母親が見つかった。
「只今より実践訓練を行う。」
サーファスにあるアメジスト隊の駐屯地で隊長が宣言をしたのが3時間前。
最果ての地と呼ばれていることがよくわかった。
エントタッドに比べたら確かに犯罪件数は少ないが、他に比べたらかなり忙しなく犯罪が発生した。
俺はと言うと人手不足になり俺とペアだった隊長が別行動を余儀なくされ任務に向かっていったため、新人として1人でちゃんと任務をこなしていた。
巡回をしていると、子供の鳴き声が聞こえた。こんな街に子供一人は確実におかしい。
「おい、坊主どうしたんだ?」
「お母さんとリリィが居なくなった。」としゃくりを上げながら頑張って俺に伝えてきた。
栗色の髪の毛に俺と同じ色の深緑の瞳をした子供は泣き止むことを知らないと言わんばかりに大声で泣き続けた。
「おい、坊主お母さんの見た目はどんな感じだ?」
「僕と同じ髪の毛で、ピンクのエプロンをしてた」
「おいおい、お前と同じ髪の毛の色の人はこの国に沢山いるんだ。じゃあ、リリィってやつはどんな髪の毛なんだよ。」
「リリィは白だよ」
「白かぁそれは珍しいな。もしかしてお前のおばあちゃんか?」
「違うよ、リリィは1年前拾ったんだ」
「…拾った!?ま、まぁそういう人もいるよな。」
俺は親に売られた、それを考えると確かに子供を捨てる人も拾う人もいるかもしれない。
「よし、じゃあにぃちゃんと探しに行こうか。」
ブリキの馬に着いた動力魔石を抜いて迷子のこいつと街を歩き出した。
「かぁちゃんがいたらちゃんとあの人って言うんだぞ?」
「…うん。」
「かぁちゃん優しいか?」
「うん!とっても。僕ねいつかおにぃちゃんみたいな戦士になってお金稼いでお母さんをもっと奥の街に済ませてあげるの!」
「そうか、お前何歳だ。」
「7!もうすぐ学校!」
「7かぁ、その割にはしっかりしてるな。」
そんな会話をしながら仕方なく手を繋いで街を歩いた。
20分くらいだろうか歩いていると足元にでかい毛むくじゃらがぶつかった。
「おっと、、」
「リリィ!!!!!!」
…リリィ?そう思うと毛むくじゃらは黒くて丸いキラキラした目を俺に向けてきた。
「まじかよ、リリィってワンコかよ。」
「リリィは僕の家族だもん」
そう言って嬉しそうに笑う顔を見て、俺が守りたいのは、この幸せだなと思った。
「ラントっ!!!もう、隣からはぐれちゃダメって言ったでしょ。」
そう言って後ろから母親らしき人の声が聞こえた。
「お母様ですか?」そう言いながら振り返ると、見た事がある人がいた。
栗色の髪の毛に俺と同じ深緑の瞳。
なんでこのガキを見た時から気が付かなかったんだろう。
そこに立っていたのは明らかに俺を見捨てた母親だった。
昔よりふっくらして血色が良さそうな顔をしてはいるが、俺が昔何度も何度も助けを求めた母親が目の前にいた。
「ほんとにすみません。ラントの母親です。ご迷惑をおかけしました。」
そんなことを言っていた気がする。
もう何も俺の耳には入ってこなかった。