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第10話 ダンジョン免許(冒険者証)

ブックマーク、☆、いいね等ありがとうございます。


 さいたま高校に無事入学した俺だが、精神年齢は25、6歳だ。

 俺はどうも同級生たちとツルむ気にもならず、孤高の人として高校生活を淡々と送っていった。


 成績は相変わらず超高空飛行を続けて1学期の中間、期末ともに全科目満点だった。

 そのおかげで高校での最初の通知表は体育だけ10段階評価の9であとは10だった。

 体育の9は手抜きの結果なので仕方がない。


 地元中学でオール5はそれほど難しくはないだろうが、一応の進学校でもある俺の高校での成績には父さんと母さん、二人とも喜ぶ以上に驚いていた。


 ちなみにこの1年の間にナンバーワン攻略チーム『はやて』は21階層のゲートキーパーを撃破しており、現在22階層の探索と、22階層のゲートキーパー撃破を狙っている。

 逆に言えば、もう何か月も22階層のゲートキーパーに挑んでいるもののまだ撃破できていない。


 21階層のゲートキーパーはワニを大きくしたようなモンスターだったが、22階層のモンスターについては『はやて』は情報を公開していないし、現在同じように22階層を攻めている他の攻略チームも当然情報を漏らしていない。

 ダンジョンは違えどゲートキーパーに限らずモンスターは階層ごとに同じらしいので、競争をする以上当然の措置だ。



 冒険者になるにあたって武器の購入はサイタマダンジョンセンター内の武器販売所、通称武器屋で購入する必要がある。

 ダンジョンセンター内に立ち入るには免許が必要だし武器の購入にも免許が必要なので未購入だが、防具については購入済みだ。


 防具の購入場所はサイタマダンジョンセンターの近くでオープンしているダンジョンワーカーさいたま店。

 ライト付きヘルメット、防刃手袋、安全靴、ショルダーパッドとエルボーパッド付きの防刃ジャケットに、ニーパッド付きの防刃パンツ、ベルトなどだ。


 ベルトは左右に2つずつ武器の吊り下げ用の金具がついているものを選んだ。

 剣帯のようなものだな。

 後忘れてならないのはリュック。

 この装備で5階層くらいまでなら大丈夫という触れ込みだった。

 俺の能力から言って防御力の多寡はあまり意味はないのだろうが、これも目立たないという意味で必要経費と割り切った。

 総額5万円。

 特殊な装備にもかかわらずかなりお安いのは政府から補助が出ているからだそうだ。

 これについてはこれまで貯めていた貯金で工面した。



 待望の夏休みが始まった。ダンジョン講習を受けてダンジョン免許、冒険者証をゲットするぞ!

 講習費用の2万円と武器代の予算として3万円、合計5万円。父さんに頭を下げて貸してもらった。

 もちろん、ダンジョンで稼げるようになったら利息を付けて返すつもりだが、利息を付けることは言わなかった。

 息子ってそんなものだよな。


 講習場所はサイタマダンジョンセンターに付随するサイタマダンジョン免許センター。

 夏休み前にスマホで予約しており、講習指定日に住民票その他の必要書類を持ってうちから徒歩で免許センターに集合した。

 講習の始まる9時には100人ほどが集まっていた。

 埼玉だけでこれなら全国だと相当な数なのだろう。

 この春から冒険者免許取得年齢が16歳に引き下げられたことと夏休みということもあって、高校生らしい受講生が多く見られた。

 とはいえ俺の知っている人間はひとりもいなかった。


 最初は運動能力テスト。

 合格基準は、50メートル走10秒以内、かつ反復横跳び20秒で40回以上。

 どちらも2回チャレンジできる。

 年寄りなら厳しいかもしれないが、高校生にとっては楽勝だろう。


 運動能力テストで不合格となった者はこの時点で失格となる。

 その代り受講料は半額払い戻される。

 親切なものだ。


 さすがに運動能力テストでの失格者は誰もいなかった。

 俺は目立たないようかなり加減して合格した。

 中学から高校での体育の授業でいつも加減しているので慣れたものだ。


 午後から講習が始まった。

 2日に渡る合計10時間の講習自体は簡単なもので、講習修了と同時にダンジョン免許を取得した。

 正式名称、特殊空洞指定労働者証A。通称Aランク冒険者証は水色の線が一本入っているICカードだった。

 これとカードホルダーと首からかける水色のネックストラップを貰った。

 なお、AランクからBランク、BランクからCランクといった昇格した場合もここで手続きすることになる。

 その場合の更新手数料は無料。旧冒険者証は回収されて新冒険者証とネックストラップとカードホルダーがもらえる。

 収入の2割強を源泉で支払っているから無料なのもうなずける。


 また冒険者はそのIDに紐づけされた当座預金口座を特殊空洞(ダンジョン)管理庁がバックのSC(Special(とくしゅ) Cavity(くうどう))銀行、通称ダンジョン銀行に強制的に持たされる。

