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婚約者が真実の愛を見つけました  作者: 大介
本編

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2/5

中編 王太子クリスティアン

 毎年参加している卒業パーティーだが、今年は最高に楽しめそうだ!

 何を勘違いしているのかしらないが、ようやく情けない弟が元に戻るだろう。


「父上、母上。先に行きますね。アレクの雄姿を見逃してしまいますから。」

「ええ。あのドレスを見れば本気だと分かるわ。ようやくリズを奪い取る気になったようね。つまらない平凡な王子になってしまったのかと思っていたわ。」

「リズとクリスを婚約させようとした時を思い出すな。リズが他の男と結婚するのを、後悔しながら見ているだけのつもりであれば、性根を叩き直さねばならぬ。」


 父上も母上も分かっている。アレクは幼い頃にリズを誰にも渡さないと、泣きながら俺たちに訴えた。王族が権力を使って貴族から婚約者を奪うことは許されない。しかし、アレクがリズを迎えに行けば、リズは全てを捨ててでもアレクとの結婚を選ぶ。

 婚約した日も学園で再会した日も、リズはアレクの言葉を待っていたはず。卒業パーティーを待っていたのか…。本当に焦れったい弟だぜ。


 王宮から王立学園までは近い。馬車で10分とかからない距離だ。俺が先に行くのは、アレクの雄姿を見たいのもそうだが、婚約者のシャルと早く会いたい気持ちの方が強い。

 エスコートはアレクに任せたから何も心配はないが、やはり自分の隣にいて欲しい。リズも家族になるし賑やかな王宮になりそうだ。


 卒業パーティーの会場に入ると、アレクと知らない男が会場の中心にいて、その他大勢は遠巻きに見ている。男は項垂れているようだし、あれがリズの婚約者かもしれないな。

 それにしても静かすぎる。何かあったのか?


「アレク、何があった?この静けさは流石におかしい。」

「リズの婚約者がリズと婚約破棄すると声を上げたからです。諦めていましたがリズを婚約者にすることができそうです」


 諦めていただと!

 本気で説教が必要だな。


「それでリズはどこにいるんだ?」

「僕が用意したドレスに着替えてもらっています。」


 俺たちが説教する必要はなさそうだ。あのドレスを見ればリズはアレクを許さない。


「おーい、シャル!どこにいるんだ?」


 少し離れた場所からこちらに歩いてくる女性がいる。間違いなくシャルだ!俺が贈ったドレスが似合いすぎている。何を着ても可愛いが今日は特に可愛いな!


「クリスティアン様、綺麗なドレスを贈っていただきありがとうございます。」

「いつになればクリスと呼ぶんだ?畏まっていると疲れるぞ。俺やアレクを相手にする時は楽にすればいい。結婚した後は父上と母上にも畏まる必要はないからな。」


「王太子殿下に不敬な発言はできません。陛下や王妃様にもです。」

「あー、何度も言うが真面目過ぎだ。家族ともそのように話しているのか?」


「はい、私は父の駒でしかありませんから…。」

「そうか…。結婚したら駒ではなく1人の女性として暮らせ。家に帰るのが嫌なら帰らなくてもいい。俺に後ろ盾は必要ない。文句を言ってきたら黙らせてやる。女性を駒として扱うのは時代遅れだ。近隣諸国では女性も男性と対等に仕事をしているからな。それはシャルも知っているだろ?この国も変えてやるよ!」


 父上たちも頑張っているが、このままでは近隣諸国から見放されてしまう。

 王族の外交努力でギリギリの状態だ。


 他国の外交官が見ればすぐに分かる。現に蛮族の国だと笑われているからな。

 最悪の場合、連合国軍が女性を守るという名目で侵略してくるかもしれない。


 王立学園では外に目を向けた教育に力を入れ始めている。成績上位者の特進クラスにも入れないような奴は、当主になる資格はない。


 領地を管理する奴も貴族の世襲制ではなく、優秀な奴に代えていかなければならない。


「ありがとうございます…。胸が温かくなりました。この国を変えていくのは、とても遣り甲斐のある仕事です。頑張ります!」

「真面目すぎだ。公私の区別をしっかりするだけでいいぞ。普段は楽でいいんだ。それだけで更に魅力的な女性になれる。自分だけで変えるのが難しければ俺が手伝ってやる。結婚したらドロドロに甘やかすつもりだから覚悟しろよ。」


 シャルを愛でるだけの生活がしたい。


 勘違いした古狸との会話は疲れるだけで何の利もない。栄華を誇り自画自賛している間に、じわじわと追い詰めて仕留めてやる。

 

 国で大切なのは貴族ではなく平民だ。


「恥ずかしいです…。えっと、何故ブライアン様はこの場所から離れないのですか?陛下と王妃様も来ます。針の筵ですよ?」


 確かにそうだな。普通なら王族が集まってくる場所で、項垂れているような奴はいない。父上に挨拶する為に人が集まる。このような姿でここにいるだけで、家の恥になると分からないのか?リズと婚約破棄すると声を上げるくらいだから、常識がないのかもしれない。


 突然シャルに熱い視線を向けやがった。


「ああ、僕の真実の愛!シャルロッテ、君も素直になるといい。君は僕に選ばれた女性だ。次期侯爵夫人に相応しい。家の方針で無理やり、王太子殿下と婚約させられたようだね。我慢しなくてもいい。全てを捨てて婚約破棄するんだ。安心してくれ。僕と君は真実の愛で結ばれているのだから、決して手放さないよ!」


 はぁ!?

