FLYING SHIELD
「ロイド流はあらゆる武道の身体作りに適した流派です。この道場に色々なカテ
ゴリーがあるのはロイド流をベースにして派生していくからですね。」
「成程。確かにぶれずに剣を振るには筋力が必要ですもんね。」
「ビッケはそろそろ次の段階に入ってもいいかもですね。」
「次ですか?」
「はい。盾術か今カエデ様がやっていたような、いわゆるパリィと呼ばれる
技術です。これからダンジョンの中層や街の外に出た時など、どうしたって
自分より力のあるものや大きいものとやりあう事になりますからね。」
「師範、最近ダンジョンがきついんだ。」
「わかりました。ビッケの場合、盾術がいいでしょうか。学んでみますか?」
「はい!」
「では次回より私が教えます。」
「お願いします!」 ビッケが嬉しそうだ。
「カエデ様、パリィ教えて。」
「えっ!」
結局、クリアさんに懇願されてたまに教える事に。どうもうちの女性陣を
相手にする事が多かったため攻撃よりもパリィの技術が向上していたようだ。
クリアさん曰く、生き残るための剣だと・・・。
そう言われると納得するしかないよね。実際そうだから。
帰りはビッケを加えてみんなで飯を食いに行った。学生っぽい。
安くてうまい定食屋があるらしい。
おっ、学生も結構居る。僕は懐かしの唐揚げ定食。
「どうだった?」
「俺、直刀は教える事ないって、師範頼まれた。だから槍術を学ぶ事にした。
レビとナミにパイセンって呼べって言われたがな。」
「ははは、じゃあ諭吉用の黒竹を作っておくよ。」
「頼む。」
「僕はあれだね。カーボンソードの部門を作って欲しいって言われたよ。
師匠に相談する。たぶん喜ぶと思うし。」
「俺はまだまだだな、どうしても重さに慣れん。筋トレさぼってたからな。
屋敷にジムを作るわ。」
「おお・・・さすが伯爵。」
「やめろ!」
「みんな、すげえな・・・。俺もがんばらなくっちゃな。」
「ビッケ、盾を用意するよ。いい事思いついたんだ。」
「「嫌な予感・・・。」」
「何でだよ!ちょっとビッケに空を飛んでもらうだけだよ!」
「「それっ!」」
騒がしくも楽しい夕食を終え、それぞれ帰路につく。
「ただいまー。」
リビングに行くとクロ兄とクジャ姉が居た。
「カエデちゃん♡。」
「久しぶりー、戻ってたんだね。」
「うん。父さんから代行、頼まれたしね。」
「そっか。」
「カエデ、あなたは行かなくて大丈夫なの?」
「ベル姉達が呼ばれたよ。何かあったら呼ばれると思うけど。
まっ、大丈夫じゃない。」
「色々ときな臭いわよ。」
「あれ?クジャ姉って完全に引退したんじゃないの?」
「そうよ。けど、情報は入ってくるわね。」
「ティーターンのどの柱が仕掛けてるかわかる?バーサーカーだけ気になる
というかサンプルが欲しくて。」
「おそらくポイべね。」
「へぇ・・・結構な大物が動いてるんだ。」
「直接何かしてくる事はないと思うけど、トライガンを再編成したり
活発化はしてるわねえ。」
「僕はまず目の前の事をクリアーしないと。」
「スタンビート?」
「いや、野外研修。」
「懐かしいなあ・・・。」
「スタンビートはキリコ達が手を出すなって言うしね、僕は学園長からの依頼
をこなしつつキャンプを満喫だね。」
「楽しそうだね。」
「まあ楽しくやってるよ。2人はいよいよ結婚式だね。」
「そうなんだよ。さすがに神界の結婚式は緊張するよ。」
「ははは。神界とこっち半々で生活するの?」
「父さん達もまだまだ現役だしね。当面は父さんのサポートかな、暗部の暗部
みたいな感じ。神界は修行だね。」
「クロスはすでにゼウス様並みね。」
「さすがクロ兄。クロ兄が帝都に居てくれれば安心して学園生活を送れるよ。」
「任せて。」
さてと、諭吉仕様の黒竹とビッケの盾を作ってしまおう。
諭吉の黒竹は双槍型で2本を合体できるようにしておけばいいだろう。
最初からアダマンタイトで作っておく。重いぞ、ウヒヒ・・・。
今回のメインだ。ビッケのフライングボードもとい盾。ラプラスの盾も考えたが
子供には過ぎたものだろう。リフレクトと飛行のサーキットを組み合わせてっと
よし、完成。早速、訓練場でテストしてみる。
おお・・・浮いた・・・だけ?だぁー!推進力の事、忘れたー!
