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ようやく人間に出会えたと思ったら戦闘になりました。

 細身のゾンビらしき者に『カイ』


 坊主頭の小柄なゾンビらしき者『ジン』


 名前がないと不便なので名前をつけたんだけど、何も言わず黙ってついてくるし害はなさそうだったから連れて来た。


 そして、僕と同い年の17歳の女の子···この子は人間だ。


 この3人が今の僕の仲間だ。


 さとちゃん、としさん、ニコニコさんはあそこに置いてきた。 僕の言う事をちゃんと聞くようになっていたが、こいつらを連れて行く気にはならなかったよ。



「ふぃがりゃふぃふぁん(五十嵐さん)」


 しずく─さとちゃん達に捕まっていた女の子─は、歯を全部抜かれてて言葉をちゃんと発音出来ないが、慣れればなんとなく何を言ってるかわかるし筆談でやり取りも出来るからさほど困らない。


 困るのは、毎晩毎晩夜の相手になろうとしてくる事。


 僕は童貞だし、ちゃんと好きな人とヤりたいし、誰でも良いわけじゃない。


「どうした?」


 "今どこに向かってるんですか?"


 大体は筆談だな。


 僕達のやり取りは。


「とりあえずこうなる前によく行ってた、隣町に行く予定。 昨日までいた街中よりは安全かな?って。」


 僕らは今あの拠点のあった街中を離れて隣町に向かっている。


 本来なら国道を自転車で行くとか、電車やバスを使うんだけどそんな物が今動いてるわけないし、ばか正直に国道なんか歩いたら格好の的になるから遠回りをして山沿いの市道を進んでいる。


 幸いにも野盗にもゾンビらしき者にも出くわさずにいれたのは良いんだけど、そろそろ人間を食べないと意識を失ってしずくを襲ってしまいそうだ。


 ただ、不思議なのは最後に人間を食べたのはあのデパートにいたチンピラを食べてからだから4日は経っている。


 なのに今の今まで空腹に襲われなかった。


 隣町に向かう前に飲料水や食べ物はバックに入れさせ、しずくは食うに困らない。


 だが、こんな山沿いの道に人の気配なんか何もない。


 最悪しずくを本当に襲ってしまうかもしれない。


「あ"あ"あ"あ"あ"~」


 僕が空腹を感じた時からこの2体のゾンビらしき者も何か落ち着かない感じだ。


「なぁ、しずく。 ちょっと国道の方に向かって歩かないか?」


 しずくは僕の問いに対して頭を上下に揺らしうなずく。


 国道の方がもしかしたら人間と遭遇する確率は上がるわけだし。


 山沿いの市道から外れ国道に向かう市道に出ようとしたら、車横にして作られたバリケードが張られていてその前にはバットを持った二人組の男が立っていた。


「おい! 止まれ! そこの4人組!」


「そこを動くな! 今から質問する事に素直に答えろ!」


 まずいな。


 僕としずくは人間だから良い···。


 ちらっとカイとジンを見ると明らかに人間じゃないんだよなぁ。


 正面から見たらわかりにくいけど、カイはゾンビらしき者になる前に背中を噛みちぎられたのか血まみれだし。


 ジンは片目がなくなってるし、後ろの首を食いちぎられててやはり血まみれだ。


 しずくだって無事とは限らない。


 映画とかで観た事ある通り、女の子は男の相手をさせられかねないし、さとちゃん達もそうしてたわけだから安心なんか出来ない。


 ──!?


 景色が歪む···平衡感覚を保てない。


 溢れだす食欲とよだれ。


 美味そうな匂いが鼻をくすぐり、胸を踊らされる。


 くそっ! もう10分は耐えてくれ僕の体!


「お前らどこから来た!? 他に生存者はいるのか!?」


 良い匂いがする······人間の匂い···。


「ふぃがりゃふぃふぁん(五十嵐さん)!!」


 しずくは仲間···食べちゃ···ダメ。


「うがあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ー!!」


「ぶりゅう"あ"あ"あ"あ"あ"ー!!」


 カイもジンもお腹空いたよね。


 いいよね···。


 あいつらなかまじゃないし、てきかもしれないし。


 いいよね···。


「いけ」


 ぶりゅう"あ"あ"あ"あ"あ"ー!!


 あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ー!!


 ぼくも······たべ···う。




 ─────────



 目が虚ろになって、よだれを垂らしだしてから言葉にならない言葉を喋りだしたら、この2体のゾンビ─カイとジンって五十嵐君が名前つけた─も落ち着きなくなってやっぱりぼたぼたとよだれを垂らしだした。


 目の前にはバリケードの前に立つ衛兵の役だろうか? バットを持った二人組の男達。


 衛兵男1、衛兵男2と名付けよ。


 私単純だからこういうネーミングセンスしかないけど、五十嵐君もネーミングセンスないからきっと笑われないと思うの♪


 それと彼らと私達の距離が大体50m位あって年齢まではわからないけど、野球のキャッチャーがしてるようなプロテクター? みたいなのを身に纏っている。


「······おい! 質問に答えろ!? もう一度言うぞ!? 次答えなかったら攻撃するぞ!」


 え!? それは困る! もう争いは嫌だ!


