TEMPEST
少し考え事をしたいので青国のカフェへ。
ここの紅茶は旨いんだよねえ。あと、スコーンも。
「すいません、ダージリンとスコーンを。」
「少々、お待ちください。」
テンペストか・・・。暴風竜テンペスト、本来神に加担しないはずのドラゴン種
だが、なぜか奴だけはクロノス側について大暴れした。クロノスの評判が
悪いのはほぼ奴のせいだ。善とか悪とかあまり気にしない僕だが奴だけは完全な
悪と認識していた。なにしろ子供を好んで食べるのだ。
しかも、大きさはバハムートクラス。
人間に変化もできて、優しいお兄さんとかお姉さんを演じ子供達を毒牙にかけた。
おそらく何百人では収まらないはずだ。テム達に間に合わなかったのはまさに
テンペストと戦っていたからだ。四聖獣達も全開だったが奴は強かった。
それでも何とか倒して2度と蘇れないように黄泉に送った。
奴の因子がストームさんに・・・。
そんな強力な因子の適合者をハイランダーギルドが放っておくはずがないし
ティーターンもバーサーカーを完成させるために狙ってくるかもしれないな。
やれやれ・・・あー紅茶うめー、スコーンもうめー。僕はジャム派ではなく
メイプルシロップ派。
「なにをそんな難しい顔をしてスコーンを食べてるのです?まずいですか?」
「おいしいよ・・・。」
「知ってます。すいません、私にも同じものを。」
「帝都じゃなかったの?」
「こちらの制服を頼まれたので、打合せに。」
「そうなんだ。」
「何かあったのですか?」
「キリコはテンペストって知ってる?」
「最強最悪の暴風竜くらいしか。詳しい事は知りません。」
「ストームさんの因子がそれだそうだ。」
「カエデはテンペストを知ってるのですか?」
「クロノスとの戦いの時、四聖獣のみんなと僕とで倒したよ。」
「お父様も知っているのですね。」
「4人とも怪我するくらい強かった。もっとも僕を無傷でクロノスの所に
送るためというのもあったんだけど。」
「その強力な因子で妖魔化したらどうなるんです?」
「最強の妖魔になるだろうね。」
「それで難しい顔をしてたんですね。」
「今の所、妖魔化を止める方法がないんだ。」
「成程・・・。最悪、妖魔化したら私が倒しますからご安心を。ですから
カエデは妖魔化を止める方法のみに頭を使って下さい。」
「ありがとう、心強いよ。」
「しかし、そうなるとハイランダーギルドも放っておいてはくれなさそうですね。
ティーターンも。」
「知ってたんだ。」
「はい、エイルから聞いています。これはギルドの女性陣で作戦会議ですね。
やられる前にやってしまおうです。」
「・・・・心強いよ。僕はこれから黒国に行くよ。テンペストの資料が本屋に
あるはずだ。」
「打ち合わせも終わりましたので私も行きます。スズメが居るでしょうから。」
2人でジープで移動。よく通っていた本屋だから場所はわかる。
本当の名前はわからないが僕は爺さんをビショップと呼んでいた。
「ビショップ、居るかい?」
「んっ・・・我が王か・・・。」
「よせよ、今はカエデ・ガーネット11歳だ。」
「違和感しかねえな・・・。」
「そのうち慣れるさ。それよりスザさんのとこのスズメが来てないかい?」
「ああ、書庫に居る。」
「へぇ、珍しいな。初対面であそこに入れるとは。」
「あの娘っ子は本物だ。」
「ワイズの所の司書をやってるくらいだからね。」
「ワイズ様の所の・・・。そりゃあ本物のわけだ。っで、何を探してる?」
「テンペストの資料。」
「それなら書庫だ。表で売れる代物じゃねえからな。そっちの娘ッ子は誰だ?
