第2話 遭遇
西暦30XX年。
時代は生物の遺伝子改良技術が進み、人類の非科学的な実験の横行により、世界中でごく稀に〈魔力〉を持った子供が生まれるようになっていた。魔力といっても、魔法使いみたいにどんな魔法でも使えるわけではなく、様々な種類の属性から一属性だけ付与されて産まれてくるのである。典型的な属性として、火属性、水属性、風属性などがある。どのような属性を持って生まれるかの法則性などはまだ明らかにされていない。言ってしまえば『属性ガチャ』的な運ゲーなのである。
日本では、そのような魔力を持った子供達を将来のリーダー候補に据え、軍事的な利用も視野に入れたいたくらみなどから、全国から魔力保有者達が都心部に集められ、国の管轄の下、魔力の向上や制御を目的として、魔術保持者だけが集まる学校で学生生活を送らなくてはならなかった。俺はこの制度を割と窮屈に感じていた。
俺の名前は、海堂ワタル。俺も生まれつき魔力を保持していたことから、高校進学を期に親元を離れ、都心で一人暮らしをしている。
そんなことを主人公チックに頭の中でナレーションしながら、俺は道を駆けた。地を蹴った瞬間、俺は約10m近く飛び上がった。そう、俺は属性の中でも闇属性の魔力が使える高校生なのである。
闇属性といっても呼び方だけで、実際には重力を自在に操れるという『すごい』能力なのである。これによって、俺は一時的に自分を月の上にいるかの如く重力を軽くして見せているのだ。
また、軽くするのと同時に足の裏の重力を大きくして通常よりも大きく蹴りあげ、飛び上がった最頂点で体の重力を大きくしたりなど、比較的細かい調整もできたりする。
ただ、闇属性のせいからか、普段はどことなくやる気がでず、学校の休み時間は机の上で顔を伏せてただ寝ているような所謂『陰キャ』なのである。
「瞬間移動できる能力をもった人間がいればなぁ」と思いながらも目的地に向かう。ちなみにまだ空間移動ができる能力者や時間移動ができる能力者は世界的にも見つかっていないらしい。それと複数属性をもった奴もいないらしい。
最寄り駅に到着した。幼馴染の二人は既にいない。それもそうか。
最寄り駅で目的地まで向かう特急列車を待つ。
能力が使える者にとって公共交通機関など不要かと思われがちであるが、能力者は能力を使った分体力を消耗するのである。特に今回の目的地はかなり遠く、自力での移動は気が進まない。そして、ひとえに電車といっても、現在では雷属性の能力者達の貢献によって、過去の電車とは比べ物にならないくらい電車の性能も上がっており、遠距離といってもあっという間に目的地まで到着してしまうもののだ。
電車を待っていると誰かが近づいてくる。