花を贈ります。
受賞会場から少し歩いたところに殉死出なくなった先輩方の遺骨が埋められている霊園がある。
そこには小さいながらも一つ一つ彼らの功績と名前が丁寧に掘られた碑石があり、その人へ一言だけ国からメッセージが掘られていた。
霊園に着くとそこには沢山の人がいて大きな石の前では人だかりができていた。
「英雄たちの石は少し大きいって聞いたことがあるけど、本当に大きいのね。」
彼女はぼそっと呟いた。
「英雄たちは俺たちの憧れだからな。」
いつか自分もそこで眠ることを想像しているのだろうか。彼女から少し寂しさを感じた。
「あのね、この1年で本当にたくさんの仲間とお別れをしたわ。
どんだけいい人も、優しかった人も、強かった人も守れなかったのに私勲章を貰ってしまったの。私より優れていた人なんか沢山居たのに。」彼女はすすり泣き始めた。
「…花を添えに行こう。君が花を送りたい人達全員に。」俺はそれしか言えなかった。
どれだけ必死に仕事しようがきっと彼女の見てきた地上での戦いには、洞窟の中にいる俺たちは何も言えないと思った。
どんだけ買い足しても足らない花がようやく1本になった頃にはもうあたりに人は少なくなっていた。
「彼女で最後です。」
そう言って彼女は最後の1本の花を添えた。
花の名前なんて何も知らなかったし、花にどれだけの種類があるのかも知らなかった俺だが、彼女が添えた1本の花は鮮やかな黄色でとても美しいかった。
「ありがとう、ジャス。行きましょ。」
俺はそう頑張って笑う彼女を抱きしめたかった。
下心なく純粋にそう思ったのだ。