 性奴隷にされるのも嫌だ!


「いけ」


 ぶりゅう"あ"あ"あ"あ"あ"ー!!


 あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ー!!


 カイとジンが一気に駆け出してあの衛兵の二人に向かって行くんだけど···え? ゾンビって走れるの?


 まぁ、今は良いやそんな事。


 あの男を倒してくれるならゾンビでも何でも関係ない!


「ひぃっへぇー!!(いっけー)」


 その時私の横を駆け抜けていく影。


 五十嵐君!?


 目が正気じゃないし、口からはよだれを垂らし···まるでゾンビのように呻き声をだしながらやはり走って男達に向かっていく。


 一体どうなってるんだろう?


 あのゾンビ2体を仲間にして連れ回してたり。


 色々わからない人。


 そんな事を考えながら見てるうちに、細身のゾンビ『カイ』が衛兵男1のフルスイングを頭に受けて、一撃で粉砕された。


 次は小柄なゾンビ『ジン』がニコニコ達と戦ったようにスピードで撹乱していたが、衛兵男1が駆けつけすぐに左足を叩かれた。


 叫び声を上げ飛びかかるも動きが鈍くなってたり、跳躍力も失なわれていたから難なく避けられるもちょうど駆けつけた五十嵐君によって捕まっ──!?


 首に噛みついて、食い千切った!?


 今確かに食い千切ったし、クチャクチャと口動かしてるし······本当に···食べちゃったの?


 衛兵男1の絶叫が辺りに響き、次にジンが飛びかかり五十嵐君と一緒に食事を始め、間もなく衛兵男1の声は消えていった。


「ひぃ!? 何なんだお前!? 人間じゃなかったのかよ!?」


 もう一人の衛兵男2は震える声で五十嵐君に言葉を投げつけて、すぐにバットを高く振り上げそのまま五十嵐君に向かって振り下ろした。


 刹那、ジンがすぐに盾になり彼の肩甲骨あたりに当たって「ぐるぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!!」と叫び声を上げるも、衛兵男2の腕を掴み引き倒した。


 その隙を見逃さない五十嵐君がやはり噛みつき、ジンもお腹に噛みついて腹を食い破った。


 ビクンッ! ビクンッ! と男の体は叫び声一つ上げられず痙攣して釣られたばかりの魚みたいな動きにそっくりだ。


 っていうか、五十嵐君ってゾンビなの?


 足の震えが止まらないよ······。


 でも、五十嵐君は私を助けてくれたしジン達も私を襲わなかったから味方だよね?


 味方って信じたい。


 ってか、衛兵を殺しちゃ──というより食べちゃったけど私達結構ピンチじゃないかなぁ······?


 絶対交代の人達来るよね?


 その人達が来ちゃ───。


「おい! お前ら! 何をして──!? 大谷!? 大谷達を食い殺しやがった! 山村! すぐに町の男達を集めてこの3体···いや、食われた大谷達もすぐゾンビになるから5体だ、5体倒す為に10人集めて来い!」


「わかった! 助け呼ぶまで無茶するなよ! すぐ呼んでくる!」


 考えてたそばから交代の人達来ちゃったじゃん!!


 ん?


 ちょっと待って···5体?


 五十嵐君でしょ? ジンでしょ? 食われた二人······4人じゃないの?


 ──まさか、私が含まれてる?


 五十嵐君とジン。


 さっき食べられてた二人もいつの間にかゾンビ化して臨戦体制だ。


 ちょっと待って待って待って待って待って!!


 戦う気なの? 逃げないの?


「ふぃがりゃふぃふぁん(五十嵐さん)!! にふぇふぁいふぉ(逃げないの)!?」


 私は堪らず五十嵐君に逃げようって言ったら頷いてくれたんだけど、今度は目に光が戻ってた?


 人間になっているって事?


 五十嵐君が、私達が来た道を親指で差している。


 逃げろって事?


 私だけ?


 ······はい! 逃げます!


 だって怖いもん! 私いたいけな17歳JKだもん!


「あ、逃がさねぇ──って、なんであの女ゾンビ走れるんだ!? とにかく逃がさねぇ! 仲間をやりやがった奴を逃がすかよ!」


 五十嵐君本当にこれで良いんだよね?


 まさか囮にされたとかじゃないよね?


 私は必死に山沿いの市道を目指して、その場から逃げ出した。


 ゾンビか人間かもわからない五十嵐君を信じて······。

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