NOCTURNAL ASSAULT
「カエデ様、夜分遅くに申し訳ありません。」
「大丈夫だよ。どうしたの?」
「アレクサンドル家が冒険者を雇い、有力な学生に怪我をさせてます。幸い命を
落とす程の怪我ではありませんが。」
「ほう・・・念を入れ出したって事か・・・。干渉は迷惑だ。雇われてる冒険者の
居場所を用意して、すぐに行く。」
「承知しました。」
今夜中に処理したい。
「カモナ、諭吉にこれから動けるか聞いてくれる?」
「かしこまりました。」
ワイズ邸に転位。諭吉が既に居た。はやっ!
「ワイズさんから内容は聞いている。行くぞ!」 はやっ!
諭吉の小型ジープで移動。黒いから丁度いい。
移動中にワイズからデータを見せてもらう。カーナビみたいだ。
「Aランク冒険者が率いるギルドか・・・。ダンジョンの稼ぎじゃ不足か?」
「冒険者といっても、ほとんどアレクサンドル家の私兵みたいなもんです。」
「そっちの方がリスクが少ないんだろうよ。」
「まあそうかもだけど、冒険者なんだから冒険して欲しいよね。あっ、魔剣持ち
がいるじゃん。」
「それもアレクサンドル家が用意したものです。」
「ずぶずぶの関係ってやつだ。でっ今向かってるのがねぐらにしてる
アレクサンドル家の別邸と。」
「そういう事だな。どうする?正面から乗り込むか?」
「そうだな。アレクサンドル家には敵対勢力が居る事をわからせたい。」
「了解。」
ここだな。でかい屋敷だな、おい!
Aランクは5人程。ようはここは奴らのギルドハウスでスポンサーが
アレクサンドル家って事だな。
「んじゃ始めよう。デル君、レールガン。」
「イエス、マスター。」 ドウン!ドッカーン!
門を吹き飛ばし、正面から歩いて入る。もちろん狐面は付けてるよ。
ゆ、諭吉の狐面が黒い!
「なにそれ、かっこいい!」
「松月家が春さんに発注したんだ。夜用のだ。来るぞ!」
おお・・わらわらと出て来た。結構な規模のギルドだったんだな。
諭吉が消え、出て来た連中が片っ端から気絶していく。さすがファントムが誇る
アタッカー。僕は魔剣狙いだ。
「行こうか、夕霧。」
「はい、主。」
夜だし夕霧が青白く光ってるのがより鮮明だ。クロックアップ、戦闘は最小限に
してどんどん中を進んで行く。そろそろ出てくるかな。
「何事だ!んっ、おい餓鬼!ここがどこか知ってるのか!」
「アラキャンドル家の別宅。」
「アレクサンドル家だ!まあいい、どっちみち消えてもらうからな。
ラグフォード!」
おお・・こいつが魔剣使いか。って、ラグフォードは魔剣だったっけ?
腕に装着するただの大剣じゃあ・・・まっ、どうでもいいか。
Aランクごとき瞬殺だ。あと、取り巻きが4名ほど・・・。お久しぶりのマテバ。
ドン!ドン!ドン!ドン!速攻、利き腕をぶっ飛ばす。はい、引退。
「な、何ー!き、貴様、何者だー!」
「お前が知る必要はない。アレクサンドル家に伝えておけ、ふざけた真似を続ける
なら、次はお前達だとな。」
「ふざけるな!」
ラグフォードを振り回し襲いかかってきた。さすがギルマス、
力があるなあ・・・。
確かラグフォードは剣先を飛ばす事ができたはず。
「クソッ!速すぎる!何なんだお前は!」
戦意喪失したようで大剣をだらんと下げた。けど・・・。
「くらえ!」
やっぱりねー、情報って大事。ヒュン!大剣が装着されてた腕を斬る。
「ぐわー!う、腕があー!」
「アレクサンドル家に治してもらえ。ゴンザレス、終わった?」
「ああ、終わったぞ。フェルナンド君。」
「ぜ、全滅!俺達はギルドランク、Aだぞ・・・。」
当分こいつらは動けないだろう。その間にクラス対抗戦は終わってる。
「帰るか、ゴンザレス。」
「了解、フェルナンド君。」
諭吉にガーネットの屋敷まで送ってもらう。
「上級生の調べはついた?」
「ああ。」
「どう?」
「さすがに4年、5年は強いのが多い。」
「そりゃそうか。」
「2年、3年はなんとかなると思うけどな。」
「序盤で上級生のチームに当たらないといいな。」
「特に気になるのが数人いる。シゲに伝えてあるから聞いてくれ。」
「了解。」
屋敷に戻り風呂に入って寝た。ラグフォードは回収しなかった、
