INDOMITABLE
とりあえずBクラスへ行ってみる事にした。キリコと2人で歩いてるとミナミと
その他数人がどこかに向かっているのを見つけた。
「キリコ、光彩。」
「はい。」
跡を付いて行くと訓練場の裏側に来た。まさか・・・。
「おい!ミナミ!何でお前はまだBに居るんだ?先生に言ってクラスを落とせって
言っただろう!お前が居るとAに馬鹿にされるんだよ!」
「さっさと出ていかないと、わたくしの両親が動き出しますわよ。」
ミナミは何も答えず、ただ睨みつけてるだけだ。
「だからあ、その目が気にいらないんだよ!」 ドカッ!
キリコの気配が変わる。
「キリコ、耐えろ!」
「何故ですか!」
「今出て行くと、ミナミの意地が無駄になる。」
「くっ!」
「キリコ、あいつらの顔を覚えろ。」
「許さない、絶対に・・・。」
ミナミは殴られても蹴られても、一声もあげなかった。
「クッ、いいか明日もBに居るようだったらもっと酷い目にあわすからな!」
残念、お前らに未来はない。それにしてもいじめか・・・。
奴らが去った後でミナミは気絶した。
「行こう、キリコ。」
「・・・・。」 キリコは泣いていた、初めて見たな・・・。
「デル君、ヒール弾。」
「イエス、マスター。」
傷は治したけど、しばらくは目を覚まさないだろう。
「帰ろう、キリコ。」
「・・・・・。」
僕はミナミをおんぶして歩き出す。
「馬鹿だなあ、ミナミは・・・。あんな奴らをぶっ飛ばしてもミナミの負けには
ならないのに・・・。貴族なんてろくなもんじゃないよね・・。ごめんよ、
気づかなくて・・・・。」
クラブハウスへ戻る。泣いてるキリコを見て全員、ぎょっとしてる。
「リング、この子を寝かせて。」
「承知致しました。」
「何があった?何でキリコは泣いてる?」
「みんな集めて。」
「カエデ、両手から血が出てます。治療します。」
「すまない・・・。」
リビングにみんな集まったので、さっきの出来事を話す。
諭吉が激怒して僕の胸倉をつかむ。
「お前が居て何を好き勝手やらせてる!ガーネットの名は飾りか!」
「よせ大将!カエデとキリコはミナミの為に我慢したんだ。」
「わかってる!そんな事!」
「ミナミの気持は痛い程わかる・・・。ミナミはカエデやお前達に出会ってない
俺だ・・・。」
「アカリ、AもBも大して変わらないでしょうに。そんなにAはBを見下して
いるのですか?」
「全員ではないですが、正直見下していると思います。クラス内ですらその
状態です。ちなみに私は見下される方です。」
「落とし穴で気絶してたアホなんか、まさにそんな感じだな。」
「カエデ、いじめ問題は根深いですよ。ミナミは話を聞くと卑屈になりすぎですし
虐めてる貴族の闇もそうとうです。」
「スズメ、世の中はお金が全てじゃないっていうのは綺麗事でさ、やっぱりお金が
ないと辛いしネガティブになるんだよ。そのネガティブさがミナミを卑屈にして
しまってる。それにさ、弱いのも駄目だ。ミナミが1人で生きて行くって決めた
んだったら全てを跳ね返す力がないとね。」
「それを、誘うと?」
「そうするよ。ミナミが目覚めたら話してみる。それとは別に奴らには3倍返しだ
少しの間、学園から消えてもらう。明日の魔導の授業の時、流れ弾をたっぷり
お見舞いしてやって。それとシゲさん、キリコ、AやBの人を見下すような
貴族の連中を黙らせる。クラス対抗戦、Fを優勝させる。人選、お願い。」
「まじか?俺達が出ずに?」
「僕達が出て優勝しても意味はないよ。」
「そうだな・・・わかった。皆も協力してくれ、短期間でそこまでもって
いかないとな。」
「ルールの限界まで武具と魔導具で底上げもする。すまないなアカリ、
Aクラスなのに。」
「お構いなく、どのみち私は蚊帳の外ですので。」
「カエデ、流れ弾はどの程度まで?殺しちゃうかも。」
「殺しちゃ駄目だよ。そうだな、ミナミを魔改造するのに1ヶ月欲しい。」
「わかりました。では、社会的に抹殺します。」
