LIGHTNING
「本当の刀の素材は玉鋼とかヒヒイロカネがいいんだけど、これから打つのはゴブ
アンを使った安価な初心者用の刀だよ。」
「あの、ゴブアンとは?」
「ゴブリンのドロップのクズ鉄。」
「クズ・・・悪徳商人ですか?」
「いや、さすがにそのままは使わないよ。製錬っていう魔法で不純物を取り除くん
だ。今回のはシゲさんがもうやってくれていて、ほぼ100パーセントの鉄。
まずこのインゴットを錬金術でだいたいの刀の形にする。依頼があるからその
通りのサイズだね。そして熱する。ミナミ、そこのハンマーで僕が指す所を
思いっきり叩いて。」
「わかりました。」 その作業を何回か繰り返す。
「よし、こんな感じかな。後は刃を研磨して刀本体はこれで完成。」
「これがゴブアンの刀・・・。」
「まあ名目上ではあるね。学生用だけどダンジョンで使うんならちゃんとした刀
じゃないと危ないし。原料はドロップ品だから銀貨1枚だよ。」
「安い!」
「もしかすると鞘の方が高額かも。トレントだし。」
「トレント!なんか常識的なものがおかしくなりそうです。」
「学生諸君にはがんばってもらわないと。次いこ。」
なんだかんだで3本の刀が完成。
「教室に行く前に風呂に入ろう。汗かいたし。アトム、行こうぜ。」
クラブハウスにはちゃんと男湯と女湯に分かれてお風呂がある。
ロッドと杖は昼休みにでも作ろう。シゲさんが魔石の合成をしておいてくれた
のですぐに出来る。ささっと入り少しだけ休憩。
「ミナミ、これギャラ。」
「えっ!」
「バイトって言ったじゃん。」
「そういえば・・・。」
「労働って等価交換なんだぞ。」
「金貨3枚がですか?」
「そうだよ。」
「ゴブ刀は銀貨1枚って。」
「自分で言うのも何だけど、僕の打つ刀は虹貨数枚じゃ買えないんだよ。」
「「えっ!」」
「もちろん身内からお金は取らないけどね。」
「いや、確かにカエデの技術や知識は半端ない。刀や剣だけじゃなく銃も・・。」
「金貨3枚が等価だよ。それにミナミ、ファントムでダンジョンに行ったら
きっと驚くから。」
「ああ、確かに・・・。僕なんか親父にどんな悪さしたんだって本気で心配されて
るんだから・・・。」
「それは確かにミナミが稼いだお金だ。」
「わかりました、受け取ります。」
これでダンジョンに行くまで少し気持ちにゆとりができるだろう。
午前中はIA学だ。トーゴ先生は話もうまいしとても分かり易い。理論も大事。
「キリコ、ミナミにお金を渡せたよ。」
「良かった・・・。」
「後はダンジョンで稼いでもらおう。」
「わかりました。」
集中して聞いているから午前中はあっという間だった。
僕のIAは進化させれるかも。
さあ、クラブ活動だ。クラブハウスへ行く途中で先輩達に囲まれた。あらら。
「お前はギルドファントムのメンバーだな?」
「そうですが、先輩達は?」
「我々はコレクターだ。昨日うちの3年が行ったはずだが。」
「ええ、確かに来ました。」
「ファントムがロッドや杖を銀貨1枚で販売してるというのは本当か?」
「ええ、本当です。」
「そうか、ではやめてもらおう。」
「何故です?別になにも違反はしてませんし、性能も問題ありませんよ。
基本、低学年用に作ってますのでコレクターには何の影響もないはずです。」
「それが困るのだ。我々のギルドも低学年用の物を販売している。」
「販売?売りつけてるの間違いでしょう?」
「なに!」
「コレクターがちゃんとしたロッドや杖や魔導具を売っていればなんの問題も
