あなたはもしかして、
「カイアルさん、これ忘れ物です。」
彼が家を出でそこまで経っていないのに私の足で走って10分ほどでやっと追いついた。
…え、本当に何者?
振り返った彼は
「あ、逸材ちゃんありがとう。」
とまた貼り付けた様な笑顔で笑った。
「…あなた。王家の血を引いていますよね?もしかして、王位継承第3位カイリーン様ではありませんか?」
確証はあまり無かったが、もうここまで来たら聞くしかないと思った。
「珍しいね、王家の秘密を知っているなんて。残念だよ、まさか気がついてしまうのが将来有望な異名だなんて。」
あ、これは消されるかもしれない。
しまった迂闊だった。少し好奇心が勝って国家秘密に首を突っ込んでしまった。
「何で気がついたの?」
「昔、育ててもらった人に聞いたことがあります。この国の王の象徴は金髪に碧眼、王族の血を引き継ぐものはその血が濃いものほどその特徴を色濃く引き継ぐと。
それともうひとつ、異名冠位式で名前を告げていただいた国王の瞳はグレーなのに違和感を感じました。」
「この時代にもその伝説を知っている人がいたなんて驚きだな。
今回は見逃してやってもいいだろう。おそらくいつか異名を持つお前なら知るはずだ。
このことは口外するなよ。とくにジャスなんかにはな。」
「はい。そのご命令しかと守ることをこの命を捧げて誓います。」
私は咄嗟に最上級の礼節をしていることにきがついた。
「では、ジャスのことをよろしく頼むね。」
そう言って威厳のある顔からまた好青年のような顔で帰って行った彼を見送った。
ガチャ。
「おかえりっ。大丈夫だった?遅かったけど。」帰るとジャスが出迎えてくれた。
この甘い優しが本当に好きだと思った。
「ううん。ちょっとブルースターさんの足が早くて驚いただけ」
「まぁ確かに」そう言って難しそうな顔をしていた。
初めて会った時は苦手だと思ったこの人が、ずっと怖かった男の人が、彼のおかげで少しづつちゃんと向き合えば大丈夫だということを教えてくれた。
カイアルの秘密が少し明かされましたね。
彼もまた早くから養成所に預けられたのは理由があったんですよね。