MERLIN
「お疲れー。」
「いい方法を聞きました。ニイの古代刀もいい感じです。」
「そうか、良かったら使ってくれ。」
「何かお礼をしないとですね。」
「気にするな、習作だ。」
「粋!」
「ウマウマ。」 小梅は我関せずクッキーを食べている。
「小梅、高周波クナイがあったじゃん。」
「あっ・・・。」 忘れていたようだ。
「イチは風で高周波化してたよね。」
「はい~。」 イチは天才肌だな。
「ニイは高周波というよりヒートブレードだね。」
「うむ、うまく回転させられなかったからな。高熱化した。」
ニイの対応力もさすがだ。
「よし、じゃあひと休みしたら、イド君で海に潜ろう。」
イド君に乗り換える。ラバンさん、お疲れ様でした。
「カニ料理を作るから自由にしてて。甲板に出れば海の中も見れるからさ。
そうだ、昼食は甲板で食べよう。」
僕は久しぶりに厨房で料理だ。カニ焼売、カニ玉、カニちらし、後はカニの
味噌汁って感じ。そのまま蒸した物も用意しよう。サラダは適当に。
出来上がった料理をカモナと共に運ぶ。
「出来たよー、昼食にしよう。」
んっ、みんなが食い入るように何かを見ている。
「どうしたの?」
「あれ。」 んっ、あれは・・・要塞クジラ。
「ああ、要塞クジラだね。」
「この前、来た時は見れませんでした。大きいですね。襲ってきたりは?」
「どうだろう?向こうからこっちは見えてないだろうからね。さっ、昼食に
しよう。カニづくしだよ。」
「おお・・・。」 カモナーズが配膳してくれる。
「ウマ・・・ウマ・・。」
「は、はい~・・。」
「う、うむ・・これは・・。」
「・・・・。」
「あれ、どうかした?」
「カエデ、何ですかこれ!美味しすぎます!」
「何て言うか料理の腕がバグっててさ、身内にしか作れなくなってるんだ。
普段はヒカミやカモナが作ってくれるから自分で作るのはキャンプ飯ぐらい。」
「た、確かに、これはやばいですねえ・・・。」
「もちろん素材も超レアらしいからね。」
とんでもなく美味いカニ料理を堪能。締めはカニ味噌の雑炊だ。
「最後にまた、とんでもないものを・・・。」
「カニ味噌って好みがあるけど、旨いよね。」
「カエデ、また1段とバグってませんか?」
「いや春さん、最近ちゃんと料理してなかったから自分でもわからないんだよ。」
「何か絶対に自分で作ったものをカエデに食べさせられませんね。ヒカミはやはり
勇者です。尊敬します。」
「僕は別にグルメじゃないよ。それより、ひと休みしたら要塞クジラに行って
みよう。誰が住んでるのか気になるよね。」
「行きたいです!」
「そう言えば、この前ここに来た時ってアノマロシャークとかモサクジラとか
確保できたの?」
「1頭ずつですね。あれだけ大きいと倒し方とか倒せる人が限定されます。私だと
海中戦には向きませんし、ユキチもですね。ヒカミが唯一で確保しました。」
「そっか、炎と影だもんね。確かに僕も凍らせたよ。」
「ですから私の魔導銃には氷系、雷系、ヒール系を組み込もうと考えてます。
皆と居る時は必要ありませんが、今後、単独で動く事もあるでしょうから。」
「了解。となるとサーキット3枚でボディの強化だね。」
「すいません、教官殿。」
「問題ない。」
「小梅ちゃん達は海中戦はどうなの?」
「練習中。」
「はい~。」
「うむ、久遠島で学んでいる。」
「私は苦手ですね。水の抵抗で思う様に動けません。」
「これは意外に皆の課題なのかもね。」
「カエデはどうなんです?」
「そうだなあ、呼吸が出来ればそんなに苦手意識はないかな。ただ、魔法主体には
なるよ。」
「チート。」
「チート言うな!」
イド君に要塞クジラに近づいてもらう。でっかいな、おい!
「海水の流れで気づかれる恐れがあります。」
「転位しよう。透明で気がつかなかったけどドームがある。」
「かしこまりました。」
ドームの中に転位、海水は無いので浮いてもらう。虫型ドローン出動!
