DELVERANCE
とりあえず塔のダンジョンの商店街で茶をしばきながら作戦会議。
「問題行動って何だろうね?」
「噂ですが依頼の失敗が続きスポンサーから見放されるのを恐れているのでない
でしょうか?結果、他の冒険者を脅したりボスの横取りをしたりとかしてる
んじゃないでしょうか。」
「大手クランが聞いてあきれるね。スポンサーって貴族?」
「そうです。魔剣やクランハウスを提供してもらってるはずです。」
「どこかで聞いた話だ。仮にザクロさんが目的の子だとしてクランは
やめれるの?」
「雇用契約によります。ひどい所だと罰金をとる所もあるそうです。」
「それはひどいね。冒険者ギルドは何してるんだろう?」
「原則として冒険者は自己責任ですから。ただ、成人前の冒険者やポーターの
皆さんには酷です。」
「大手クランが無くなったら困るかな?」
「潰す気ですか?」
「状況による。大方、今回のスタンビートもスポンサーの屋敷でも守って
たんじゃない。」
「そうでしょうね。」
「ワイズ。」
「はい、ここに。」
「『龍の巣』のスポンサー貴族を調べておいて。」
「承知しました。」
「キリコ、待ってる時間が惜しいから僕達もダンジョンに潜ろう。」
「わかりました。砂漠のフロア―みたいですので転位して逆に向かいましょう。」
「了解。」
この前みんなが進んだフロアーまで転位し、空があるのでイド君に乗って捜す。
さすがにモンスターと戦う気はない。
「カモナ、ドローンとピーちゃんを。」
「かしこまりました。」
マルチスクリーンにして1つはワイズにする。
「貴族の事、わかった?」
「はい、スポンサーになってるのはスチュワート侯爵家です。」
「まじか・・・雷帝の弟だね。」
「そうです。『龍の巣』だけではなく複数のクランのスポンサーをしてます。
侯爵家自体には不正等は見当たりませんでした。侯爵自身、冒険者でした
ので純粋な支援という事だと思います。」
「成程ねえ、その数クランで支援の枠を争ってる感じか。という事は
『龍の巣』の現状を知れば切るのも問題なさそうだね。」
「雷帝の手前、問題があるクランは切るでしょう。」
「了解、ありがとう。キリコ、『龍の巣』は制服か何かあるの?」
「はい。ですのですぐに見つけれますよ。あっ、居ました。あれです。」
「うわぁ・・・動けるのあれ?」
「無駄にキラキラしてますね。正直言って趣味を疑います。」
「だよね~。」
「大剣の方が多いですね。」
「このフロアーは大型や硬いのが多いからかな?結構良い武具を使ってる。
さすが大手クランって感じだ。」
「Sランクの2人は魔剣を使ってるはずですが。」
「あっ、あれかな?という事はあれがギルマスだね。女性の割には大きいな
レベッカさん位ある。」
「そうです。名前は・・・忘れました・・・。」
丁度そこにどでかいサンドワームが現れた。お手並み拝見。
もちろんザクロも捜してるよ。
「あれだね、典型的なやつだ。」
「これが普通だと思います。私達が他のギルドやクランと違いますね。」
「みんな一騎当千だもんね。とは言えやっぱタンクが必要かな?」
「今の所は問題ありませんが、深層はどうでしょう。」
「考えておこう。それよりザクロらしい子が見当たらない。」
サンドワームとの戦いはタンクの皆さんが突進を受け・・・ほとんどが
跳ね飛ばされてるけど。魔導部隊が色んな魔法を浴びせる。成程、倒すというか
弱らせるのが目的か・・・弱ってないけど。そしてとどめにギルマスが巨大化
しか大剣で一刀両断。傷すらついてねー!
「ちょっとキリコ!弱くない?大手クラン。」
「おかしいですね。さすがにサンドワーム1匹くらいは倒せるはずなんですが
Sランクですよ。」
これはもしかして、定番のあれかな?
「カモナ、軍隊アリの巣がないかな?」
「ございます。探し人もあれではないでしょうか?」
「えっ?」
確かに軍隊アリに2人が囲まれている。定番すぎる・・・。
「あれは、まさか・・・。」
「囮にされたんだろうね。」
「2人を見捨てたんでしょうか?」
「たぶんね。」
「でます!」
「そうだな、話は助けてから聞こう。カモナ、手伝って。」
「かしこまりました。」
3人で囲まれてる2人の前に降りる。
「蟻酸に注意してね。後ろの2人はとりあえずじっとしてて。」
「なっ!どこから?」
「・・・・。」
「結。」 2人に結界を張る。
「け、結界・・・。」
キリコとカモナは軍隊アリの大群に既に突っ込んでいっている。
おお・・・カモナがすげーんですけど、ビーとの修行の成果だな。
キリコはいつもの剛剣だけど、プラス鋭さが増してる。
さて、僕も参戦しようか・・・あれ?何で戦ってるの?
