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第120話 すき焼き。ゲートキーパー解禁


 累計買い取り額が70億に近づいた。

 国内有数の金持ちとまでは言わないがかなり上位の資産家になったんじゃないか?


 核を買い取ってもらい、うちに帰ったら5時20分だった。

「ただいまー」

『お帰りなさい。

 お父さんはもうすぐお風呂から出るから、一郎は続いて入りなさい。

 あなたがお風呂から出たら夕食にするから』

「はーい」



 2階に上がって装備を脱ぎ、タマちゃんに全体的にクリーニングしてもらった。

 どうせすぐに風呂に入るので下着姿だ。

 部屋の中の温度はそれなりに低いのだが、下着だけで我慢できないほどではない。

 武器はタマちゃんにロッカーに入れる前に掃除してもらうことにしているのでダンジョンセンターの専用個室に置いていても安心だ。


 そうこうしていたら、父さんが風呂から上がったようなので着替えを持って1階に下り、脱衣所で裸になって風呂に入った。


 今日はフィオナも付いてきたのでフィオナは湯舟に浸かった俺の頭の上に止まっている。


 今日俺を見た『はやて』の連中の感じからして、1番手で下層を目指すことはあきらめた感じだったな。

 となると、24階層のゲートキーパーを俺がたおしてもあまり影響はないんじゃないか?

『はやて』以外の連中だって、俺が24階層、25階層と進んでいけば諦めるんじゃなかろうか?

 24階層の儲けがスゴイからあまり気にしていなかったけれど、そろそろ本腰を入れて下を目指すのも手だな。

 夕食が終わったら河村さんにメールしてみよ。


 俺が風呂から上がって寝間着を兼ねた部屋着に着替えたところで、夕食の準備ができたと母さんが俺と父さんを呼んだ。


 この日の夕食はすき焼きだった。

 肉が大盛になったお皿と野菜やそのほかの具が載せられたザルとかがすき焼き鍋の載った携帯ガスコンロの周りに並べられていた。

 フィオナは俺の肩に止まっているのだがフィオナが食べられそうなものは白飯しかなかったのでハチミツをやることにして用意してやった。


 普段ならすぐにハチミツの中に両手を突っ込むフィオナだが、今日はハチミツを入れた小皿の前でじっとしている。

 人の暮らしに慣れてきたのかみんなが食べ始めるまで待つようだ。



 ガスコンロに火はもう入っていて母さんが菜箸で肉をすき焼き鍋の中に入れるたびにジューっと音がする。

 ガスコンロいいな。

 今度泊りがけでダンジョンアタックする時、ひとそろい買って食材と一緒に持っていってやろ。


 母さんは肉を並べ終わってから少し置いて、割り下を入れ、肉を片側に寄せて野菜やシイタケ、焼き豆腐などが鍋の中に隙間なく入れられていく。


 俺はご飯を茶碗によそって、深めの小皿に生玉子をといてスタンバイオーケー。

 父さんの前にはグラスと瓶ビールが置かれてこっちもスタンバイオーケーのようだ。


「そろそろ、いいみたい。

 どんどん食べて」

「「いただきまーす」」

 その声で、フィオナもハチミツに手を伸ばした。


「はいお父さん」

 母さんが父さんのグラスにビールを注いだ。

「ありがとう。

 ……。

 うまい!」


 うちの父さんはビールのCMに出られるんじゃないかと思うほど、ビールをおいしそうに飲む。

 俺は向こうの世界では当然のようにお酒を飲んでいたがこっちに戻ってきてからは一滴も飲んでいない。

 そもそも手に入れること自体が難しい上に特に飲みたいわけでもない。

 それでも父さんのビールの飲みっぷりを見ているとちょっとだけ飲んでみようかなという気になる。


 俺は特に何を飲むわけでもなく、すき焼きを食べながらご飯を食べた。

 すき焼きはもちろん肉がメインだけれど、肉の味がしみ込んだ白菜やシイタケ、白滝もまたうまいんだよ。


 そろそろお腹いっぱいというところで、鍋にうどんが投入された。

 鍋の中がグツグツいい始めたところを母さんがうどんを取り分けてくれた。

 お腹いっぱいでもこのうどんは食べられるんだよなー。


「ごちそうさまでした」

「おそまつさま」


 俺もお腹いっぱいだ。

 俺はフィオナの手と口を拭いてやり2階に上がった。

 机の椅子に座って少し休憩していたら、河村さんにメールしようと考えていたことを思い出したのでさっそくスマホでメールの文面を作った。


『今日24階層で『はやて』の連中に遭いました。彼らはアリの大群に苦戦してクローラーキャリアを放棄して逃げ出したんですが、了承を得てわたしが魔法なしでアリを全滅させました。

 彼らもわたしと自分たちとの差を認識したようで、この階層はまだ無理だと言って帰っていきました。

 何が言いたいかというと、そろそろ24階層のゲートキーパーをたおして下の階層に向かって進んでいっても少なくとも『はやて』は気にしないのでないかということです』


 よくわからない文面になってしまったが、少なくとも最後の一文でそろそろゲートキーパーをたおしたいという俺の気持ちは伝わるだろう。


 そのあと俺はすっかりのびのびにしていた当座預金から普通預金への振り込みを行なった。

 5、十、百、千、万、十万、百万、千万、億、十億。

 5000000000円と金額を打ち込んで『確認』ボタンをタップした。

 0が多くて自分の口座なのにちょっとだけビビった。

 



 翌朝。ダンジョン管理庁管理局管理課内。


 一郎からのメールを見た河村久美は小林課長にそのことを報告した。

「本来われわれは冒険者の行動を奨励する立場であり、法規に従った冒険者の活動を止める権限などないからしかたないだろう」

「それでは自由にゲートキーパーをたおしてくださいと連絡しておきます」

「そうだな。

 それにしても『はやて』と言えば6人全員Sランクのチームだったよな。

 それが手も足も出ず逃げ出した相手をひとりでたおしたとなると。

 物理的に彼を止められるのは自衛隊くらいしかいないんじゃないか?」

「どうでしょう。

 彼は攻撃魔法のようなものを見せてくれましたが、いわゆる防御魔法を持っていても不思議ではありませんし、転移で好きなところへ一瞬で行けますから」

「われわれは彼を止めなきゃならないような事態が起きない事を祈るしかないな」

「彼は冒険者としての能力が異常なだけで、そのほかについてはいたってまともな高校生ですからそういった心配は無用だと思います」



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修正案件? こっちに戻ってきたからは→戻ってきてからは。 前ページの チームがテームになっていますよ。
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