んっ、白竜じゃねえか。いや、小せえな。」
「娘だよ。」
「ってー事は青の姫か?」
「そうなるな。」
「朱の姫に青の姫・・・お前、変わっちまったな・・・。」
「何がだよ!」
書庫に行くとスズメが真剣に読書していた。
「どうだい?スズメ。」
「カエデ、キリコ。ここはすばらしいです。うちの図書館にもない貴重な本が
ごろごろしてます。私、ここに住みます。」
「僕は別に構わないけど、スザさん達が騒ぎ出すからやめて。」
「むう・・・ならばお店の傍に別宅を探すまで。」
「ビショップに探してもらうといいよ。この辺の顔役だから。」
「そうします。2人はなぜここへ?」
「ちょっと調べもの。テンペストの資料を見に来たんだ。」
「それなら、あの棚の1番下です。」
すげー、もう把握してるよ。
「スズメ、ハイランダーの資料は?」
「それならこれです。私も見ておこうと思いましたから。」
「丁度いいです。ヒカミとエイル、ザイルも呼びましょう。」
「何事ですか?」
「作戦会議です。」
「ああ・・・ハイランダーギルドですね。わかりました、どこでやります?」
「そうですね・・・エイル達はカエデの屋敷に泊まるでしょうからそこで。
いいですかカエデ?」
「どうぞ。」
「ではヒカミに連絡しておきます。」
テンペストの資料を読む。あらためてとんでもねえ奴だったと思う。
ドラゴンの中でも上位の存在である以上、そのパワー頑丈さはカラードや
エンシェントの比ではない。身体だけならバハムートクラスだ。
だが、テンペストが本当に恐ろしいのはその頭脳だ。アリ姉やワイズの
マルチタスクを強力にした感じで、瞬く間にこちらの能力や攻撃を解析し
最適解を導き出す。まるでスパコンのようだった。
僕達が勝てたのは考えるのを止め、みなが勝手きままに攻撃しだして
テンペストが計算できなくなったからだ。四聖獣の怪我の殆どはフレンドリー
ファイヤーだった。僕も危うくフェニックスに焼かれそうになったしね。
という事はストームさんにこれから発現してくる能力はスパコンのような計算
能力と鋼の肉体か・・・やべえな、まじで。
「キリコ、念の為こっちの資料も読んでおいて。」
「わかりました。」
ハイランダーの因子とティーターンの寄生物か・・・。
寄生物はある意味後付けの拡張装置だが、因子となると遺伝子レベルで
混ざりあってるのだろう。ゆえにラフェリアが妖魔化は止められないと・・・。
自我を持ったまま進化者に辿り着いてくれればいいが、それが駄目なら
キリコ達に討伐されるだろう。まじ、方法ねえかな・・・。
んっ、まてよ。押しても駄目なら引いてみたらいいんじゃないか?
封魔のブレスの強力なやつを・・・いや、魔力を抑えるだけじゃ駄目だ。
おそらく見た目も妖魔化するんだろう。
バーサーカーを逆に作用させるのは?乱暴な方法だが弱体化する寄生物。
もしかして使えるかも。いよいよサンプルが欲しいな、博士達にその線も
研究してもらおう。なんにせよ、野外研修の時にその寄生物を確保できる
かだな、おかしな話だがバーサーカーに出て来てもらわないと困る状況に
なってしまった。
ふぅ・・・帰ろう、腹減った。
「帰ろう。」
「「わかりました。」」
屋敷に戻ると諭吉達もエイル達も帰っていた。
「夕食にしよう。」 みなで食堂へ。今夜は鍋のようだ。
ヒカミも来ていた。シゲさんは黒国の王になったので居ない。
ゼルダは雷電の所に泊り、色々教えてもうらうそうだ。
「アトム、僕はソドムアームスを探し出してここに封印する。」
「その方が安全だね。タイタンソードはどうする?」
「それは元々、アトムのものだ。」
「手伝うよ、マリスは引退するけどね。1つ、封印されてる場所がわかるの
あるけど。」
「何が封印されてるの?」
「方舟。」
「げっ、まじかあ・・・。いきなり大物だな。」
「方舟とは何ですか?」
「まあ簡単に言うとでっかい舟だね。」
「舟ですか・・・飛行船とか?」
「いや、本当にただでかい舟。ただしその中はオーバーテクノロジーの塊。」
「この世界は1度、大洪水に見舞われたんだ。その時にソドムの民は方舟を
