RESTORATION
戻るとミナミが道具の手入れをしてくれていた。
「ありがとう、ミナミ。」
「いえ、リングさん達が綺麗にしてくれてるんですがなんとなく。」
「いや、大切な事だよ。早速だけど、に出す武具を作ろうと思うんだけど、
せっかくだから何か面白いモノを作りたくてさ。」
「ゴブ剣やゴブ刀ではなく?」
「うん、それはオーダーが入ってくるだろうし。」
「確かに・・・。」
「そうだなあ、まずは警棒を作ろう。」
「警棒?」
「携帯できるただの棒なんだけどね、これが意外と使えるんだ。」
日本に居た頃テロリスト達とやりあった事がある。その時、テロリストの中に
有名人の子息子女が多数いた為殺さずに制圧しなければならなかった。
警棒だけ渡されて何とかしてくれって言われた時は総理を警棒で殴る
ところだったよ。けど、その時に警棒の便利さを学ぶ事ができた。
「1つ作ってみるね。」
錬金術で作れる。ポイントは中に仕込むバネだね。ジャキーン感は必須。
よし、完成。
「手の平サイズの棒ですね。」
「うん、ベルトに付けたりポケットに入れられる。見てて。」
握りにつけたボタンを押す。ジャキーンと伸びた。
「おお・・・。」
「刃がついてないから殴るとか突くだけど、相手の剣や刀は防げるよ。」
「小さくて可愛いです。欲しくなりました。」
「何か好きな花とかある?」
「木通が好きです。美味しいですし。」
「し、渋いね。」 警棒に木通の柄を入れる。
「ほい。」
「わあ、ありがとうございます。」
僕も欲しくなったが、ヴァジュラでいけるからな。
もう1本作って10本程コピー。
「ぱっと見、何だかわかりませんね。」
「そこもポイントだね。他に欲しいモノある?」
「そうですねえ・・・やはりナイフでしょうか。野外研修で使えそうですし。」
「成程、それはいいね。よし、作ろう。」
バヨネットやカランビットは戦闘用だし、小型のペティナイフみたいなモノが
いいかな。ミナミに教えるのにも丁度いい。
ガーバーナイフにしよう、細見に作ればいんでないかい。
「ミナミにも作ってもらうから見てて。」
「はい。」
基本は刀を作るのといっしょだからね。刃が小さいので2人で叩くよりも
1人の方が効率はいい。神刀になったら面倒なので軽く叩く。
「ミナミはここの部分、力一杯叩いて。じゃないと脆いナイフになっちゃう。」
「わかりました。」
「僕は自分の好みで柄も鍔も黒くするけど、別に黒じゃなくてもいいから。
パーツはコピーしておく、後は刃を研磨して柄に取り付けたら完成。
ケースも用意しておくね。」
「ものすごいスピードで作りましたね。」
「慣れだよ、慣れ。さっ、やってみよう。」
「はい。」
ミナミが集中して作ってる間に僕はドライアドの間伐材でブーメランを作る。
錦が使っていたタイプではなく、3枚刃のタイプだ。当たっても「あいた!」
くらいなやつ。子供は好きだろう。
無地では味気ないので柄を彫ったりする。おお・・・いかすのでは。
「出来ました・・・。」
「どれどれ。」
初めてにしては良い出来だ。けど・・・。
「悪くないけど、厚さに少しむらがあるね。」
「やはり・・・平均的に叩くのが難しいです。」
「そこは経験を積むしかないだろうね。慣れてくると叩いた音でわかるから。」
「熟練の技ですね。」
「記念すべき1本目は自分のにするといいよ。」
「はい。」
ミナミは2本目に取り掛かった。結局、5本のナイフを完成させた。
僕は吹き矢や鉈を作ったりしていた。
「そろそろ終わりにしよう。」
「はい。明日もやっていいでしょうか?」
「もちろん。」
ミナミは在学中にナイフを極め、木通の刻印の入った色々なナイフはプレミアが
つく程の人気になる。もちろん剣や刀も作れるようになったよ。
こんな感じで週末を迎える。代表チームは休日も特訓したいと言っていたが
止めた。対抗戦直前は身体を休めたほうが良いパフォーマンスを発揮するはず。
何だかんだで来週から3日間のクラス対抗戦が始まる。
ゼルダのシカタとボルタの鬼丸を預かりガーネットへ戻る。同行者はキリコ、
