七月十日 三回目 まさかの異常
「うわあああああああああああああああ!!!!」
冷静になった私は思わず叫び出した。
なにこれ!?ずっと今日に囚われるの!?やだこわい!!
泣く気も失せた私は、ひたすら叫び続けながら床を転がった。
「莉茉姉うるさいんだけど」
「叫んでる暇があったら学校に行きなさい」
三回目オリジナルの会話が起こり、やっと少し私は落ち着いた。
今探さないといけないのは、今日からの脱出方法、ただ一つ。この際選ばれた理由とか他にいる人とかはどうでもいい。
まず私は、一回目と違う一日を送ることを思いついた。
けれど、それはすでに昨日実行している。昨日は一日の半分くらいは最初と違う動きをしたはず。ということで却下。
次はどうしよう。
私は考えに考え、とりあえず我が身の異常を探すことにした。
部屋に戻って鏡の前に立ち、服を脱ぐ。パジャマの上を脱いだところで、私は「それ」を発見した。
「うわ!? なにこれ!」
「それ」とは、へんてこりんな紋章のことである。私の右肩の方に、ファンタジーな魔法陣のような紋章がついていた。丸くて、直径は二センチくらい。
私の肩に異変があったとわかったことは大きな進歩だが、正直言ってそれがどうした?と思う。
紋章を触ってもスキルは発動しないし、パワーが漲る感じもしない。
あれ? これってもしかして形だけですか? 実用性なくない?
まあいい。これはきっと何かの伏線だ。そう信じないと突然の感情のアップダウンについていけないもん。
とりあえず、この紋章のおかげで全く変化なし、という一番怖い状況は回避できた。
「お母さーん! 今日学校休むね!」
紋章を発見した私は学校を休んで、一日他の異常を探すことにした。
次に浮かんだのは、仲間探し。世界は広い。私は自分が世界の中心だと思うほど自惚れていないから、私の他にこのループの主役がいるはずだ。うん、たぶん。いないという可能性は考えたくない。
私はスマホのアプリストアからSNSアプリというSNSアプリをインストールして、「毎日七月十日を繰り返している感覚がするんですけど、同じ人いませんか?」と片っ端から投稿していった。
この投稿に賛同のコメントがついたら私の勝ちだ。その人と連絡を取り、ループから抜け出す。
……そんなに上手くいくかな?
まあ細かいことは気にしない。
さらに次に、私は瞑想することにした。
ほら、こういう系ってよく天の声的なのが聞こえるじゃん。私にも聞こえたらやる気と元気が出ると思う。
はい、瞑想っ!
……………………。
……………………………。
うーん、おかしいぞ? 聞こえないぞ? 神様仕事して。
そんな私の声はもちろん神になんか届かず、私には脳内独り言しか聞こえなかった。
「えー、どうしよう、これ」
自分の体を見て、周囲を見て、困る。
高校を休んだ割にすることもないので、私は紋章の観察をすることにした。
「ん、こうかな? よし、えい!」
自分の肩をずっと見ていると首が痛いので、私はカメラで自分の肩を撮った。
カメラの画面を食い入るように見つめると、私の紋章について少しだけ発見があった。
発見一つ目。紋章は虹色、というか光を反射する水面のような感じだった。
発見二つ目。紋章と言ってもファンタジーな魔法陣が書いてあるわけではなく、光の反射でランダムな模様ができている、という感じだった。もはや紋章なのかも怪しい。
発見三つ目。これ一番大事。肉眼で肩を観察すると、この紋章は、色も一瞬一瞬変わる上に、形や大きさも一瞬一瞬変わっていた。
もちろん急に大きくなるわけではなく、直径二センチあたりを誤差の範囲で変動している。つまり、大きさの変化がめちゃくちゃ分かりにくい。
……発見はあったけど、進歩はしなかった。
こんな私で大丈夫なのだろうか。神様は絶対ループさせる人を間違えてる。