅くなるそうだから先にお風呂に入ってなさい」

「わかった」



 風呂から上がった俺は、夕食を母さんと食べながら、ダンジョンでの話をほとんど作り話で話しておいた。

 ダンジョンの話の最後に、

「思った以上に儲かったから来月のお小遣いいらないから」

「あらー。

 一郎、無理しなくてもいいのよ」

「無理じゃないから」

「ふーん。

 一郎、成績もすごいけど、ホントにいい子になったんだね。

 お母さん嬉しい」

 少しだけ親孝行できたようだ。



 夕食を食べ終えて自室のベッドに寝っ転がり今日のことを思い出してニヘラしていたら、スマホに電話がかかってきた。

 相手は誰だかわからなかったけれど一応電話に出てみた。

『もしもし、長谷川くん? 斉藤です』

 斉藤さんから電話を貰うのは初めてのハズ。電話番号も教えていないし。

 よく考えたら俺の電話番号は中学の時の名簿に載っているんだから、同窓生ならだれでも分かるか。


「はい。長谷川です。

 どうした?」

『長谷川くん、夜分ごめんなさい』

「別にいいよ」

『よかった。

 うちに帰って考えたんだけど、長谷川くんはBランクになっちゃったじゃない』

「あした手続きしてからだけどね」

『それで日高と中川とも相談したんだけど、わたしたちと一緒に行動するのは迷惑だと思うんだよ。

 長谷川くんはたまにはわたしたちと一緒に潜ってくれるって言ってたけど、気にしないでいいから。

 それを言っておこうと思って電話したの』

「そんなこと気にしなくてもよかったのに。

 夏休みの間なら週に1回ぐらい一緒に潜ってもいいよ」

『ホント?』

「ホントだよ」

『迷惑じゃない?』

「全然迷惑じゃないから」

『長谷川くん、ありがとう』

 電話口からうれしそうな声が返ってきた。


「それじゃあ。

 今日は木曜日だから来週の木曜日に一緒に潜ろうか。

 それでいいかな?」

『うん。2人に伝えとく』

「じゃあ、来週の木曜日、午前9時に渦の前の改札の手前に集合」

『うん。楽しみにしてる』

「それじゃあ」

『それじゃあ』


 ということで彼女たちと来週ダンジョンに潜ることを決めてしまった。

 おそらく夏休みの間毎週だな。

 まっ、いいか。


 その日俺はサイタマダンジョンの2階層のマップをスマホの中にダウンロードしておいた。

 これでオフラインのダンジョン内でもマップを参照できる。

 スマホだけでは心配なので、明日ダンジョンセンターの売店で2階層のマップを買っておこう。



 翌日。

 俺は免許センターが開く午前9時に免許センターに到着するよう家を出た。

 手続きが済めばその足でダンジョンに潜るつもりなので装備を着込んだ上に背中にはリュックを背負っている。


 途中のコンビニでおむすび3個とお茶のペットボトルを2本買っておいた。

 それと、今日はキャップランプを使うのでそれ用の予備の電池も買っておいた。

 本当はライトの魔術で明かりは作れるけど、魔法の類が確認されていないこの世界でそんなことしたら大問題間違いないからキャップランプが必須なのだ。


 コンビニでは冒険者証が使えたので冒険者証で支払った。


 コンビニを出て時間調整をしながら歩いたり駆けたりしてちょうど9時5分ごろに免許センターに到着した。


 講習の連中はセンターの中に入っているようで、玄関前に人はいなかった。

 玄関に入ってすぐの昇格手続き窓口にも人は並んでいなかった。


「お願いしまーす」

 窓口の係の人に水色のカードを差し出した。

「AランクからBランクへの昇格ですね?」

「はい」

 窓口の係の人は俺が差し出した冒険者証を見て、そこに記載されていた俺の生年月日と免許取得日を見て驚いていた。

「たった2日、いえ、実質1日で?」

「運がよかったもので」

「16歳のBランク冒険者は全国でも長谷川さんだけのはずです。おめでとうございます」

 1日で1千万円稼いだわけだから驚くのは当然だな。


 その場で写真を撮って5分ほどで新しい俺の冒険者証ができ上った。

「お待たせしました」

「どうも」

 手にしたBランク冒険者証には青色の線が1本入っていた。

 新しいカードホルダーと青色のネックストラップも一緒にもらった。

 青いストラップが目に優しいー。

 カードホルダーに冒険者証を入れてストラップにくっ付けて首から下げておいた。

 

 これで俺はBランク冒険者だ。

 俺は小走りに免許センターを出て、ダンジョンセンターの本棟に向かった。

 おっと、入り口のガラスに映った俺の顔がニヘラ笑いして俺を見てた。

 クールに行かなくちゃな。


 武器の預かり所に行ってメイスとナイフを受け取ったらさっそく2階層に行くぞ!

