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第二話

2話


重い瞼をゆっくりと広げる。


目が覚めた直後ってなんでこんなに辛いんだろうか。

眠りに入る直前は何事にも変え難き幸せな時間なのに。

至福のひと時を味わった自分に待っているのは夢なのか、現実なのかそんな簡単なことも分からないほど馬鹿になった頭。疲れがほとんど取れてない体。

まるで夢の中で全力で体を動かしたみたいだ。


そんなことを考えながらもなんだかんだで毎日きちんと同じ時間に起きてくれる自分の肉体は上半身をムクリと起き上がらせ、カーテンを開ける。


まだ明るさに慣れてない目にこの光は毒だと悪態をつきつつ、徐々に覚醒してきた頭は寝る前に何をしていたのかを思い出そうとしていた。


そういえば昨日は最近読んでいなかった本を読み漁ってだんだっけ。自分の記憶とちょっと違うとこがあって、ちょっと読み進めてくうちに止まらなくなったのか。


あーあ、本が傷つく置き方してる。気をつけなきゃ。反省反省。

この本のシリーズなかなか完結しないんだよね。

毎回良いところで終わるから次巻が出た時また1から読まなきゃいけないのが美点であり、欠点。


さて、そろそろ朝ごはんを食べようか。

我が家の朝食は毎日パンとスープ!

質素に感じる時もあるけど十分お腹は膨れるし、お母さんが言うにはお昼と夜ご飯を合わせれば栄養も足りてるらしいので問題ないだろう。


この部屋にもこんがりと良い匂いが漂ってきてるのでもう準備は終わってるかな?なんて考えながらまだ重い足を引きずりつつドアを開ける


「「おはようシン」」


毎朝見慣れた笑顔をむけてくる両親を見ながら僕も日課となってしまった言葉を心の中で唱えた 


"ステータスオープン"


その刹那、コンマ0.1秒とかそんな次元じゃないほど素早く、まるで元から存在したかのような半透明の板が僕の眼の前に現れる。


個体名 アルカ=オルタニア


状態  健康 


特質  火球



個体名 ダリル=オルタニア


状態  健康


特質  水球


僕は両親が昨日と同じく健康であることをチラリと見て確かめるとすぐ返事を返す。


「おはよう、父さん、母さん」


2人はもう既にテーブルの椅子に座って僕を待っているところだった。

僕もすぐに席に着くと3人で食べる前の言葉を口にする。

「「「日々の安寧に感謝を、

      神の恩恵に忠誠を!!」」」


この言葉は家の中で言う必要は実は無い。

でも習慣化しないと外で咄嗟に出てこない時があったら困る。

礼儀のなってない失礼な人って思われてしまうからね。


この世界は神様の不思議な力によって人々は特質と呼ばれるこれまた不思議な力を使うことができる。


どんなに貧しい人でもどんなに高貴な人だったとしても神様は全ての人間に平等で、

火球、水球、風球、強化のいずれかの特質が必ず与えられている。

人によって微妙にできることは違うけど

それは個人によって耳の位置が違うのと一緒で大差はない。


食前の儀を唱えた僕は学校で習った聖書の一節の解釈を思い出していると父さんが話しかけてきた。


「学年が変わったばかりの学校はどうだい?」


「特に変わったことはないよ。強いて言えば実技の授業が増えたくらいかな」


「そうか、楽しめてるか?」


「もちろん。」


これは本心だ。毎日自分の頭になかった知識や考え方は僕の心をどうしようもなく湧き立たせるし、交友関係も充実してる。

客観的に見ても何不自由もなく学校生活を送れてると思う。


「なら良いんだ。実技は危ないからケガをするようだったら見学にしておきなさい。」


「わかったよ、父さん。」


それでも、父さんが僕のことを心配するのは自分の息子に対する当然の情、もあると思うけれどやっぱり自分の体質が大きいんだろうな。


その後は他愛のない話をして、朝ごはんを食べ終わった僕は自室に戻ってさっきの父さんの話を思い出す。


もし、もし仮に自分の特質がわかったら両親は大喜びするだろう。変な不安を抱かず、安心して学校に送り出してくれるだろう。


もしかしたら今日はいつもよりぐっすり眠れたし、表記が変わってるかも


そんな毎日繰り返し考え、そのたびに諦めてきた事。

それでも諦めきれずに今日も鏡の前で僕は念じる。


"ステータスオープン"




個体名 シン=オルタニア


状態  疲労


特質  ■■■■■


能力 「見通す者」



___これは神が作った完璧な世界で矛盾に気づいてしまった僕への罰なのかもしれない










  


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