HIGHLANDER
「ザイル、データには載ってない猛者っているんだねえ。」
「生徒会の役員の方やベル様達のギルドの方は基本、鬼強いですよ。」
「ちょっと無関心過ぎたかな?」
「そうかもしれませんがこの先、嫌でも絡む事もあるでしょうから。」
「はは・・そうだねえ。先は長いか・・・。」
「ええ。」
「よし、最後のお客さんだ。」 最後は結界杙の人だな。
「お待たせしました。」
「構わん。」 3年Bクラスの男子生徒だ。
ちなみに制服ではなく黒マントで、でかごつい。
「結界杙、4本でしたね。」
「そうだ。」
「こちらになります。使い方は?」
「冒険者が使ってるのを見て便利だと思ってお願いしたが使い方までは
知らん。」
「では説明しますのでこちらへ。えっと、ストーム先輩。」
「ストームでいい。先輩はいらん。」
「いや、そんなわけには・・・。では、ストームさんと。」
「それでいい。」
なんだろうなあ・・・子供と話してる気がせん。歴戦の猛者と相対してる
ようだ。訓練場ではなく森の部屋へ。
「なんだここ?まっ、いいか。」
細かい事は気にしない性格らしい。
「この4本の杙を四角形になるように地面にさします。範囲ですがテントと
その周辺を想定してますので5メートル角くらいです。」
「十分だ。」
「設置後、1本に魔力を流せば連動して結界を張ります。1度発動すれば
朝までは大丈夫です。」
「本当か?強度は?」
「そうですねえ、ドラゴンにでも踏まれない限りは大丈夫です。」
「すごいな・・・だが、助かる。ダンジョンに泊れるな。」
「はい。ダンジョンに泊るという事は塔のダンジョンですか?」
「あそこが性に合ってる。」
「広いですもんね。」
「ゴブリンばかり相手にしてても金にならん。」
「っすね。ギルドで?」
「いや1人だ。性に合ってる。」
「ソロで塔のダンジョンですか・・・。得物を聞いても?」
「構わん。まあ、それがソロの原因でもあるしな・・・これだ。」
「クレイモア・・・。ストームさんはハイランダーですか?」
「さすがに詳しいな、ガーネット。」
「僕の事を?」
「ああ、何かあれば弟に頼れとクロス先輩にな。」
「クロ兄に・・・。」
「クロス先輩はソロの俺を色々と気遣ってくれてな。お陰で今も学園に居る事
が出来ている。」
「そうだったんですか。わかりました、ストームさんはクロ兄に代わり僕が
バックアップします。」
「えっ!いや、そこまでは・・・。」
「いえいえクロ兄の頼みとあらば何よりも最優先事項です。まずはクレイモアを
強化します。ボロボロですので。」
「えっ?」
「リング、ストームさんの部屋と食事の用意を。」
「承知しました。」
「えっ?ま、待て・・・。」
「問答無用、カモナ。」
「かしこまりました。」
「うお!どこから・・・は、離せー!何をする!」
ストームさんはカモナーズに強制連行された。たぶん、お風呂だろう。
その間にクレイモアの強化と鎧の用意しよう。ストームさんの事は任せてよ
クロ兄。さて、クレイモアの修理だ。クレイモアの刀身は1メートル以上ある。
刀身よりその鍔に特徴があり、刃に向かって傾斜し左右に大きく張り出す。
場合によってはその鍔も持ち手とするのだ。当然、そんな大剣を自在に操るには
パワーが必要だ。爺ちゃんも有名な大剣使いだが、それは血の滲むような努力を
して習得したものだ。しかし、ハイランダーは違う。ハイランダーはクレイモアを
操るために生み出された半人半妖の存在だ。ボルタのような妖怪とのハーフとは
少し違う。強制的に生み出されるため、人よりも妖の方に近く本人の強い意志で
妖の部分を抑えなければ妖そのもの、つまり妖魔となりハイランダーに追われる身
となってしまう。おそらくクロ兄がストームさんを気にかけていたのは、ストーム
さんが男だからだと思う。ハイランダーは本来、女性のみのはず。
それに今もハイランダーを造りだしているというのも驚きだ。色々事情はあるのだ
ろうけど、今は学園生だし詮索は止めておこう。
柄と鍔を外し刀身を鍛え直す。すっげえ、ぼろぼろ。1度も手入れをしてない。
う~ん、よしアダマンタイトでコーティングしよう。多少、重くなるが
ハイランダーのパワーなら問題ないどころが威力が増すだろう。
それに合わせ柄と鍔も黒に変える。おお・・・ごつカッコイイ。
んっ?クレイモアが震えた・・やばっ!
