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「行ってらっしゃい、元気にね」
「ああ、今までありがとう母さん。」
育ての母がレンに別れの挨拶を告げ、彼も返す。
レンの独り立ちの日、年齢にして18の彼はここヤヌスの町を出て王都リヴァンへ向かい始めた。
☆
「なぁ兄ちゃん、おまえさんは王都に職探しにでも行くのかい」
「いや、いい機会だから目的を探しにでもと思ってな」
「ほー、若いってのはいいな」
公共交通機関のボックスに乗るレンに同乗しているお爺さんが話しかけた。
「俺が若い頃はな、カルタミカ王国から独立した時期だったからそらもう大変。そん時は独立した自分の国がなんて名前か知らんくらい生きていくので精一杯、今は落ち着いてるがそれでもフェローシャスが出てくる、変わっちまったよ。知ってるか兄ちゃん、独立前はフェローシャスはいないし、個人用AIってのがあってダラダラしていても生きていけた平和すぎる時代だったんだ今じゃ考えられないだろ」
「ああ、考えられないな。退屈で死んでしまう」
お爺さんにそう返すレン。
「ははっ、今の普通と昔の普通は違うからな」
「まあそうだろう」
指を鳴らしお爺さんが閃いたかのように
「そうか目的探しか、だったら昔のような世界統一でも目指したらどうだ、退屈なんてしないぞなんせ再統一だからな」
笑いながらお爺さんはそんなことを言った
「再統一か、面白いかもな」
「はっはっはっ!面白いか、じゃあ統一でもできたら俺を高官にしてくれや」
そうお爺さんは冗談を言う
そんな風にお爺さんがほぼ一方的に話しているとボックスは駅に着き2人はそこで別れた。
☆
ここはヴァレンス伯爵が統治するヴァレリエン王国の中央にある王都だ。87年前に約1800年続いているとされるカルタミカ王国から約30の貴族達が独立し興した国の一つである。
ボックスを降りたレンは当てもないため宿を探しに歩き始めたが、王都の宿は多く、整理された街並みのためすぐに見つかった。
「1人部屋、一週間で頼む」
受付をしているとレンは白く、茶色の模様が入った猫を見つける
「おいで」
手のひらを猫に向けて待つ、すると直ぐに猫は頬を手に擦る
「なんて名前なんだ」
「マロです。猫がお好きなんですか」
「ああ、世界一可愛い生き物だと思っている」
猫好きのレンはそう答える
「お昼から夜までこの受付に居ますからいつでも遊んであげてください」
受付の人がそう微笑みながら教えてくれる。しばらく戯れた後レンは部屋に入った。
☆
次の日、レンは生きていくための金が必要のため稼ぎに宿を出て歩いて守護者ギルドに向かう。王都について直ぐに宿へ向かったため、ゆっくりと観光しながら向かうことにした。王都は計画的に作られているためごちゃごちゃ感がなく、高層ビルが整然と並び道も綺麗に掃除がされている。レンが住んでいた町も十分だがここはさすが都会だと思わせるような圧倒さを持っている。
そして15分ほど歩いたところでギルドが見えた。
「こんにちは、ご来場ありがとうございます。こちらをどうぞ」
レンは事前にギルドの登録と依頼の受注を済ませておいた。そのため職員の挨拶と共に銃を渡された。
この銃はフェローシャス用の銃だがそもそもフェローシャスや守護者ギルドは何なのかというと世界がカタルミカ王国から独立して数年後に突如として家庭用、個人用のロボットの多数が消え、しばらく経った後に現れた時には凶暴化し、人間を襲うようになった。そのロボット達をフェローシャスと呼んでいる。それをどこかの国が改良し、領土を広げる為に送り込んできた戦争行為だとの声も上がったがどの国も独立したばかりでそのようなことをしている余裕がなかったことから真偽が不明瞭で現在に至ってもわかっていないということになっている。当時は数も少なく、強さもそこまでであったが次第に数も強さも上がり、それに対処する専門の組織が現れたそれが守護者ギルド。現在はフェローシャス退治以外も依頼は受注しているがあくまでメインは変わっていない。
フェローシャス用の銃は弾が電撃パッチとなっており、それをフェローシャスに付けることでショートさせる事ができる。しかし、張りどころによっては効果が無いこともある。なぜそのような方法を取っているかと言うと、ロボットを再使用する為である。通常の銃や他の武器などで破壊して止めるより圧倒的に損壊が少ないと言う利点があるからだ。だが、何も敵は無手では無いので武器は個人の通常銃で破壊することが多い。その武器さえも壊さず回収出来れば利益もその分多くなる。
フェローシャス退治は銃の扱いに慣れている者であれば自己責任で依頼を受注することが可能で日銭集めでする人から専門で仕事にしてる人まで、レンは一時凌ぎのために今回の依頼を受けた。
そして今日、レン初のフェローシャス退治が始まる。
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