ヒカミ。スズメの3名で、他のみんなはそれぞれ仕事。
「じゃあ、行こ~か。」
「「「はい。」」」
夜の森は真っ暗だが1ヶ所明るい所がある。
「イド君、前に来た場所はあそこかな?」
「はい、そうです。」
「神社が完成してれば広い所もあるだろうからそこに。」
「かしこまりました。」
到着したようだ。みんなで外に出る。
「おお・・・・。」
「大きいですね、天照様の屋敷くらいあります。」
「美しいですね・・・。」
「いい匂いが立ち込めています。」
「いらっしゃい、みんな。」
巫女姿のディアナが居た。髪の色はミドリだったはずだが今は黒髪だ。
「こんばんわ、ディアナ。いい神社ができたね。」
「ええ、思兼やニイちゃんのお陰ね。みんなは初めましてね。」
「初めましてディアナ様。キリコです。」
「ヒカミです。」
「スズメです。」
「・・・・カエデ、あなた変わったわね・・・。」
「なにがー!」
「まあ、いいわ。中に入りましょう。」
中に入ると従魔のみんなが居て、お茶とお菓子を食っていた。
中は神聖というよりもとても気持ちの良い空間だった。
「どう?気持ちいいでしょ?」
「ああ、すごいね。」
「この森の力ね。色んな条件が重なって神界なみの清浄空間になったわ。」
「確かに神界のあの感じといっしょです。」
「異空間ではないのですね?」
「違うわよ。ちゃんとガーネットの森の1部。ただ、この神社と私の存在で
ますますガーネットの森は神聖さが増すわね。」
「まじか・・・バート叔父さんに何も言ってない。」
「大丈夫よ、バロンに森を守るように言ったの私だし既に許可はもらって
るわよ。」
「えっ、そうなの?良かったよ。」
「3人は里帰りね。早速、箱庭を稼働させましょう。」
ディアナに案内されて神殿の奥にある部屋へ。
何もない空間に襖だけがあった。
「んっ?マキナが色々設置したって聞いたけど。」
「それは地下ね。森の力をとりすぎてもいけないし調整が大変だったみたい。
マキナが箱庭に屋敷を所望してたからよろしく。」
「それは構わないけど、これどうすんの?」
「箱庭を発動させるだけでいいわ。それをトリガーにして全ての機構が動き
出すから。1度、動き出せばもうここを経由する必要もないし転位門でも
設置して頂戴。」
「了解。なんかありがとうなディアナ。」
「礼には及ばないわ、拠点が手に入ったから。」
「拠点?まっいいか。よし、じゃあ発動する。『箱庭』!」
「・・・何か変わりましたか?」
「わかりません。」
「ああ、襖の向こうですね。」
「そうよ。じゃあ、行ってらっしゃい。」
襖を開けると僕の屋敷の広い居間だった。
「お帰りなさいませイカルガ様・・・今はカエデ様でしたね。」
「久しぶりだねラスプ。」
「はい、入学式以来でしょうか。わっぱ達、親達が首を長くして待ってます
案内をつけるので実家に1度戻りなさい。」
ラスプの部下達が来て3人を案内していった。ジープやコクーンがある訳では
ないので馬車かなんかだろう。馬車はめっちゃ速いけどね。
それぞれの屋敷には実は結構距離がある。四聖獣の屋敷なわけだから東西南北に
分かれ、まあ領みたいなもんだね。一つ一つが国のサイズだけど・・・。
ラスプがコーヒーを淹れてくれた。スザさんの所で栽培してるやつだ。
超旨いのよ、これが。
「鈴音と白華は?あと、マーリンにお礼を言いたいから呼んでくれる。」
「奴らは入浴中です。マーリンはまだ寝てます。」
「・・・・起きたら呼んで。」
「承知しました。」
屋敷のテラスというか、街を一望できる庭へ出る。
「感覚的には数年だけど、随分と懐かしい・・・。」
「晩年は寝込みがちでしたし神楽に居る事が多かったからでは?」
「そうだったね。やあ、鈴音、白華。」
小梅達は街を見下ろし呆然としている。広いからね。ぶっちゃけ帝国よりも
神居よりも広い。
「もう街はいつも通りなんだね。」
「そうよ。子供達が帰還したから数日はお祭りかしら。」
「ご愁傷様、僕はのんびりするよ。」