まっ、いいか・・ストームさんのバックアップをする
と決めたし、よくわからんが
宿命的なものを跳ね返す力も必要だろう。
銘を刻む、「暴風 楓」。
「ありがとうございます、カエデ様。」
「気にしないで、ストームさんのバックアップをすると決めたから。」
「ストームはまだまだ未熟、力任せに私を振るってきました。」
「それはしょうがないよ、ハイランダーとは言えまだ子供だし。」
「カエデ様のお陰で話せるようになりましたので、厳しく指導いたします。」
「僕も陰ながらバックアップするから、よろしくね暴風。」
「お任せ下さい。」
「普段使い用の鉄製のクレイモアも用意しときたいからコピーさせて。」
「わかりました。」
後は鎧のブレスレッド、結界も張ってくれるしソロでも死ぬ事はないだろう。
「カエデ様、食事の用意が出来ました。」
「ありがとう、今行く。」
食堂に行くとストームさんがフォグの服を着て見違えていた。ハイランダーの特徴
でもある銀髪に銀目だ。
「結果、さっぱりした。」
「それは良かった。食事にしましょう、他の皆も来ますから。」
「・・・そうか、クラブハウスだったな。」
特訓を終わらせた皆が来た。ストームさんを見てゼルダがびびる。
「し、死神・・・。」
「ゼルダ、ストームさんを知ってるの?」
「知ってるというか有名人だよ。」
「悪い方だがな。」
「そうなんですね。まあ、それはどうでもいいです。皆、僕はクロ兄の意思を
継いでストームさんの完全バックアップをする事にしたからよろしくね。」
「悪い噂はどうでもいい・・・。」
「バックアップ・・・。」
「完全もついてますね。」
「わかりました。」
「あー、腹減った。」
「いい匂いだ。」
ストームさんがきょとんとしている。
「どうしました?」
「い、いや、自分で言うのも何だが、俺についての反応が終了したから・・。」
「ああ、ストーム先輩。いつもの事ですから皆、慣れっこなんですよ。」
「ここに居る連中はなんだかんだと結局、カエデのバックアップを受けてます。」
「仲間が今日も1人増えただけって感じでしょうか。」
そんな事言ってるヒカミの隣には迦楼羅さんが居た。
「あっ、迦楼羅さん。両刃剣どうだった?」
「完璧でした。しかも仕えるべき姫に出会えました。」
「まあ確かにヒカミは王族ではあるけれど、同級生にプリンスが居るでしょ?」
「はい、Aクラスに。しかしあれは使えるべき王ではありません。」
「王女とか言わないよね?」
「いえ、残念ながら・・・。」
「・・・・。」
「カエデ、カルラがファントム及びオマタクラブに所属したいと。」
「いいよ。って言うか、僕、部長じゃないし。」
「えっ!」
「ファントムのギルマスはキリコだし、オマタクラブ部長はシゲさんだよ。」
「そうでした・・・キリコ、シーゲル。いいですか?」
「もちろんいいですよ。ミナミも増えましたしパーティを固定してもいいかも
しれませんね。後で話し合いましょうヒカミ。」
「わかりました。」
「俺もオーケーだぞ。」
「ストームさんもですか?」
「い、いや、俺は・・・。」
「ストームさん、ソロで構いませんが名目上所属してくれませんか?その方が
バックアップしやすいですし、手伝って頂きたい事もあります。」
「・・・いいのか?俺はハイランダーだぞ。聞いての通り死神と呼ばれ厄介者
扱いだ。」
「構いませんよ。ここには死神の娘や姪も居ますから。」
「えっ?」
「ああ、私とキリコがそうですね。そう言えば。」
「えっー!」 ゼルダが驚いている。
「か、神なのか・・・。」
「お気になさらず。関係者ではありますが普通に学園の生徒をやってますし。
それにしてもハイランダーですか・・・。」
