第14話 秋ヶ瀬ウォリアーズ2
俺たちに絡んできた大学生らしき4人組の1人を自爆を装い戦線離脱させてやった。
俺は早めにケリを付けようと思って再度煽ってやった。
「自爆じゃつまらないでしょ?
次の方どうぞー」
そうしたら、連中の中で一番体格のいい男が前に出てきた。
頭にはアメリカンフットボールのヘルメットみたいなのを被っている。
フェイスマスクからのぞいた男の顔を見たらアゴが四角く鼻は潰れているように見える。
一言でいえばブ男。
他人の容姿を揶揄することは煽り言葉としても不適切なので彼の容姿に対する評価は口にしないでおいた。
「俺がお前を文字通りノシてやるよ。
アメフトのディフェンスタックルを甘く見るなよ」
男はそう言って腰を低くして腕を広げ俺にぶつかってきた。
もし本当にこの男がアメフトの選手だとして問題起こしたら大問題だろう。
というか、アメフトだろうと冒険者はスポーツ関連の試合に出られないはずだから、モグリなのか?
これだけ素行が悪ければアメフト部だかサークルだかを首になっている可能性の方が高いか。
いずれにせよ、大したことはない。
俺は男のタックルをマタドールのように華麗にかわして後ろから蹴っ飛ばそうかと一瞬思ったが、どうせなのでそのまま男のタックルを受けてやった。
男はぶつかった勢いのまま俺を押し倒したかったのだろうが、俺の方が男を仰向けに押し倒しそのまま馬乗りになった。
そこから男の顔を殴りつけても良かったが、女子が見ているのでやめておくことにした。
その代り男の左耳のすぐわきの地面にパンチをめり込ませてやった。
それだけで男はビビったようだ。
顔を上げて残りの2人を見たら腰が引けていた。
俺は馬乗りを解いて立ち上がり、
「アメフトのタックルって高校生に吹き飛ばされるのがブームなのかな?」
「何だと! 覚えてろよ!」
そう言って男たちは文字通り這う這うの体で逃げていった。
リアルで『覚えてろよ!』って初めて聞いた。
ハプニングが向こうからやってきて向こうに去っていった。
「長谷川くん、ケンカも強かったんだ」
「カッコいー」
「すごい!」
「相手が弱かっただけだと思うよ」
「でも相手は大学生みたいだったし、さっきの男なんてすごく大きかったじゃない。
それなのに長谷川くん、全然怖そうじゃなかったし、余裕だったじゃない」
「ケンカ慣れしてるって感じだったよね」
殺し合い慣れしている俺はそういう意味で手加減は下手なので、ケンカ慣れしているとは言えないんだけどなー。
相手がアノ程度なら、慣れる慣れない以前の問題か。
ここで感想を述べあっても仕方がない。
「そろそろ、モンスター狩を再開しようか」
「「うん」」
俺たちは後片付けをしてから各々の荷物を持って午後からのモンスター狩を始めた。
3時まで適当に移動しながら見つけたモンスターをたおしていき、30分ほどかけてダンジョンの出入り口前まで戻ってきた。
午後から6個ほどモンスターの核を手に入れている。
午前中と合わせて全部で9個だ。
ダンジョンの渦から出た俺たちは買い取り所に向かった。
買い取り所の前にはかなりの人が並んでいたが、窓口の数が多いのでそれほど待たずに済みそうだ。
5分ほど列に並んでいたら、俺たちの番になった。
買い取り窓口はそれぞれ個室になっている。
4人でぞろぞろと部屋の中に入っていき、俺のカナブンの核もついでに加えてモンスターの核10個と4人の冒険者証をカウンターに置いた。
ちなみにモンスターの肉などの買い取り窓口はここから少し離れたところにある。
「4人で均等に配分してください」
これで売却金額が4人の冒険者証に均等に振り込まれる。
この10個の売却額について斉藤さんは俺が半分取って残りを3人で分けようと言っていたが、俺が4人で山分けにしようと提案し受け入れられた。
係の人の手で核が機械の中に順に放り込まれていく。
機械に入った核はそのままどこかに行ってしまうようだ。
すぐに査定は終了し機械から出てきたレシートを各人が冒険者証と一緒に受け取った。
レシートには今回の買い取り価格と累計買い取り額が書かれていた。
10個の核で約3万8千円になった。4人で割って1人あたり9500円。
高校生の1日の稼ぎとしてはそこそこと言っていいのか微妙な額だが彼女たちは満足しているようだ。
換金が終わり3人が部屋から出ようとしたので、
「俺、まだ核を持ってるからそれを換金するから」
そう3人にことわった。
彼女たちは部屋から出ず俺の隣りに並んだ。
俺は再度冒険者証をカウンターに置き、リュックから虹色の核を取り出して冒険者証の隣りに置いた。
そしたら係の人が目を剥いた。
もちろん斉藤さんたちも驚いていた。
「これは?」と係の人。
何を聞かれているのか分からなかったので、
「スライムから取り出した核だったんだけど、なにか?」
と疑問形で答えておいた。
係の人がいったん後ろのドアから外に出てちょっとエラそうなおじさんと一緒に戻ってきた。
「これはレインボースライムの核。しかも大きい。
査定にはしばらくかかるのでお待ちください」
と、ちょっとエラそうなおじさん。
俺の査定を待ってくれていた3人が3人とも騒ぎ出した。
「長谷川くん、そんなのも持ってたんだ」
「まあ。人に見せるもんじゃないと思って」
「そ、それはそうだわよね」
エラそうなおじさんが機械を操作して、冒険者証とレシートを手渡してくれた。
「暫定的に1千万円が冒険者証に振り込まれています。
免許センターで手続きしていただければBランクに昇格します」
おっと! 1日で昇格できてしまった。
俺の人生設計が大幅に狂ったような?
