売られた日
立ち入り禁止の病室を出たあと俺とカイアルは号泣した。前が見えなくなるほど泣いた。泣き疲れて眠ってしまったからだろうか昔の夢を見た。
ゴッツ……鈍い音と共に
「オィッ!立ち上がれクソガキが俺が喧嘩というのを教えてやる!」
教育という名目でいつもギャンブルで負けた憂さ晴らしを親父にされていた。
母さんは俺と同じ深緑の目でそんな光景を黙って見守っているだけだった。
そんな日常が嫌で仕方がなかったある日親父が家に帰ってきた音がした。恐怖で身を縮めていると
「こいつですわ、ここら辺じゃ負け知らずなんですよ」そう言って俺を指して誰かに話しているようだった。
「かなりガキ臭いようだが本当にこいつ10歳か?」
冷たい重低音が響いてきて顔を上げると身なりのきちっとした俺の住んでた場所では滅多にお目にかかれないだろう男が立っていた。
「なんせ最貧の町なもんで栄養が足りねぇんすわぁ、でも喧嘩じゃ負け知らずでっせ?」
確かに親父の言う教育?のおかげで俺は街では負け知らずだったし、強ければ親父が褒めてくれたからいつも喧嘩をしていた。
「なんでもう少し弾んでいただければ……」
「よかろうでは着いてこい。
お前名前は」答えなきゃと思った
「ジャス・バーナーでございやす」
親父が直ぐに答えてしまった。
この時7歳の俺でも気がついた。自分は親父に売られたということを。
母さんに助けを求めても目を逸らされてしまった。
ブリキでできた馬車に乗り揺られていると、身なりのいい男は聞いてきた
「お前名前はなんという」
「ジャスだってば」
「そうかジャス、学校は楽しいか?」
「行っててねぇからしらねぇよ」
「おや?7歳から学校は義務のはずだ。」
忘れていた。俺はこの春から学校ってところに行くはずっだった。でも今10歳の設定で売られた俺はやってしまったのだ。
「まぁいい、送り返さないから年齢を教えてくれ。」
「……な、ななだよ。」
そういうとずっと冷たそうな顔をしていた男が少し微笑んで
「よろしくジャス。私のことは教官と呼んで欲しい。」といった。
その冬親に売られた俺は他のやつよりも早くロウストーンに入隊することになった。
「おいっ、起きろ。話がある」朝から叩かれて呼び出された相手はあの時より少しやつれた教官だった。
光石ではあまり動植物が育たないので馬車を引く馬が少ないのです。
そのため、資源豊富な鉄鋼でできたブリキの馬を魔石の力で動かしているのです。