「それはご自由に。伯爵の力、見せつけてあげて。」
「カエデ様、お目覚めになられました。」
「了解、今行く。エイル、悪いけどミナミの刀を探して買い戻してくれる。」
「わかりました。」
さてと、話してみるか・・・。
「目覚めたようだね。」
「カエデ・・・。何故、私はここに居るのですか?」
「倒れてたからね。」
「痛みも傷もない・・・治したのですか?」
「外側はね。」
「!」
「ミナミ、君の人生は君だけのものだし生き方に口を出す気はない。ただ、君は
僕と似ていてね。」
「ガーネット家の御曹司と?笑わせないで下さい。」
「ミナミ、僕は転生者だ。しかも前世の人間は召喚者だ。」
「そんな事・・・。」
「まあ、信じるも信じないもミナミの自由だけどね。その経験上、僕は根っこの
部分で誰も信じないし誰にも頼らない。」
「ガーネットもキリコやシーゲルもですか?」
「そうだよ。まあ、皆がそれを聞くとショックを受けるだろうから言わないけど。
前世の僕は転生する時、7歳になったら記憶が戻るようにしておいたんだ。
記憶が戻ってから僕は経済的にガーネットの世話にはなってないし誰からも
守ってもうら必要もない。」
「何故ですか?」
「簡単な話さ。この世界で1番強くて、1番金持ちだからだ。」
「フフフ、自分で言いますか。」
「事実だからしょうがない。この世界は不公平で理不尽で残酷だ。くだらん貴族制
もあるしね。」
「ええ、身に染みてます。」
「最初に言ったけど、ミナミの考え方や生き方に口を出す気はないし、それが
正しいとか間違ってるとかもどうでもいい。けど、その我を押し通す為には
力が必要なんだよ。力も無いのに我慢してるのは僕からすると滑稽だ。」
「あなたに私の何がわかるのですか!」
「知らないよ、僕はミナミじゃない。それに僕は誰かに自分の考え方や生き方を
わかってもらおうと思った事もない。」
「私に似ているですか・・・・。」
「そんな傲慢で我儘な僕からミナミに提案だ。さっきミナミを殴るけるをしてた
連中は少しの間学園から消えてもらう。その間に全てを跳ね返す力を手に
入れてみないか?」
「そんな事、出来る訳ないでしょう!」
「できるさ、ミナミの覚悟があればね。もちろん強制する事じゃないし決断は
自分でして。それとその場合僕らのクラブとギルドに入ってもらうから。」
「・・・・。」
「送ってくよ。マザーが心配する。1ヶ月なんてあっという間だ、時間が惜しい
から決断は明日の朝までにして。覚悟が出来たらここに来て。」
送っていくジープの中でミナミは一言も話さなかった。まあ、ミナミの決断は
実はどうでもいい。やる事を変える気はない、まずは学園のくだらん貴族意識
は潰すから。さて、急に忙しいぞ。僕は学園には戻らずワイズ邸へ。
「ワイズ。」
「お帰りなさいませ。」
「頼みがある。」
「承知致しました。」
「カモナ、ミナミがやられている映像を。」
「かしこまりました。」
「これは・・・全く、これだから餓鬼は嫌いです。」
「こいつらの親のあらを探してくれ。」
「承知致しました。」
「ちょっとアトリエに籠る。」
カモナのアトリエに行き、エイルに話しかける。
「エイル、ミナミの刀は?」
「買い戻しましたが、ボロボロですよ。」
「構わない。」
「今、お持ちします。」 すぐにエイルはカモナに来た。
「これです。」
「ボロボロだね。これを売ったって二束三文だったろうに・・・。」
「どうする事に?」
「ミナミの判断に任せたよ。明日の朝までに決めろとは言ってあるけどね。
明日、ミナミの身体を調べて欲しい。」
「わかりました。」
「それとシゲさん達が選出するクラスの代表の身体チェックも。」
「構いませんが、いいんですか?」
「何が?」
「目立ちますよ。」
「まあ、その辺は力尽くで・・・。学園でさ下剋上が当たり前の世界を作るよ。
そしたら卒業してもそのスピリットは続くだろ?」
「ああ、そういう事ですか。」
「もうこの世界に貴族制も封建制度も必要ない。雷子達を実力以上に盛り立てる
必要もない。」