「大きいですね。要塞というより街って感じです。」
「建物はあるけど、人の気配はないね。」
「空気はあるのでしょうか?」
「イド君、どう?」
「あります。」
「外に出てみよう。」
「廃墟って感じです。」
「近くで見るとボロボロだ。誰も居なそうだね。」
「あの1番大きな屋敷に行ってみましょう。」
やはり日光が足りないのか草木はほとんどない。妙だな・・・。
ポセイドンの別荘かなにかだと思ってたんだけど。屋敷は他の建物よりは朽ちて
いない。
「入ってみよう。一応、警戒して。」
中は割と綺麗だ。広い立派な屋敷だ。
「誰だ?」 その時、頭の中に声が響く。念話だ・・・。
「休日でこの海に遊びに来ました。」
「なんと!ルーン砂漠を越えてか?」
「はい。申し遅れました、僕はカエデ・ガーネット。こっちは仲間の小梅、イチ、
ニイ、春さんです。」
「私はスズメ・スザクと申します。」
「うむ、私はスピナー。友人が付けた名だ。」
「スピナー様、もしかしてこの建物が乗ってるクジラですか?」
「いかにも。」
「この屋敷や街には誰も住んでいないのですか?」
「そうだな。もう何年も前に最後の1人が死んだようだ。呼びかけても返事が
なくなったからな。」
「そうですか・・・。あのう、屋敷の中を探検してもいいですか?」
「構わんぞ、誰もおらんだろうし。」
「ありがとうございます。」
「驚きました。」
「そうだね。部屋を調べてみよう、何かわかるかも。」
「わくわくします。」 学者だもんな。
屋敷は広いリビングに食堂、厨房、書斎、お風呂もある。この豪華さは町長とか
村長とかって感じなのかな?
「カエデ、私は書斎を調べます。書物から時代とかがわかるやもですから。」
「お願い。僕達は寝室に行ってみるよ。」
骨とかありそうでやだなー・・・。
ガチャ、鍵は掛かってない。中には広いベットに・・・椅子に座った木の人形。
全員、びくっとしたよね。
「人形ですか・・・身構えてしまいました。」
「いや・・これはオートマタだ。」 ニイが近寄って観察している。
「これは木製のカラクリ、オートマタの先祖みたいなもんだ。」
「魔石がきれたのかな?」
「たぶんそうだ。」
「よし、動かそう。この子が色々知ってるだろう。」
ニイと2人で椅子から降ろし、魔石の場所を探す。すげえ、まじ歯車で動くんだ。
春さんは表側のチェックをしている。
「外側に破損部位はありません。」
「とりあえず、魔石にチャージするよ。」
魔石はなんだろう?やたらでかいな。チャージ完了、動くかな?
突然、起き上がりロボットダンスを始めた。
「えっ?」
カクカクと踊り、最後にヘッドスピンを決め「リブート。」
「長げえよ!」
「アナタ、主、ニュー。」
「カタコト!英語混ざりー!」
「お前、名前はあるか?」
「ワタシ。ラムダ。」
「ラムダ、ここの説明できるか?」
「デキル、スピナー、アイサツ。」 念話が聞こえる。
「ラムダ、生きてたのか?」
「ノー、リブート、主、ニュー。」
「ほう、新しい主人に会えて、ラムダ幸せ、か。」
「そんな事、言ってねー!」
「ラムダ、説明をお願いします。」
手招きされる、付いて来いってか。ラムダの後を付いて行くと厨房にきた。
ラムダはエプロンを付けお湯を沸かし昆布茶を淹れてくれた。
スズメも呼んで皆で昆布茶・・・。
「フー。」
「ラムダ、説明する気ねーだろ!」
「まあまあカエデ、書斎で色々わかりましたから。ラムダを作ったのはマーリンと
いう魔導師です。この屋敷というか街を作ったのもそうです。彼は世間のごた
ごたや人間関係を嫌いここに来たようです。街で暮らしていたのはお弟子さん達
のようですね。それで、どこかと行ったり来たりしながら楽しく研究をしてた
ようなのですが、ある日を境にここに来なくなりました。今から10年以上も
前の出来事ですね。」
「・・・・ラムダ、すまん!」 僕はラムダに土下座した。