 その前に売店で2階層のマップだ。


 本棟の横の建物が大型のコンビニ風の売店になっている。

 売店の外側の入り口には改札機は置かれていないので冒険者でなくても入店でき商品を買うことができる。

 その代りダンジョンセンター本棟側の出入り口には改札機が置かれているので、冒険者以外は本棟の中には入れないし、冒険者が本棟から売店に入れば本棟を出たことになる。

 もちろん武器を持っての入店は禁止されている。


 売店をグルリと回って見つけたマップ売り場で2階層のマップを買っておいた。

 3階層のマップも隣にあったのでそっちも買っておいた。


 売店の食料品売り場に黄色い箱のバランス栄養食を見つけたので2箱買っておいた。

 支払いは冒険者カードで済ませた。


 改札を通って売店を出た俺はエスカレーターで本棟2階に上り、武器預かり所で冒険者証をカードリーダーにかざしたら5分ほどで俺のメイスとナイフが係員の手で払い出されてきた。

 どのくらいの数の武器が保管されているのか知らないけれど相当な数だろう。

 その中から5分で2つ出てきたということはかなりすごいことではないだろうか。

 俺は感心しながら1階に下り改札を通ってダンジョンの渦をくぐりサイタマダンジョン1階層の大空洞に入った。



 渦を抜けて1階層に出たら、2階層へ続く階段に向けて標識が立っている。

 その方向に向かって冒険者が歩いていたので俺はその後についていった。


 500メートルほど歩いてコンクリートで作られた平屋の建物に到着した。

 建物の中には自動改札機が置かれ、係員が2人立っていた。

 ダンジョン内では、センターの係員は黒地に赤いラインの入った上下を着て赤いラインの入ったカード、通称(アール)ランク冒険者証を外から見えるように首から下げているのですぐわかる。


 冒険者証をタッチして改札を抜け、その先の階段を下りていった。

 事前情報では階段は60段。

 段差が20センチくらいしかないので計算上12メートルの高低差しかないわけだが、上からいくら深く孔を掘っても2階層には到達できないそうだ。

 ダンジョンあるあるだよな。

 


 Bランク冒険者となった俺は3階層まで潜れるのだが、今日は2階層だけで十分だろう。

 2階層からは素掘りの坑道型ダンジョンで、一気にダンジョンらしくなる。

 坑道の中は周囲の岩石が薄っすらと発光しているのである程度の明るさが確保されているがそれだけでは十分ではないのでキャップランプの登場となる。

 昨日はキャップランプに最初から電池を入れてなかったけれど、今日は電池を入れている。

 階段を降りる前にスイッチオン。

 かなり明るい白光が階段を照らした。階段内では思った以上にキャップランプの明かりが強かったので光量を半分くらいまで絞った。



 1、2、3、4、……。

 段数を数えながら階段を下りていったのだが、途中で違うことを考えたら数が分からなくなってしまった。

 60段とネットに書いてあったので60段でいいだろう。

 1、2段違っていようが別にどうでもいいことだし。


 階段を降りた先はかなり広い空洞になっていて、空洞の壁にたくさんの穴が開いていた。どの穴も坑道の入り口だ。

 3階層につながる階段がある場所に向かうには道中標識が立っているうえ人通りも多いので迷うことはまずないらしい。


 この階層というか、この階層以降では電波塔などないので、階段間の坑道、幹線坑道以外の坑道では道に迷うことは多々あるそうだ。

 とはいえ、サイタマダンジョンやトウキョウダンジョンといった大勢の冒険者がホームベースとしているダンジョンでは10階層までは大抵の曲がり角には上の階層からの階段の位置を原点とした座標で現在位置を示す石でできた標識が置かれているそうなので、一度迷ったとしても階段まで戻ることはそれほど難しいわけではない。


 さーて、俺はどっちに向いて歩いていこうか?


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― 新着の感想 ―
ほう、身の程をわきまえてるようで安心しましたわ(*´❥`*)
読んでいて ダサイタマやクサイタマとか頭の中に聞こえて来て仕方ない。
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