 急に気持ち悪いことを言い出しやがったぞ。


「おい、お前は何を言っているんだ!?俺とシャルを侮辱しているのか!?」

「真実の愛を見つけたから、リズと婚約破棄すると言ってましたね。兄上の婚約者が相手でしたか。僕と兄上に対する不敬罪で牢屋に入れますか?」

「ブライアン様、私はあなたと話したことがありません。ロマンス小説中毒ですか?リズとの婚約破棄ですら大問題ですのに、更に醜聞を重ねるのですね。あなたが愛しているのは自分自身だけです。他者への配慮がありません。あなたは確実に廃嫡されます。ですが自由に動かれるのも怖いですね…。」


 こいつは廃嫡された後、シャルに接触しようとする気がする。全てを失った奴は、理解できない行動をすることがあるからな。


「アレク、俺とシャルが結婚するまで牢屋に入れておける程の不敬を働いているのか?裁判の結果が分からん。こいつの父親と話して監禁させた方がよくないか?」

「王太子とその婚約者に対する不敬でも十分だと思います。それに王族主催の卒業パーティーをかなり台無しにされています。父上と母上が来る前に牢屋に入れておくべきでしょう。」


 牢屋に入れておいて父親に選択させるべきだな。

 皆の卒業パーティーの思い出が最低なことになってしまう。


「シャルロッテ、真実の愛を否定するのかい?それは不幸なことだよ。僕が廃嫡されるはずがないじゃないか。侯爵家嫡男からの誘いを断るなんて普通はあり得ない。王族も侯爵家には何もできないさ。君を勘違いさせようとしているだけだ。僕を信じるんだ!君も自分の心を信じて欲しい。お互いに惹かれあっているのが分かるだろう?」


 俺ですら薄気味悪い。シャルには相当きついはずだ。


「衛兵!こいつを城の地下牢に入れてきてくれ。平民用でいい。こいつの話は聞くに堪えん。」

「はっ!」

「王族による横暴だ!僕は侯爵家嫡男だぞ!許されるはずがない!シャルロッテ、待っていてくれ。僕が君を必ず幸せにするから!」

「侯爵家嫡男しか言わないですね。成績優秀者の特進クラスにも入れないのに、侯爵当主になれるはずがありません。あなたが愚かだからリズが婚約者に選ばれたのでしょう。リズであれば侯爵当主の執務はできるでしょうから。さようなら、二度と私に姿を見せないで下さい。」


 シャルにしてはかなり強い拒絶だ。

 やはり相当きついのだろう。


 何が真実の愛だ。

 流行り病で亡くなったことにするべきか…。父上にも相談しなければならないな。


「シャル、大丈夫か?もうすぐ不敬罪を無視した制裁が始まるぞ。楽しみにしていろ。」

「あの人の姿が見えなくなって落ち着いてきました。それよりも不敬罪を無視した制裁が気になります。大丈夫なのですか?」


 アレクはリズの着替えた姿が楽しみで仕方ないようだな。


 会場の空気は更に冷え込むかもしれないが…。2人の今後の為だから仕方ない。


 平民が見たら王族を身近に感じてもらえるかもしれない。

 男尊女卑にうるさい貴族の対応は面倒だが、皆に新しい男女の形を見せられるいい機会だ。


 少し過激かもしれないがな…。


「シャルはリズの本来の姿を知らないからな。王族はリズを不敬罪で訴えるつもりはない、心配しなくてもいいぞ。何が起きるか楽しみにすればいい。」

「楽しめる不敬罪があるのですか…。リズは淑女の見本のような女性です。何が起きるのか全く予想ができません。」


 アレクはこちらの話を聞いていない…。


 リズがドレスを着ることになったのは偶然だ。アレクが何かした訳ではない。それなのに特注の高級ドレスが用意されていたらどう思うか…。

 王族に嫁いで贅沢したいと考えている女性なら嬉しいかもしれないが、リズは激怒しているだろう。久しぶりに泣き虫アレクが見られるかもな。


「あっ。ごきげんよう。陛下、王妃様。」

「お義母様でいいのに真面目なんだから。外交に来ている訳じゃないから楽しみましょう。それにしても静かね…。」

「クリス、何かあったのか?」

「リズの婚約者が婚約破棄すると声を上げ、シャルも侮辱し、王族への不敬も酷いので退場させました。もうすぐ最高の見世物が始まります。会場の空気は更に冷えるかもしれませんが、俺は楽しみです。アレクは勘違いしたままですからね。」


 ここまで言えば父上も母上も分かる。卒業生の親たちも集まり始めているから、皆が驚くだろうな。王族に手を上げて許される女性がいるのかと。


「偶然リズちゃんがあのドレスを着ることになったのね…。アレクは浮かれているようですから仕方ありません。彼女に性根を叩き直してもらいましょう。」

「そうか、懐かしいものだ。アレクには全て受け入れさせる必要があるな。妻を何て呼ぶのか楽しみだぞ!」

「母上はリズにおばさんと呼ばれて説教しましたからね。確実にお姉様でしょう。父上はおじさんですがね」

「本当に何が始まるのですか…。今日は卒業パーティーですよ?」


 リズが隣にいないと本当に情けない弟だ。

 自分の信念を決して曲げない泣き虫アレクは格好よかったぜ。

国王はクリスとリズを婚約させようとしましたがアレクが全力で阻止しました。

クリスとリズは兄妹のような関係です。


リズは美人でシャルは可愛いです。

シャルはリズの婚約者だったからブライアンを知っていただけです。


アレク、リズ、シャルで成績の上位争いをしていました。

1位から3位は3人の順番が変わるだけです。

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