キャラメルはいつも
悲鳴をかき消す音楽がなり止むとすぐに帰還式が始まった。
「今回優れた活躍をした者たちの発表をする。」
総隊長であり、我が国の誇りの異名を持つタムエル隊長が1人ずつ各部隊で活躍をした戦士たちの名前が挙げられていく。
「そして、新人としてこの国に多大な貢献を見せたラーナー・アッシリア。」
ラァの名前が挙げられた。
「…おい、アッシリア。」
返事がない。人混みをかき分けラァを探すとちょうどその時ラァの体がガクンと揺れ落馬をする直前だった。
気がついたら体が動いていた。
間一髪のところでラァを横抱きに受け止められたのは良かったが、腕の中にいる彼女はかなり熱かった。
「おい、お前。そいつは昨日からずっと熱が出ている。身内ならさっさと連れてけ。」
仲間が倒れたのにかなり冷たい言い方をされた。
全力で走り彼女を俺の家のベットへ寝かせると荒かった息が少し落ち着いたような気がした。
俺は寝ずに彼女の看病を一晩し続けた。
――――――――――――――――――――「ジャス?」かすれてはいるが、天使の声がした。
いつからか寝てしまったんだろう。
目を開けるとまだ少し顔が赤い彼女がベットから体を半分起こして俺を見つめていた。
「もう、体は大丈夫?昨日のこと覚えてる?」
「あ、ごめんなさい。その洞窟に入る入口の門からあまり意識がなくて、」彼女は少し気まずそうに答えた。
「帰還式で君、倒れたんだ。優秀選手発表の時に。」ガラスに触れるよに丁寧にその言葉をかけると、
「そうなの。迷惑をかけてごめんなさい。」
本当に申し訳なさそうに彼女は俺に小さくなって謝った。
悔しかった。彼女になら全然迷惑をかけられていいし、なんならかけられたかったのに、
でもさすがにそんなダサいことは言えないから俺は
「君のためにスコッチバター買っといたんだ。」そう言って寂しくなった日に彼女を思い出したくて任務帰り買ったキャラメルの包みを1つ差し出した。
黒と黄色の包みを見た途端にとろけるような笑顔になった彼女は俺からしたらどんなキャラメルよりも甘そうだった。