 冒険者証が決済機能を持つことで、冒険者のダンジョンでの成果の買い取りなどがスムーズに行われることになる。


 難しいことはそれくらいに。

 明日から、冒険者生活だ。




 翌朝。


 武器屋の開店は午前9時。

 俺は開店に間に合うよう走ってサイタマダンジョンセンターに到着した。

 途中のコンビニで緑茶のペットボトルと昼食用におむすびを2つ買ってリュックに入れている。

 リュックの中にはほかにタオル、スマホ、ヘルメット、手袋、ヘルメット用の予備電池が入っている。Aランク冒険者にただひとつ開放された1階層は大空洞ダンジョンで終日明るいそうだ。そのためヘルメットの予備電池は不要だけど、買った時のままリュックに入っている。


 俺はサイタマダンジョンセンターの門から人の流れに乗って本棟の前まで歩いていき、真新しいカードを改札機のカードリーダーにかざして本棟に入場した。


 玄関ホールを抜けてエスカレーターで武器屋のある2階に上がったところ、すでに開店を待つ冒険者が数人シャッターの前に立っていた。

 彼らは全員高校生に見えた。

 俺と同じで昨日ダンジョン免許を取ったんだな。


 彼らは数人ずつで固まっていたからおそらくグループで冒険者活動するのだろう。

 しかし、素人同士でツルむのはどうなんだろう?

 連携も取れないだろうし、曲がりなりにも武器を振り回すわけだから同士討ちの危険もある。

 それも含めて冒険だ。といえばそれまでだが。

 講習ではその辺のことは何もなかったが、元勇者の俺から言わせてもらうとどうも危なっかしい。


 そうこうしていたら、シャッターが上がり武器屋が開店した。

 俺自身は既に何を買うのか決めている。

 刃物系統は最新技術で作られているためそれなりに手入れも簡単になっているそうだが、それでもメンテナンスフリーというわけではないし、メンテナンスにはそれなりの費用も必要になる。


 なので俺はほぼメンテナンスフリーのメイスを主力武器として、補助と解体のため骨も断ち切れるというギザギザ付のサバイバルナイフを購入するつもりだ。

 メイスは1階層に出てくるスライムと大型昆虫類のうち甲虫類に相性がいい。

 値段は、1万5千円から10万円くらいまで。

 ほかの武器でもそうだが価格の差は大きい。

 ここに置いてあるナイフの値段は5千円から10万円くらい。

 どの武器もそうだが、ここに置いていないものは取り寄せになるそうだ。

 刃物類は基本的に高額だ。


 俺は父さんから借りた5万円の残り3万円から2万円のメイスと1万円のサバイバルナイフを購入した。

 メイスの方はヘッドがセラミックでロッドがカーボンファイバー製の物を買った。

 少し軽いが、右手で軽く振ったところ重心もしっかりしている。

 俺の本気に2万円のメイスが耐えられるか少々心もとないが、まさか1階層で俺が本気を出すような相手が出てくるはずもないのでこれで十分だろう。


 どの武器にも目立たないところにシリアルナンバーが刻印されていて、購入時提示した冒険者IDに紐づけされるので持ち主は特定できる。


 代金を支払ったら、俺の持ち金は財布の中にある千円札1枚と小銭で数百円となった。

 武器保管用のロッカー代が1カ月500円かかるので非常に心もとないけど大丈夫。のはずだ。


 ちなみに冒険者証にも決済機能が付いているので、提携の商店では冒険者証だけで支払い可能だ。


 もちろん冒険者証はダンジョンセンター内のどこでも使える。

 俺の冒険者証はまっさらなので使えないけど、今日の午後、ダンジョンから持ち帰ったなにがしかを買い取り所で売却すると売却代金は冒険者証にいったん振り込まれるので使えるようになっているはずだ。


 冒険者証をスマホの専用アプリで撮影すれば登録銀行に送金も可能だ。


 メイスは腰のベルトの左側のフックに下げ、ナイフの入った鞘はベルトの右のフックに固定しておいた。

 武器の用意ができたのでいざ出陣。

 武器屋を出た俺はエスカレーターで1階に下りてダンジョンの入り口に向かった。



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