魔剣じゃないからね。
お早う、朝はツバキ流の稽古だ。ボルタもちゃんと来てる。
「母さん、アレクサンドル家って知ってる?」
「もちろんよ。古狸って感じかしら、ロイドは苦手みたいだけどジルはうまく
やってると思うわ。古狸がどうかした?締めるけど?」
「いや、締めなくてもいいよ。息子がAクラスに居てね。」
「ああ、文武両道の自慢の息子ね。よく、ロイドが自慢されてるわ。」
「ありゃ、父さんに申し訳ないか。」
「大丈夫よ。全然気にしてないから。」
「もうじき、クラス対抗戦があるんだよ。」
「ええ、招待されてるわ。さすがに決勝戦しか行かないけど。」
「見にくるんだ。」
「ロイドと行くわよ。」
「そうか・・・僕のクラスは優勝を目指してるんだ。」
「へぇ・・・面白くなりそうね。決勝で見れるかしら?」
「やってみないとわからないけど、そのつもり。」
「楽しみが増えたわね。」
みんなで朝食を食べ登校。ベル姉達も対抗戦の準備で登校だったので大型ジープで
行き、僕らは見つからないようにこそっと入る。
午前中は武道の時間だ。先週の予告通り斑どおしで戦う。
頑張ろうぜ、槍チーム。対抗戦の種目にはないのだがな。槍の猛者は総合に組み
込まれているそうだ。相手はヒカミが率いる剣チームだ。
「順番はレビ、レード、ナミ、僕の純で。剣チームの方が人数多いから2回
戦う事になる。」
「望む所よ。」 ナミが燃えている。
「あっ、棒がない。」
「あるじゃない、あそこ。」
「いや、あれ棒じゃなくてモップだから。」
「大丈夫よ、モップマスターのカエデなら。」
「しょうがない。」
向こうのトップバッターは誰だ?あっ、アトムか・・・・。
「レビ、たたんでおしまい!」
「イエッサー!」
ある意味、2刀対2刀の戦いだ。始まった、おっさすがはカーボナイト。
レビの攻撃を余裕で躱しているように見える。ふふふ・・・アトムよレビは
スロースターターだ、スピードが上がるぞ。
レビのスピードがどんどん上がっていく。そろそろかな・・レビが双槍を短槍に
変形。ここでリーチが変わると戸惑うんだよな。
代表組にはとてもいい練習になる。一口に剣と言っても色んな種類があるからな。
互いに決めてに欠け引き分け。2人共、特殊な武具だし見るだけでもいい勉強に
なる。
「次がレードだな、ビヨンビヨンの威力を見せつけてやれ。」
「よーし!」
相手はゼルダだ。ゼルダの剣技はシゲさんに近い、騎士の剣だね。
ここのところヒカミや優、エイルなんかと特訓してたからかなり強くなってる
だろう。しかーしビヨンビヨンのレードは棒術と見せかけて体術主体だ。
剣ばかり相手をしていたから戦いずらいだろう。棒術の間合いは遠いからね。
踏み込んで近くに行くと徒手空拳が待ってるぞ。どうする?ゼルダ。
突っ込んだー!おお・・見事な剣捌きだ。
レードが蹴りを繰り出す。おっ、ゼルダも蹴りで対抗したー!
素晴らしい攻防だ。一旦、間合いをとるようだ。んっ?ゼルダが剣を逆手に・・。
あれは、もしや・・・。
ドン!雷光ー!もどきー!それでもレードが吹っ飛ばされた。
威力は激弱だが確かに雷光だ。ゼルダの勝利だ。
「レード、大丈夫か?」
「ブロックしたから大丈夫だよ。何あれ?1瞬見失った。やばいと思って後ろに
飛んだから助かったけど。」
レードもすごいな。あの1瞬で判断したのか・・・。
次はナミだ。相手はビッケだな。
「ナミ、もんでさしあげて。」
「よっしゃ!レードの仇!」
「あっ、いや・・・ビッケは何もしてないから・・・。」
ナミは女の子だけどパワーが凄い、剛の剣ならぬ剛の槍だ。それに加え長槍特有の
遠心力を活かした左右からの攻撃。避けるとゴウッて音がするからね。
「この馬鹿力女め!」
「力があるのは認めるけど、馬鹿じゃないわよ!」
ビッケも如何にナミの懐に入るかだな、恐怖心との戦いだ。おお・・良い勝負。
ナミが強いのは知ってたけど、ビッケもなかなかどうして。
口喧嘩をしながら戦ってるけど・・・。ここも引き分け。
次は僕だ。イーブンに戻しておきたいところだ。げっ!ヒカミが出て来たよ。
モップじゃ無理じゃね?