造って命を補完したんだ。」
「えっ?」
「神の試練ともいうべきものだった。この世界の創生の出来事だね。」
「知ってはいますが・・・創世記、つまりは物語だとばかり・・・。」
「スズメ、話自体は物語として盛られてはいるけど、方舟は本当にある。
しかも超危険な舟なんだ。」
「ソドムの民は命を補完するだけでなく、命を造る事も出来た。その施設だ。」
「命を造る・・キメラとかオートマタですか?」
「もっと進化したもの、クローン技術だ。やりすぎて神の怒りをかったけど。」
「クローン・・・。」
「知ってるのですか?エイル。」
「はい、細胞1つから・・つまり髪の毛の1本でもあれば全く同じ生物、
キリコの髪の毛からキリコを作りだす技術です。」
「それは兄弟とかではなくて?」
「はい、全くのキリコです。」
「なんかぞっとするんですが・・・。」
「それだけじゃなく、大洪水をおさめるために天候も操れるようになった。」
「そこまで行くと・・・。」
「方舟自体が神クラス、もはや神器だね。」
「カエデ、何か色々と繋がってきてるような・・・。」
「やれやれだ・・・。けど、ハイランダーの因子のヒントになるかも。」
「アトム、ソドムの民とは何者なのですか?」
「いや、僕も起源は知らない。ソドムが滅んだ後に紛れ込んだからね。
その時には首脳陣は暗殺された後だったよ。」
「えっ?」
「大昔は、こう何て言うかドロドロしてたと言うか暗殺なんて日常の事だし。」
「その時に暗殺を指揮していたのがクロノスだ。」
「人間のくせに生意気だって感じだろうね。」
「人間にちょっかい出すタイプの神なんですね。」
「方舟が戦争に使われると厄介だ。早く回収しよう。アトム、場所は?」
「アラト山だよ。」
「げっ、まじかあ・・・・。」
「ザードが守護してるはず。」
「アトム、ザードとは?」
「白氷竜ザード。テンペストの妹だよ。」
「うん、方舟はあきらめよう。他のを探そう。」
「あきらめ、はやっ!」
「だってさ箱庭は兄の仇だよ。ザードだって能力は違えどテンペストクラス。
それ相応の準備をしてからじゃないと危ないんだからー!」
「何できれてるんですか?それなら修行がてら私達が回収してきますよ。」
「ちょっとカエデ!ザード相手に修行とか言ってますけどー!」
「じゃ、頼んじゃおうかな。」
「頼むのー!」
「いや、確かにここのところ皆バトッてないから。たまに本気で動かないと
いざって時に動けなくなるからね。僕みたいに。」
「そうなの?」
「鬼神アズールはぎりぎりっした。」
「言わんこっちゃない。カエデも俺達と橙国で修行だな。響様も心配してたぞ
特に顔。」
「かおー!」
「俺達は橙国に屋敷を作る事にした。あそはいい。」
「私も橙国に。ですが屋敷は必要ないです。ブッシュクラフトの製品を試すには
もってこいの森が沢山ありますので。登山もし放題。」
「まさにブッシュクラフト・・・。」
「私は無国ですね。ユイカ様から病院を作る様頼まれました。」
「了解、手配するよ。」
「あと、ユイカ様から伝言が。」
「何だい?」
「鈴音様に注意しろと。」
「えっ?」
「久しぶりに骨のある相手と戦ってるせいかバトルジャンキーに。」
「えっー!母さん達、大丈夫かな?」
「ツバキ様とマリア様もジャンキー化しており、たいした食事もせず
戦い続けているそうです。」
「何やってんのー!全く・・・後で行くよ。」
「私達も行きます。鈴音様にお会いしたいです。」
「キリコ、それは構わないけど、ジャンキー化しないでね。」
「・・・・。」
「ちょっとぉ、ヒカミ。」
「・・・・。」
「ええ・・・。」
「大丈夫ですよ、私が止めますから。」
「た、頼むよエイル。」
「そういえば美月の爺ちゃんに会ったぞ。」
「そうだヤタさん、橙国だった。美月は?」
「美月と九郎は橙国に置いてきた。つのる話もあるだろうしな。」
「そっか・・・。明日、僕は父さんやバート叔父さんを迎えにいくよ。
ラスプ、屋敷は?」
「完成しております。」
「ありがとう。」
「早くね!」