考えてみれば2人を確保できたんだからイド君に連れていけばいいんじゃね?
いかんなあ・・・はっ、これはもしかしてダンジョンマジック・・・。
「キリコ、カモナ。イド君に2人を連れて戻る。」
「かしこまりました。」
「わかりました。」
「2人とも、早くその扉に入って。」
「えっ?」
ふぅ、とりあえずこれで話は聞ける。
「ここは・・・。」
「・・・・。」
「ああ、ここは僕の家みたいなもんだから安心して。」
「ダンジョンの中ですよー!」
「まあまあ、これでも飲んで落ち着いて。」
コーヒーとカフェオレを出す。カフェオレはさっきから一言も喋ってない
ザクロのだよ。
「ふぅ・・・ありがとうございます。僕はジレイといいます、こっちはザクロ。」
「僕はカエデ、こっちはキリコ。」
「キ、キリコー!Sランクのキリコさんですかー!」
「・・・まあ、そうですね。」
「一応、聞くけど何で2人は軍隊アリに囲まれてたの?」
「そ、それは・・・。」
「ジレイは私を助けようとした、弱いのに。」 ザクロが喋ったー!
「はは・・・面目ない。」
「大方あれでしょ、ザクロを囮にして軍隊アリから逃げた。」
「・・・・はい。」
「全く大手クランが聞いてあきれる。それにジレイさんは白魔導師でしょ?」
「どうしてそれを・・・。」
「いやね、2人を助ける前に『龍の巣』がサンドワームと戦っててね。
こう言っちゃなんだけど大手クランでSランクが2人も居るというのに
弱くてさ、支援魔法ありきなんじゃないかと。」
「僕は拾ってくれた『龍の巣』に恩を返そうと思って必死に支援魔法や
モンスターを勉強したんですが結局、役立たずと・・・。」
「私の事は放っておいて良かった・・・覚悟はしていた。」
「はぁ・・・あのねザクロ。初対面で言う事じゃないけど、『龍の巣』のやった
事は殺人未遂で犯罪なんだよ。冒険者である以上、死とは隣り合わせだけど
死ぬべき場所ってのがある。少なくともここじゃないし今じゃない。」
「どうしますか?」
「そうだね。ザクロ、身体のどっかに鱗ない?」
「・・・何故?」 ビンゴー!1発で引き当てたよ。
「そっか。これからの事だけど『龍の巣』は放っておいても崩壊するだろう
けど、犯罪を見逃すつもりはない。蘭お姉様に報告する。僕達の目的は元々
ザクロだ。依頼されてるから一緒に来てもらう。ジレイさんは『龍の巣』に
戻る?」
「さすがに嫌気がさしました。」
「だよねえ。ジレイさん、ソロでやってみる気ない?」
「いや、私、戦闘はからっきしでして・・・。」
「ジレイさん、白魔導師の本質は支援魔法じゃないよ。」
「はっ?」
「どういう事ですか?」
「僕達もバフは使うけど少人数だったり逆にエリアだったりする。
けど、白魔導師はその中間で大人数にそれぞれの特性にあったバフを
かけるんだよ。」
「えっ、そんな事が可能なんですか?」
「可能だよ。ただし、それには膨大な知識と空間把握能力が必要だ。
それに時間も限られる。ジレイさん、重ね掛けもできるでしょ?」
「・・・はい。」
「それが『龍の巣』が大手クランになった要因だ。」
「そんな重要なジレイさんを囮として切り捨てたのは何故です?」
「勘違いしたんだ。」
「勘違い?」
「支援魔法のお陰で実力以上に戦えていたのに、それを自分達がレベルアップした
と勘違いしたんだ。これは白魔導師あるあるでね、白魔導師が少ない理由
でもある。」
「成程、『龍の巣』の崩壊も自業自得だと。ですがそれとジレイさんがソロでやる
との関連がわかりません。」
「こっからが本質の話しなんだけど、その支援魔法は自分にもかけられる。
僕達が使う強化魔法とは全くの別物と言っていい。身体だけでなく魔力、
それに脳にもかけられるからね。」
「まじですか?」
「まじ。しかも重ねがけもできる。ソロを勧めたのは並みの冒険者ではジレイ
さんの足手まといにしかならないからだ。もちろん、武具を使えないと駄目
だけどね。」
「カエデ様、あなたは何者ですか?私はその事を可能性のひとつとして考えて
ましたが実践したことはありません。」
「最近は使ってないけど、昔使ってたから。とにかくジレイさん次第だけど
