最終話 共に歩む未来
それから1ヶ月。
鈴明は皇帝の妃となるために、色々な準備をすることになった。
まずは鈴明の両親へ手紙を書いた。
皇帝の妃となること、その為に両親を宮廷へ招待すること。
この手紙を読んだ鈴明の両親は半信半疑で宮廷へと来たが、王の住まう黒楓宮へと通され、銀髪碧眼の美丈夫である皇帝と鈴明へと会ったことで腰を抜かした。
父親は昔命を救われた皇帝になら娘を嫁がせても良いと、すぐに承諾した。
皇貴妃は、これから鈴明の補佐として後宮に残ることとなった。
「これから沢山恋愛しちゃおうかしら?」
と、とてもウキウキした様子だ。
そんな元皇貴妃を穏やかに見つめる男性が1人──それはまた別の話である。
民衆は齢60である皇帝が齢19の娘を妃に迎えることに沸き立った。
沢山の噂が飛び交ったが、今までの皇帝の功績から、文句を言う者は誰一人いなかった。
そんなこんなで、鈴明は誘拐事件から半年後、祝言を挙げることになった。
「陛下、私の事を好きになったのは何故ですか?」
「ん? そうだな……鈴明は朕のことを、最初から好きだったろう?」
「えっ!? き、気づいていたんですか?」
「ああ。まぁ、あれだけ顔を赤くされれば……」
「き、気づいていたなら言ってくれれば……いや、言っちゃ駄目でした、絶対」
「ははは。まぁ、最初は1人の少女としてしか見てなかった。だが、一緒に過ごすうちに、少しずつ……。そして、鈴明が攫われた時。とてつもなく不安になった。そして、見つけた時……もう離れたくないと強く思ったのだ」
鈴明は自分から聞いておいて、みるみる顔が赤くなった。
「陛下……ありが──」
「奏明」
「え?」
「名前で呼んでくれ。これからは夫婦なのだから」
「陛下……いえ、奏明様。これからなにがあろうと、私は貴方様を支えて参ります。……あ、愛しております!」
「ああ、ありがとう。朕も一生を賭けてお主を守り抜く」
そうして奏明は、鈴明の唇に唇を寄せる。
「愛している、鈴明──」
それから70年余り、奏明は鈴明と共に歳を重ね、幸せな人生を歩んだ。
人々は言う。
蘭国に鈴を奏でる者達あり。それを聴くは明るい人生の始まりだと──。