「ユルス、主、イヤ、イカルガ。」
「あ~、そういう事ですか。」
「マーリンは『箱庭』で眠っているリッチだ。つまり僕の仲間の骸骨だ。」
「マーリン、プログラム、主、イカルガ。」
「つまり最初からラムダの主はイカルガだったと。」
「思い出したよ。確かに僕はマーリンと遊びで手のひらサイズの木のカラクリ人形
を作った。こんな大きくなかったけどね。」
「マホウ、ドライアド、マリン。」
「えっ、マリンさんが?スズメ・・・僕、帰りたくなった。明日は朝からツバキ流
の稽古でバイーンバイーンなんだ・・・。」
「考えてる事はマーリンさんとマリンさんは夫婦じゃないかと?」
「いや、当てるのやめて!」
「ピンポーン!」
「どわ~、マリンさん!」
「正解よ、スズメ。」
「す、すいません、マリンさん。マーリンは・・・。」
「知ってるわよ。ラムダ、久しぶりね。」
「マリン、主、キタ。」
「良かったわね。」
「マリンさん、クレープ食べます?」
「「食べる!」」 スズメも返事してるし・・・。
「私の名前はマーリンが付けてくれたの。」
「やはり・・・。」
「マーリンはイカルガが死ぬ時に『イカルガは蘇るから、それまでは仲間と共に
居る。』と言って私にここを託したの。」
「・・・・消滅するはずだった・・・。」
「そうね。けど、あなたの仲間達はそうは思っていなかったようね。ここのキー
はラムダの復活だったの。ラムダが復活したからここの封印は解けたわ。」
「えっ?」
「カエデ、外の景色が・・・。」
外を見ると木が生い茂り花が咲き乱れ、蝶まで飛んでいる。朽ち果てていた建物
も新築のように綺麗になっていた。当然、今いる屋敷もピカピカだ。
「これは・・・。」
「ここはね、マーリンがあなたの為に作ったの。スピナーもマーリンが造りだした
魔法生物よ。」
「何だってここを・・・。」
「あなたがストレスで禿げたからよ。」
「えっ!」
「カエデ、笑っていいですか?アハハハ!」
「もう、わろうとるがな!」
「ハゲハゲ。」
「はげ~。」
「ククク・・・。」
「老人なら当たり前なのでは?」 春さん、まじ天使!
「あー、つまりここはマーリンが僕の癒しの為に造ったと。」
「そうよ、イカルガの120歳の誕生日プレゼントよ。」
「はは・・馬鹿だなあマーリン・・人間がそんなに生きてるわけないじゃん。」
「カエデ・・・。」
やべー涙が出て来た。そうなんだよなあ、マーリンはリッチのくせに優しくて
いつも僕の心配ばかりしてた。入学式の時に『箱庭』を使った時も『何故、
使った!』ってすげー怒ってた。
「入学式の時にすげー怒ってたけど、ここの事は何も言ってなかったよ。」
「サプライズよ。あなたの事だからほっといてもここに辿り着くだろうって。」
「全く・・・。」 マーリン・・涙が出る程のサプライスだったよ。
「もうここはあなたのものよ。ラムダが主として認識したから。」
「えっ!」
「お待ちしておりました、カエデ様。」 そこに美しいメイドが居た。
「ラムダ?」
「はい。」
「言ったでしょ、封印は解かれたって。」
「マーリン様よりカエデ様のお世話を仰せつかっております。」
「円。」
「まどか~。」
「うむ。」
「確かに・・・。」
「円は妹でございます。シヴァ様が私を参考にして円を造りました。」
「そうだったんだ・・・知らなかった。」
「円は今も言葉遣いが悪いですか?」
「ワルワル。」
「わる~。」
「悪いな。」
「まあ・・・・。」
「そうですか・・再教育が必要のようですね・・・。」
「ラムダ、無事復活したようですね。」
「ワイズ!」
「ワイズ様、お久しぶりでございます。」
「ワイズ、ここの事知ってたの?」
「もちろんでございます。マーリンから食材の相談をされ、ブラウニーが肉や
野菜を作る事になっておりましたから。あの街はブラウニーの街です。」
「えっ!」
見ると沢山のブラウニーが居て、忙しく働いている。いつの間に・・・。