勿体ないよ。」
「私がソロの冒険者に・・・夢をあきらめなくていい・・・。」
「考えてみて。まずはザクロの方を片付けないと。ザクロ、今どこに住んでる?」
「クランの物置。」
「・・・。その前は?」
「孤児院。11歳になったから出てけって。」
「孤児院にそんなルールはありませんよ!」
「キリコ、落ち着いて。もう過去の事だ。ザクロ、君は冒険者になりたい?」
「いや別に・・・、ご飯が食べられればいい。お腹空いた。」
「そっか・・・じゃあまずはゆっくり食事しよう、カモナ。」
「かしこまりました。」
「2人とも食事が出来るまでお風呂にでも入ってゆっくりして。
キリコ、ザクロをお風呂に。」
「わかりました。ザクロ、行きましょう。」
「ジレイ様、こちらに。」
さてと・・・。
「ワイズ、話は聞いてたね?」
「はい。ザクロの居た孤児院の特定は済んでます。ヒカミの居た所と同じような
事をしてます。」
「頼んでいいかな。」
「お任せを。」
みんなで美味しい食事をとる。
「美味しい・・・。」
「ザクロ、遠慮せずたんとお食べ。ジレイさんも。」
ザクロは甘いプリンアラモードに目を輝かしている。ガリガリだなあ・・・。
何か腹が立って来た。
「カエデ、怒気が・・・。」
「おっと、すまない・・・。さて、それじゃあ蘭お姉様の所へ行こうか。」
冒険者ギルドはざわついていたが、いさいかまわずキリコが受付嬢の所に。
「すみません、大至急マスターにお取次ぎを。」
「申し訳ありません。昨日の件の処理で誰も取り次ぐなと。」 こいつ・・・。
キリコはSランクのタグを出す。
「これはSランク案件です。昨日の処理など後回しにして下さい。これはお願い
ではなく命令です。」
キリコも相当、怒ってるな。
「わ、わかりました!少々、お待ちください。」
待つ気はない。受付嬢の後に続いて執務室へ。コンコン。
「マスター、急ぎでキリコ様が。あっ!」
返事を待たず執務室に入る。
「今、忙しい!んっ、何だ?」
ザクロとジレイさんを見た秘書的な人が僕らを止めようと前に出て来た。
「動くな!邪魔だ!」 言霊を発動。
秘書が固まった。蘭お姉様が驚いている。
「蘭お姉様、申し訳ありませんがお時間を頂きます。」
「何だ突然、言霊も使えるのか。」
「ええ、緊急事態ですので。その人はぐると見てますから。」
「はぁ・・座れ。ザクロと・・・ジレイだったか・・・。」
「キリコと僕はある依頼でザクロを捜してました。ザクロを追って
砂漠のフロア―に行くと丁度2人が軍隊アリの囮にされていましたので
救出して連れてきました。」
「何だと!」
「たまたま依頼で捜してたので間に合いましたが、そうでなければ2人は死んで
ました。『龍の巣』は日常的に囮を使ってるんじゃないですか?いや、使って
ます。これは殺人であり犯罪です。そしてその人の動きを見ていると
冒険者ギルドはそれを黙認してますね。」
「痛い所をついてくるな。冒険者は基本自己責任だ。もちろん殺人は認めてない
がな。ただ、アタックしている冒険者全員を見張る事は不可能だ。結果、
クラン、ギルドからの報告を信じるしかない。」
「『龍の巣』から提出される2人は軍隊アリに襲われて死亡という報告を
信じると?」
「規則上はそうだ。」
「わかりました。では僕も殺人を犯す場合、ダンジョン内でやる事にします。」
「お前!」
「蘭お姉様、あなたが言ってるのはそういう事ですよ。もちろん、全ての冒険者
がそういう事をしてる訳じゃないのはわかっています。ですが『龍の巣』は
クロです。雷帝の弟の息がかかっていようとも、Sランクが2人いようとも
しかるべき処置をお願いします。もし、それが出来ないのなら僕がダンジョン内
で『龍の巣』を始末します。」
「脅しか?」
「何を腑抜けてるんですか?僕は聖人君主でもなんでもないです。昨日も
スタンビートの最前線にいたのは1年生だ。もう1度言います、この国の大人達
は何を腑抜けてるんですか?情けない姿を子供達に見せるのは止めて下さい。」
「・・・・。」
「まあ、どのみち『龍の巣』は終わりますけどね。」