「そうですね。」
「もちろん、僕のスローライフが前提。」
「成程。」
「ボルタってクラブハウスにまだ居るかな?」
「なんか訓練場で暴れていましたけど。」
「訓練場に居るように伝えて。」
「わかりました。」
まずはボルタの鎧を作ってしまおう。じゃなきゃ死ぬ、明日。
ピアス型にしてワード発動にしてっと。ワードは「ウルフドライブ」と
「キャストオフ」だプププ。よし、出来た。クラブハウスに転位。
訓練場に行くと、ボルタは鬼丸を振っていた。
「ボルタ。」
「おおカエデ、戻ってたのか。」
「すぐ行くけどな。これを付けろ。」
「なんだこれ?」
「鎧だ。」
「えっ、この石っころが・・・。」
「それを耳に付けて、触れて『ウルフドライブ』って言え。」
「わ、わかったよ、『ウルフドライブ』。う、うお!」
黒い狼の鎧だ。
「す、すげえ・・・。」
「とりあえず華姉達とダンジョンに行く時はそれをつけろ。じゃなきゃ・・・。」
「じゃなきゃ?」
「デッート!」
「まじか・・・・。」
「元に戻る時は『キャストオフ』だ。」
「キャストオフ。」 バイーンと鎧が弾け飛んだ。や、やばい、笑う。
ボルタはきょとんとしている。
「まあ・・・生きろ。」
「おう!オタク魂見せてやるぜ!それとカエデ。さっきの話、手伝うよ。」
「ありがとよ。活躍してもらうさ、刀代表。」
「えっ!」
すぐにアトリエに戻る。ミナミの刀を作ってしまおう、本気でだ。
不純物を取り出すとほとんどなくなった。それでも芯鉄になるくらいは残った。
この芯鉄に彼女の10年が詰まっている、芯鉄をヒヒイロカネで包み僕の想いを
込めて打つ。神刀になったって構わない、この先起こる不公平や理不尽を
ぶち壊すそんな刀だ。久しぶりに銘も刻む『残光 楓』。
残光ベースのダンジョン用のゴブ刀も用意。
「ありがとうございます、カエデ様。これでやっと主の力になれます。」
「頼むよ、残光。僕は君に不公平や理不尽をぶち壊す想いを込めて打った。」
「その想い、たしかに届いております。お任せ下さい。」
後は白真珠が手に入ったら人化してもらおう。
彼女はきっと決断するだろう、残光を打ってて確信した。
銃も用意する。イングラムの小型版だ、名は「エプシロン」。後はピアス型鎧に
アイテムバッグ。バッグは小型で制服に付けても目立たない。小さいが沢山
入るので完全回復薬を入れておく。ついでだ、固形スープとビーフジャーキーも
たっぷり入れる。クラブハウスのアトリエに。
「アトム、夕食にしよう。」
「了解。」 シゲさん達は代表の選出の話し合いをしてるそうだ。
「オーダー、どう?」
「ロットと杖が数本、残ってる。」
「食べたら作っちゃうよ。」
「僕が作ったやつのチェックして、カエデのエリシエーターも出来てる。」
「おお、ありがとう・・・折れる?」
「たぶん折れる。」
「わかった、強化する。」
「そうして。」
2人ともオムライス。うっまー!
「魔導系の鍛冶ギルドの奴らが来たよ。」
「おっ、早くも釣れたか。」
「シーゲルがあしらってた。」
「それでいいんだよ。直接、彼等に何かする気はないしね。客をごっそり
いただくだけでいいさ。」
「オーダーで一杯になっちゃわない?」
「さすがに上級生は良いの使ってるでしょ。」
「それもそうだね。昼間の話、役に立たないけど手伝うよ。」
「役に立たないなんて事はないよ。剣代表。」
「ああ・・・そっちか・・・。」
「ミスリルの刀もまた打つけど、見る?」
「見る!」
アトリエに戻り、オーダーのメモを見る。急ぎではないようだ。
「チェック、お願い。」
剣が3本、見た目も品質も問題ない。僕のエリシエーターが折れたのは剣の問題
じゃなくて、僕の問題だったようだ。
「大丈夫だよ。念の為金剛のサーキットを刻んでおくね。」
「サーキットかあ、僕も紋章学とれば良かった。」
「来年とればいいじゃん。鍛冶は打てば強くなるけど即席で作る時は便利だよ。
応用もできるし。」
「そうするよ。」
さて、優の剣を打とう。