「カエデ、モップマスターと戦うのは初めてです。」
「あ、い、いや、他になくて・・・。」
月華流か・・・まともにやり合うと不利だな。ならば、モップのびろびろを硬化
させ飛ばす。
「むっ、飛び道具ですか・・・。」 氷壁で防がれた。
よし、作戦通り。クロックアップして氷の壁を飛び越える。
ヒカミは既に構えている。予測していたか、だが予測してる事は予測していた。
何言ってるんだ?
「甘いですよ!」 ザンッ!斬ったー!木剣だよね?ね?
「残念、それは残像だよ。」
「承知してます。」 ヒカミは声のする方を振り抜いた。スカッ!
むふふ・・・時ポで声だけ飛ばしたのさ。名付けてこだま作戦。
「カエデは何の勝負をしてるんでしょう?魔導ですか?」
「そうだね。さっきから1度もモップを振ってないよ。」
「しょうがないだろ!折ったら掃除のおじさんに怒られるだろ!」
「見つけました。」
「あっ、しまったー!」 い、いかん、つい突っ込んでしまった。
かくなる上は、モップよすまん。出来るだけ力を流すから。
「とうっ!」
「あっ、自分から言ったあー!」
月華流の剣が合わさった時の力を逆に利用しよう。わかっていれば対処にしようも
あるってもんだ。
「倫風!」
「キャッ!」 キリコの木剣が飛んでった。
ふぅ・・・うまくいった。久しぶりに蒼穹の技をつかったよ。
「カエデ、何ですか今の?木剣が勝手に飛んでいきました。」
「倫風っていう技でね、月華流の力のベクトルを変えたんだよ。力が大きければ
大きい程、その分引っ張られる力も比例するんだ。」
「何か月華流の天敵っぽい技ですね。」
「そうかもだけど、ただ武具を飛ばすだけだから。」
何とかイーブンに戻したが、その後出て来た優とエイルが強かった。残念ながら
槍チームは敗北した。しかし、いい勉強になっただろう。
皆に倫風を教える事になったのは言うまでもない。
さて、午後からはクラブ活動だ。昼食は何とラーメン、久しぶりに食べた。
ひと休みして上級生のチームの分析と作戦を立てる。
「5年生から見て行こう。」
シゲさんとスズメ、今日はエイルも参加。
さすが最上級生、AやBだけじゃなくEまでもれなく強い。
「流石ですね。」
「何か大人と子供って感じです。このAの体術代表は人間ですか?クマにしか
見えません。獣人かなにかですか?」
「まあ、下剋上なんてそんなもんさ。」
「普通に5年Aクラスが優勝候補って感じですね。」
映像は武道の授業風景とダンジョンで撮影されたものだ。ベル姉達が運営の方に
回ってるのでギルドランクナンバー2の人達で構成されているようだ。
「剣の代表は既に近衛に内定している。冒険者にはならないようだな。」
「うん、正統派の騎士の剣だね。バランスもいいし、強いねえ。」
「剣だけならアリス様にも引けを取らないようです。」
「弱点なんてあるのか?この人。」
「そうだなあ・・・強いて言えばまとまり過ぎ?」
「何ですか、それは?」
「攻撃にしても防御にしてもパターン化してる。だから、そのリズムを崩せば
もしかすると・・・。」
「変則的な攻撃に弱いという事ですか?」
「うん、アトムは超変則的だから意外といけるかも。」
「次は刀代表、女の人だな。」
「うっわ・・・国広を使ってる。」
「示現流を使うようだな。キリコに近い剛の剣か・・・。」
「そうだね、2刀要らずって言われてるよ、示現流は。それにしても大きな
女の人だね。」
「あの気合の掛け声はちょっとびびります。」
「示現流の特徴だね。ボルタ、びびりそう・・・。」
「確かに・・・性質上、耳が良いでしょうし。」
「一の太刀を躱せば何とかなるのか?」
「いや、もちろん二の太刀も三の太刀もあるけど信条として初太刀で決めろって
いう流派だよ。」
「上段の構えから覚悟して飛び込んでくるのは怖いな・・・。」
「ボルタには慣れてもらうしかないけど、耳栓も用意しておこう。」