ありませんよ。今年の1年はダンジョンの階層制限もありませんから
どんどんアタックしています。もう良いですか?昼食を食べる時間がなく
なりますので。」
「生意気な!黄金の世代と呼ばれ少々自惚れが過ぎるようだな。少し教育が
必要なようだ。」
「教育ならちゃんと授業を受けてます。それに先輩、立ってるの先輩だけ。」
「なに?」 めんどーなんで囲まれた瞬間に僕と諭吉でのしたよね。
「先輩達、いくら何でも弱すぎ。それにな、何年生だろうと関係ない。
ダンジョンアタックは命懸けだ、あんたらの作ってる物に危なくて命を
預けられるか。2度とファントムにちょっかいだすな。次は気絶じゃ
すまないからな。フラッシュ。」
名も知らぬ先輩はホワイトアウトした。
「急ごう、昼食が食べられなくなるぞ。」
「やだー!」 2人をつかんで転位。
「リング、アトリエにホットサンドお願い。」
「承知しました。」
ロッドが2本に杖が1本。依頼主は2年生の女の子達だ。
ロッドはウサギと猫、杖はリスが希望か・・・。う~む。魔石を咥えさせれない。
目を魔石にするか、レッドアイシリーズだ。僕がトレントの加工をしてる間に
シゲさんが目を作ってくれている。よし、出来た。デフォルメされた動物が
とてもプリチー。バックオーダーもゼロ、後は女性陣が渡してくれるだろう。
午後からはモンスター学と錬金術。モンスター学は動物系の講義だった。
モンスター化した動物によって普通の動物が絶滅しない理由とか、これまた
非常にためになった。次は錬金術、グラフ先生の授業は戦う錬金術師を目指す
もので、リナが取りたがっている身体に刺青をするタイプ・・・。
う~ん、手袋とかに錬成陣を印刷すれば良くね?ブーツとか・・・。
上級者はその辺にあるものを武器に錬成して戦う。もちろん鍛冶で作られた武具
の方が強度はある。まあ、その場限りの使い捨ての武具だな。僕なんかの運用
方法は逆にレアなようだ。講義も終了しそのまま錬金クラブへ突入。
「講義を聞いてて思ったんだけど、ぶっちゃけ錬成陣って身体に入れなくても
良くね?どうなのレイキ家。」
「それは古くから研究されてるテーマよ。私のメインテーマでもあるわ
すねかじり虫。」
「リナ、錬金術以外の魔法は?」
「シーゲル様、魔力のリソースは錬金術に持っていかれるので。」
「成程。」
「そういえば、2人ともどこに錬成陣を?」
「入れてない。」
「入れてないぞ。」
「ああ、布とか鍋タイプなんですね。」
「俺達は戦いに錬金術を使わないからな。」
「生産系錬金術師なんですね。」
「そうなるかな。」
「さすがすねかじり虫。戦う事は他の者に任せ、自分は生産として小銭を
稼いでいるわけですね。」
「なんか腹立つけど、その通りだ。」
「さすがシーゲル様、その能力を活かしてイルミワークスを
立ち上げたんですね。」
「ま、まあな・・・。」
「シゲさん、これはあれだね。」
「う~ん、そうだな。グラフ先生、ちょっといいですか?」
「面白そうな話をしてるわね。いいわよ。」
「先生、レイキ家もだけど、錬金術の根本を勘違いしてませんか?」
「どういう事ですか?」
「単純な話です。錬金術は魔導ですよ。」
「そうですよ。」
「ならば、何でわざわざ錬成陣を使うんですか?」
「「えっ!」」
僕は手のひらに水球を出す。
「無詠唱・・・・。」
「錬金術も他の魔法と同じじゃないですか?」
「「えっ!」」
「俺もカエデも錬成陣を使った事、ありませんよ。」
「何ですって!」
「錬成陣って他の魔法で言うところのサーキットみたいなもんでしょ?