「カエデ、ハイランダーって何だ?」
「神居で言うところの妖怪ハンターだな。北の国々に居る妖魔を狩る専門の
人達だ。」
「成程。」
「ハイランダーは女性のはずなんですが、男性のハイランダーなんて超レアじゃ
ないですか?」
「俺は女だ。」
「「「「えっー!!」」」
「何でカエデまで驚いてるんですか?」
「い、いや僕も男だとばっかり・・・。」
会った時はむさくるしいマントを羽織っていたし、制服も着てなかった。しかし、
今は風呂上りでカモナが用意したフォグの服を着ている。まじまじと見ると・・
確かに出る所は出て、引っ込む所は引っ込んでいるじゃないか!角刈りだけど。
「・・・じろじろ見るな。」
「すいません。何で自分の事を俺と?」
「自分が女だと知ったのは学園に来てからだ。」
「カエデ、おそらくですがストームさんのご両親は男の子として育ててらっしゃた
んじゃないでしょうか?ハイランダーギルドから隠すために。」
「そういう事か・・・まっ、いいけど。」
「えっ!」
「いいのか?」
「構いませんよ。ハイランダーギルドがなんぼのもんじゃい!です。」
「まあ、そうだな。ちょっかい出して来たら潰せばいいか。」
「潰すって・・・お前らハイランダーギルドの恐ろしさを知らんから・・。」
「ははは、無問題。」
「そんな事より夕食にしましょう。美味しいですよ。」
「そんな事って・・・。」
「ストーム先輩、あきらめて下さい。ハイランダーギルドがこちらにちょっかいを
出してきたとして、向こうが潰されるのは事実でしかありませんから。」
「お前ら・・・何者なんだ?」
「学園の1年生っす。さっ、食べましょう。」
おお・・今日は塩レモンのステーキ。さっぱりしてて旨いんだよな。
「おいしー。」 ブラウ、いっぱいお食べ。
「レモンがたまりませんねー。」 スズメ、動いてないだろ?
などと、いつも通りわいわいと夕食。食後のコーヒーを飲んで解散。
「ストームさん、クレイモアが出来てます。訓練場へ行きましょう。」
「えっ、もう・・・。」
「「お付き合いします。」」
北方面にも関係する事だからなのかエイルとザイルが付き合ってくれるようだ。
あとキリコも。キリコはクレイモアに興味があるとの事。
「これです、銘は『暴風』です。」
「銘?どういう事だ?色も変わってる。」
「初めましてではないですが、カエデ様の手によって生まれ変わりました。
今までよくも雑に使ってくれましたね。」
「だ、誰だ!」
「ストームが手にしているクレイモアです。」
「なっ・・そんな事・・・。」
「ストームさん、僕が割と本気で打ち直しましたので神剣『暴風』となりました。
末永く付き合って下さい。」
「ストーム、そういう事です。これからどのハイランダーにも負けないように
鍛えてさしあげますので、覚悟しろ!」
「えっ?」
暴風・・・雑に扱われてたのがよっぽど頭にきてたのね。
「私が相手をしますので打ち合ってみましょう。」
ザイルがアルナイルを大鎌にした。よろしくザイル。
「カエデはハイランダーに詳しいようですが、お知り合いでも?」
「うん、仲間に1人居るよ。たぶんハイランダーギルドじゃ死んだ事になってる
と思うけど。」
「それで・・・。」
「エイルはハイランダーの事、どこまで知ってる?」
「あくまで記憶の中だけですが、人間が妖魔に対抗するために禁忌に手を出した。
歳をとるにつれ妖魔化が進み、最終的には進化者と呼ばれる強大な妖魔に。
妖魔を倒すために造られた者が必ず妖魔として討伐される・・・・
そんなとこでしょうか。」
「そうだね、妖魔化は止められない。」
「やはりストームさんも、いずれ妖魔に・・・。」
「うん。」
「悲しいですね。」