う~ん、ドルトエンジンなんて重くて付けれないし・・僕だったら風魔法で
何とかなるけど、ビッケは剣士だしなあ・・・。
あれだな、この盾は魔導師にはグッドだな。よし、ヒムリンに売り込もう。
いや違う!今はビッケの盾だ。
まてよ・・・一応、ここも惑星で重力があって僕らは地に足をつけられてる
んだよな、という事は球体になってるわけだ。
もしかして・・・、僕は乗った盾を前方に傾けてみる。動いた!
後ろに体重をかけるとバックした。左右も同じ、面白い!
高度とスピードは流す魔力で調整できる。とは言えビッケの魔力を増やさない
と飛行は無理だろう。当面は持ち歩いてもらおう。
軽量化のためミスリルで作ったがビッケが狙われたら困るから鉄に偽装。
趣味として自分の分もコピーしておく。
こんなもんかな、風呂入って寝よう。
翌日は魔導の授業からだ。マーキー先生がサバイバルで役に立つ生活魔法を
教えてくれた。生活魔法は基本中の基本なので属性に関係なく使える。
クリーンとかだね。
シゲさんの提案で班どおしの連絡方法を決める。僕らは念話があるから
大丈夫なんだけど研修にならなくなっちゃうので念話も禁止。
いよいよ野外研修だ、楽しみー。
午後の授業も終わりクラブハウスへ。
アリーナはアカリと一緒にちゃんと来たようだ。
「キリコ、ヒカミ。アリーナはどうだったの?」
「そうですねえ・・・。圧倒的に体力不足です。」
「ただ瞬間的に強くなりました。本人は自覚してるかわかりませんが黒魔法
を使っていましたね。剣が黒くなってましたから。」
「成程ねえ・・それでAクラスか。ダークエンチャントを使ったんだね。」
浄眼と黒魔法・・・・滅茶苦茶だが面白いな。
「どうするんです?」
「まずは何より体力をつけてもらわないと始まらないよ。」
「となると、やはり・・・。」
「ランニングだ!アリーナ、アカリ、走るよ。」
「えっ、私もですか?朝、天舟に走らされましたけど・・・。」
「アカリもなるべく額の紋章を使わずに力を発揮できないとね。」
「そうですが・・・。」
「走りおわったら、餡蜜が待ってるよ。」
「アリーナ、行きますよ!夕日に向かってダッシュです!」
「何です、この女!手に平返し!あの・・餡蜜が何かはわからないですが、
それはお茶会的な?」
「もちろんさ。」
「行くぞ!アカリ!地の果てまで!」
「おうっ!」
「何でしょう・・・似た者同士な感じが・・・。」
「スズメ、何故ウォーミングアップを?」
「えっ?地の果てまで走れば餡蜜とやらを食べれるんですよ。楽勝です。」
「アカリとアリーナ以外の参加は自由。スペシャルなトレイルコースを用意
したからさ。」
「ほう・・・スペシャルと聞いて参加しない訳にはいきません・・ザイル。」
「もちろんです、エイル。」
「あの、カエデ。スペシャルとは?嫌な予感しか・・・。」
「手っ取り早く体力をつけてもらおうと思ってさ。ベル姉が修行してる所を
真似てリングと作ったんだよ。内輪山って言ってね大山プロデュース。」
「ほう・・オオヤマ様プロデュースですと。ヒカミ、行きますよ。」
「わかりました。カルラ、優、才蔵も行きますよ。」
「仰せのままに。」
「はい。」
「わかり申した。」
何故か女性陣が全員参加。まあ、いいけど・・・。
「じゃ、リング。よろしく。」
「承知しました。皆様、こちらに。」
「あっそうそう、全員武装してねー。じゃないと・・・。」
「じゃないと?」
「死ぬから。」
「えっー!」 みんな消えた。
「大丈夫なのか?野外研修あるぞ。」
「仮想空間だから。」
「カエデ、内輪山って月詠の所のだよね?」
「そうだよ。」
「アトム、やばいのか?」
「やばいなんてもんじゃない。この世界には居ない大型モンスターがうようよ。
確かカエデは最短記録保持者だよね?」
「うん。鈴音と白華全開で。」
「まじ?」
「まじ。」
「ちょっと俺も走ってみっかな・・・。」 才蔵が心配になったか?