つまり発動させる為のトリガーでしかない。」
「俺達が戦いで錬金術を使わないのは、他に武具を持っているというシンプル
な理由です。」
「レイキ家、お前錬金術ってそういうもんだってずっと教えられてきたんだ
ろうけど、わざわざ両手を合わせなくても発動するぞ。魔法はイメージが
重要なんだから。」
「そ、そんな・・・・。」
「あなた達が言っている事は、錬金術業界の常識を覆す事です。」
「だから先生を呼んだんですよ。今後、この考え方を広めて欲しいんです。
もちろん錬成陣を知らなきゃ発動しませんから学ぶ事が前提です。」
「先生だって知ってるでしょ?属性は枷でしかないって。」
「・・・あなた達はいったい・・・。」
「そうすればリナのように、嫌々、身体に錬成陣を刻まなくてもよくなります。」
「先生は錬金術での戦い方を研究してると思うんですが、イメージのみで発動
できれば戦い方の幅は広がりますよ。なにしろ、錬金術の最大の特徴は
物質交換なんですから。」
「これはやばいですね。ドキドキしてきました。私もリナ同様、どうやら常識に
縛られていたようですね・・・。」
「レイキ家、どうする?」
「な、何がですか?」
「刺青、取れるけど。」
「ちょ、ちょっと待って下さい。私は何度も消そうとしましたがエクストラヒール
でも消えませんでした。それに今となっては錬成陣なしで発動できるか
不安です。」
「このクラブはそれをテーマにしよう。卒業するまでに刺青を取る事を目標に
すればいいじゃん。」
「先生、論文をお願いします。」
「わかりました。ちなみにあなた達がもし戦いで錬金術しか使えないとすれば
どうしますか?」
「俺はそうだな・・・敵の剣や刀を鍋に変えます。」
「ははは、想像すると笑えるね。僕は相手の顔の周りの空気を別なものに。」
「笑えん!死ぬわ!」
「先生、全ては魔力量に比例します。これも他の魔法と同じですよ。」
「成程、そういう事ですか。」
「先生、どういう事ですか?」
「例えば炎系の魔法だとファイヤーボールからインフェルノまであります。
インフェルノを使える魔導師はごくごく限られた魔導師です。それと同じで
今シーゲルとカエデが言った方法はそれに匹敵するという事です。動いてる
相手の剣や刀をどうやって鍋にしますか?どうやって周りにある空気だけを
別な物質に変換しますか?」
「あっ・・・。」
「素晴らしい。目から鱗が落ちました。リナ、研究を手伝って下さい。」
「わ、わかりました。」
「2人はそれが出来るんじゃないですか?」
「はっはっは、無理ですよ。剣や刀に触れたら手が切れます。離れて発動させる
程の座標指定はまだ無理です。」
「はっ!すねかじり!あなた、パーティーでアズールを・・・まさか!」
「へっへっへ、ばれちっちー。てへぺろ。動いてる相手には無理かも。」
「くっ、すねかじりのくせに。腐ってもガーネット家という事ですか・・。
先生、私も燃えてきました。共に錬金術の未来を!」
「いや、腐ってないし!」
2人はがっちり握手。なにこれ?
「さっ、シゲさん。クラブハウスへ。」
「了解。」
みんな集まってるな。
「諭吉、ベルグお願い。」
「おう。」
「スズメはミナミを。」
「わかりました。ミナミ、行きましょう。」
「はい。」
「エイル、アトムを。」
「わかりました。」
「キリコ、そこで死んでるボルタを。」
「わかりました。公式ど変態、行きますよ。」
「やだ、今日は休む。全身筋肉痛なんだ。」
「アカリ、手伝って下さい。」
「わかりました。」
ど変態狼はキリコとアカリに引きずられて行った。
「い、いやぁぁぁぁぁ~。」
「シゲさん、装備の企画よろしく。」
「了解。」
「さっ、ゼルダ、ブラウ。僕らも行こう。」
「うん。」
「はい。」
「ヒカミと優は武具を取りに来た人に渡して。それと優、後で渡す物があるから
訓練場に来て。」
「わかりました。」
「雷系の技なんだけど、まずはザイルに見せてもらおう。よろしくザイル。」
「はい。分かりやすくするのに大鎌を使います。まず、サンダーボールです。」
手のひらサイズの雷の弾を自分の周りに浮かせる。おお・・何ボルト?
「ポイントは複数の雷の玉を制御する事です。」
5つくらいの雷の玉がザイルの周りを回りだした。
「そしてこの玉を大きくしたり小さくしたりして、状況に合わせて
使い分けます。」
「す、すごい・・・。」
なんかドラクーンぽい。玉のサイズを変えられる分、汎用性が高そうだ。
「そして大鎌に雷を纏わせ飛ばします。ウインドカッターの雷版ですね。
このサンダーカッターを複数飛ばすのが乱雷刀です。」
「それを、複数・・・。」
「こんな感じです。」
「次は僕の雷系だね。昨日も言ったけど居合の時に使う事が多い。見てて。」
刀は夕霧を使う。
「雷光!」 ドンッ!と音がしてシャリンと鞘に夕霧を収める。
「いや、見えないんですけどー!」
「私にも見えませんでした。ゼルダ、あれを見て下さい。」
「あっ、イナズマ!」
「と、まあこんな感じで雷のエネルギーをスピードに転化する訳だね。
やってみて。」
「できるかー!」
「そお?たぶんゼルダはできると思うけど。」
「えっ、まじ?」
「まじ。1か月で。」
「な、何か出来る様な気がしてきた・・・。」
「まずは雷の制御だね。ザイル、お願い。」
「わかりました。」