「駄目よ、色々とやらないといけない事があるわ。休んでる暇なんてないわ。」
「えっー!」
「えっー、じゃないわよ。自覚なき王。」
「いやだって、ラスプがやってくれてるでしょ?」
「内政はそうだけど、まず神刀達やIA達の箱庭への移住。」
「何で?」
「アイテムバックの負担を減らす為よ、魔力の軽減ね。」
「擬人化できるの?」
「神刀とIAはできるわよ。出しなさい。」
「わかったよ。自分でも把握できてなかったけど・・・。」
考えてみれば丁度いいかもな。学園に居る間は使う事もないだろうし、メイン
ウエポンはモップだからね。ダンジョンはエリシエーターとゴブ刀で十分だ。
白華は我関せず小梅達と何か話している。
鈴音がスマホみたいなモノを出した。
「何それ?」
「マキナが作ってくれた端末よ。住民登録をするの。」
「・・・・。」
何となく使い始めた順番・・・自信ないけど出していく。
まずIA達、夕霧、デル君、ラムさん、シノさん。ボボボンと人化していく。
どうなってんだ?と突っ込むのはやめる箱庭だし・・・。
みんな子供の姿だ。鈴音に跪いている。IAランク的には鈴音はベテランだ。
「みな、今までカエデを助けてくれてありがとう。これからも基本は変わらない
けど、ここでは人として暮らせるわ。と言ってもまだ子供だから独立は先ね
当面は私と白華の屋敷に分かれて暮らしてもらう事になるわね。」
みな、頷いている。
「主、初めまして夕霧よ。鈴音パイセンにびびってるわ。」
「主人、ラムです。私も何が何だかわかりませんが今は黙ってる方が身のため
かと・・・。」
「マスター、白華パイセンやばいっす。こっち見てます。」
「マイロード、ぶっちゃけ銃チーム少なくないですか?」
全員女の子。ラムさんとシノさんはなんとなく男人格かと思ってた。
「いや~、みんな申し訳ないけど慣れてとしか・・・。鈴音と白華が面倒見て
くれるからさ。」
鈴音が手を叩くとメイドさんがやってきてみんなを連れていった。
屋敷に案内するのだろう。もちろんメイドさんも刀だ。
「次からが問題ね。神刀は我が強いから。」
そうだよね、アイテムボックスの中に居る時は眠ってるって言ってたもんな。
「みんなー、出てきて―。」
どんどん出て来たー!こんなに居るのー!鈴音が頭を抱えている。
えーと、ミズちゃん、フレちゃん、ドラちゃん、無名、東雨、フッちゃん、
ケンちゃんに香輝。東雨は仙刀だけど僕が手入れしたから神刀扱いか・・・。
人化したみんなはなんとなくそれぞれの神の面影を残している。
「みなさんにはそれぞれ屋敷が与えられます。何をしてもどこに行くのも自由
ですが犯罪、まあ住民を斬ったりですがその場合私が叩き折るので注意して
下さい。見たところ現時点では住民の方が強いので逆に注意ですね。それと
ここに暮らす者は全員そうなのですが、いついかなる時もカエデに呼ばれれば
転位します。」
そうだった・・・。それも箱庭に機能の一つだった。
「あの、みんな、正直学園に居る間は神クラスとやり合う事はないと思うから
自由に暮らして頂戴。鈴音、お願い。」
再び手を叩くと人数分のメイドさん達がきて神刀達を連れていった。
無名が思いっきりきょどっている。
「あの、主・・・。」
「ああ、大丈夫だよ無名。ここは僕のでっかいアイテムボックスみたいなもの
だし、住民のみんなはいい奴ばかりさ。」
「いえ、そうではなくて・・・みなさん私より格上の刀ばかりで私がこのような
待遇を頂いていいものかと・・・。」
「無名、刀に格などありません。強いか弱いかです。あなたはカエデ自ら打った
刀で時空をぶった斬るというぶっこわれ能力です。堂々としていなさい。」
「鈴音パイセン・・・わかりました。」
渋々、無名はメイドさんに付いていった。
「鈴音。香輝は今、神楽在住だから。」
「問題ありません。屋敷があるというだけでどこで暮らそうと自由です。私も
落ち着いたら神楽の屋敷を稼働させます。」
「ああ、婆ちゃんが喜ぶよ。泣いて・・・。」
「・・・それは嫌ですねえ・・・。」