「諭吉、これ使って。」 ぽいっと黒竹を投げる。
「ぐわっ!おもっ!」
「諭吉専用、アダマンタイトの黒竹だ。テストしてきて。」
「わかった。ボルタ、付き合え。」
「えー、まあ走るだけならいいか。俺も餡蜜食いてえし。」
2人も消えた。プププ、ボルタよ内輪山はダンジョンの比じゃないからな。
「楽しそうだな、おい!」
「いや~、鈴音と白華全開だけじゃなく極大魔法連発でやっと切り抜けたから。」
「・・・・戦闘狂共には丁度いいか。」
「丁度いいの!」
「さて、ゼータはお茶でもしばこう。」
「だな。」
「いいの?」
「アトムも走れば?」
「ノーサンキュー。」
ビッケ、お茶してないかな。おっ、居たいた。
「お疲れー。」
「お邪魔してます。」
「お、おう、お疲れ。」
「どした?」
「ちょっとブラウに相談してたんだよ。」
「へえ。」
「ビッケは魔導剣士になりたいそうです。」
「おお・・・。」
「ゼルダを見ててさ、いいなって思ったんだ。俺、身体強化しか
使えないから。」
「その意気やよし!ビッケ君、僕は感動した。そんなビッケ君に朗報だ。
ブラウ、ビッケ君に風魔法を教えてくれたまえ。」
シゲさんが頭を抱えている。
「風魔法を?」
「そう、風魔法だ。ケーキ食べたら訓練場に行こう。
ブラウにも見てもらいたいからさ。」
訓練場へ。
「ビッケ君、これからパーティでタンクするし道場では盾術を
学ぶんだったな?」
「そのつもりだけど。」
「ならばこの盾を使え。」
「おお・・・。」
「結構、細いというか尖ってるというか・・・。」
「この鋭角の部分はこう使う。」
ザシッと地面に刺した。
「成程、確かに安定するな。」
「もちろんモンスターに刺す事もできる。表面にはリフレクトのサーキットを
仕込んでる。ドラゴンのブレスくらいなら跳ね返すぞ。」
「ええ・・・。」
「だが当然その分、魔力が持っていかれるなリフレクトはいざっていう時に
使ってくれ。」
「わ、わかった。」
「さらに!」
「えっ?まだ何かあんの?」
「むしろここからが本番だ。見ててくれ。」
僕は盾に魔力を流し、盾に乗る。
「やはりな・・・。」
「なっ!浮いてる・・・。」
「この盾は・・・まあ理屈は色々あるが、とにかく浮く。でっ、盾の傾きに
よって進む事が出来る。」
スイ―ッと飛んでみせる。
「まじか・・・。」
「高度やスピードは流す魔力量によって決まる。風魔法を覚えればそれを推進力
にかえて、もっと複雑な動きが出来るようになる。だから魔力量が増えて
風魔法を覚えるまでは持ち歩いてくれ。」
「わかった。けど、いいのかこんな魔導具もらっちまって。」
「大丈夫だ、いい宣伝になる。」
「宣伝?」
「この盾は売れます!」
「ブラウ?」
「リフレクトも防御結界も魔導師にはものすごい負担になるんです。
ですからこの盾があれば・・・。」
「いや~ガッポガッポだね。ビッケ君、その盾でおおいに活躍し盾の勇者なんて
呼ばれてくれたまえ。あっ、モニター代は出すからね。」
「えっ、金払うどころが貰えるの?」
「当然だ。」
「よーし!頑張って風魔法を覚えるぞー!」
その意気だ、ビッケ。
さて、ランニングチームはそろそろ戻ってくる頃かな。
リビングに戻るとそこには無数の屍が・・・。
「ちょっと、大丈夫なの?これ。」
「全員、見事に食われたようだね。」
「えっ!」
キリコとヒカミがガバッと起き上がり、僕に詰め寄る。
「「何ですか!あれは!」」
「ランニング用のトレイルコースだけど・・・。」
「何でランニングコースに山のような巨大なモンスターがうじゃうじゃ居るん
ですか!」
「まあ、みなの様子を見てるとわかるけど・・・。あれはトレイルコースだよ、
戦わずにいかに逃げるかだ。戦うのは問題ないけど、そうすると体力を
奪われるから踏破する前に食われちゃう。」
「・・・戦わずに逃げる。」
「あくまでアリーナの体力作りが目的だからね。」
「アリーナは1体目のモンスターに食われてましたが・・・。」
「早くね!諭吉とボルタが踏破したみたいだけど。」
「い、いやあ皆が戦ってる隙にな。」
「さすがという事でしょうか・・・。」
「ふ、ふぉー!負けてられません!」
「ええ、食べられる感触はえぐいですが負けられません!」
「止めはしないけど程々にね。あと、逃げようとしてるアリーナも
連れてって。」
「い、いやー!食べられるー!」
「どんなだ!」 女性陣は再挑戦するようだ。
「リング、よろしくね。」
「承知しました。」