さらにおじさんは言葉を続けた。
「査定が終了し次第、差額が振り込まれますのでご安心ください。
しかし、レインボースライムが1階層にいたとは」
「そのレインボースライムは普通はどのあたりにいるんですか?」
「普通は、というほど見つかってはいないんですが、少なくとも10階層より深いところに生息しているものと考えられていました」
なるほど。
要するに今日の俺は超ラッキーだったってことだな。
虹色の核だけで驚かせてしまった俺は金色の核を出すのは控えておいた。
買い取り所の個室を出たところで、斉藤さんが俺に向かって、
「長谷川くん、あなたいったい何者なの?
見えてもいないくせにモンスターを見つけるし、大学生のグループは簡単にやっつけるし、そしていきなりBランク」
俺はどう答えようかと思ったが、率直に答えておいた。
「すごく運がいい高校1年生。みたいな?」
「もう」
呆れられてしまった。
そこから俺たちは武器預かり所に移動した。
武器預かり所では武器をカウンターの上に置き冒険者証を見せると係の人が武器を受け取ってくれ、武器の刻印やタグを機械で読み取り後ろの台車の上に載ったカゴの中に入れる。
カゴが武器でいっぱいになったら別の人がやってきてその台車を奥の方にある倉庫に運んでいく。
保管料は何個預けても、いくら大きくても1カ月500円と超低額だ。月初日にそのお金は口座から引き落とされる。
俺の場合は今日利用開始なので今日から冒険者証に紐づけされた口座から引き落とされたはずだ。
武器を受け取るには冒険者証をカードリーダーにかざすだけでいい。
数分で武器が運ばれてくる。
3人は着替えをロッカールームに置いているそうで、女子用ロッカールームの方に向かっていった。
別れ際、本棟の入り口前で自分たちが着替えて出てくるまで待っているように指示されてしまった。
10分ほど本棟の前で待っていたら私服に着替え大きなスポーツバッグを持った3人が中から駆けて出てきた。
「遅くなってごめん」
「「ごめんなさい」」
「そんなに待ってないからだいじょうぶ」
そう言うしかないよな。
「まだ時間があるし、少しお腹もすいてきたからどこかお店に入らない?」
確かにおむすび2個では少なかった。
おむすびが大好きなので次回もおむすびだけど、お金もあることだし次回はもう少し量を増やすとしよう。
ダンジョンセンターから出て一番近くにあったハンバーガーショップに4人で入り、4人ともハンバーガーセットを頼んで2階の4人席に座った。
荷物は足元に置いている。
そこでハンバーガーセットを食べながらお互いの学校のことなど話して最後に、
「いちいち『さん』づけで名まえを呼んでたらめんどうだからわたしのことは呼び捨てでいいわよ」
「「わたしも」」
そう言われても1日しか一緒にいない相手を呼び捨てにすることにはさすがに抵抗がある。
「俺のことは呼び捨てでいいけど、みんなのことはさん付けで」
3人はなんだかがっかりしたようだったけど、結局お互いくん、さん付けに落ち着いた。
ハンバーガーセットを食べ終え、飲み物も飲み終えたところで解散ということになった。
俺はもちろん歩きだが彼女たちはバスに乗って帰っていった。
免許センターの営業時間はそろそろ終わる頃なのでBランクの冒険者証は明日だな。
2014年12月22日より異世界ファンタジー『素人童貞転生』投稿開始しました。https://ncode.syosetu.com/ n7886jw/
7:20、17:20の1日2話投稿する予定です。よろしくお願いします。




