現像という言葉
小説を読んでいると、「現像」という言葉が使われていることがあります。
というか、割とよく見かけるのです。
しかし、それらが適切な意味で使われているのは、見たことがありません。
現状ではほぼデジカメ一本という事になるでしょうが、
撮影した画像を紙に出力する、という作業に「現像」という言葉を使っているように思われます。
これは、少なくとも銀塩時代を知っているものから見ると、とてもひどい誤用に思われます。
この点指摘させていただきたく。
もともとの現像は、銀塩時代の用語であり、その意図は「感光したハロゲン化銀(=潜像)を銀粒子に変化させる(これで目に見える像になる)」ことです。
実際には、「未感光のハロゲン化銀を流出させる」定着という作業も 広義の現像プロセスに含まれています。
つまり、現像は、「目に見えない潜像」を「目に見える像(=ネガ、ポジ)」にするという作業なのです。
昔のカメラ屋さんというか写真屋さんはDPE店とも呼ばれて、現像・プリント・引き伸ばしを行ってくれるものでした。
プリントは密着プリントを指すので、35mmフィルムではほとんど使用される事がありませんでしたが、現像によってネガを作成し、かつ「同時プリント」で「サービス版」の写真を「引き伸ばして」もらうという一連の処理を行ってもらうのが一般的でした。
以上から判るように、「現像」という言葉は、どうやっても「紙に出力する」という意味にとる事はできません。
カメラのXXXみたいなお店に行って、スマホの画像を出力するサービスとかで、「現像」という言葉が使われる事は絶対にないでしょう(銀塩の名に懸けて!/w)。
類義で考えるなら、CCDが感光することによりたまった電荷(=潜像)を読みだして、画像(JPEGやTIFFなど)を生成するカメラ内での作業を、現像と呼ぶことができるでしょう。
また、デジタル暗室という言葉があったように、そのままでは読み取ることができないRAW形式のデータを、パラメータを指定してJPEGに直す、といったデータ加工作業は、ある意味「現像」と呼ぶことができるかもしれません。
ですので、もうここは「現像」ではなく素直に「プリント」という言葉を使ってやってください。
あるいは、「印刷」や「出力」でもいいんですが。
かつての銀塩使いがものすごく気持ち悪く感じてしまいます。
切に切にお願いいたします。
なんでこんな誤用が流行っちゃったのかな。
参考: https://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/1709/05/news050.html
「現像」は「プリント」のことじゃない
実は、昨日も見かけちゃったのです…
書き終わった後に検索で参考ページを見つけたのだけれど、見事に同じことが書いてあって、草。