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神現る!

 割れたガラスや壊されたドア、道端に転がる死屍累々。


 その死体が腐る事によって発生するガスで腹が膨れあがり、穴という穴から腐敗汁が漏れ出てて辺り一面を硫黄のような匂いと、飼っていたザリガニやカニの世話をしないで、放置したような匂いが充満している。


 最初こそ吐き気を催したが、数日もあれば慣れた。


 死体にも匂いにも。


 ゾンビどもも数がいたら怖いが、動きがのろいから走って距離を開ければ簡単に逃げ切れるし、1~2体程度だったら十分倒せる。


 それよりも一番気を付けないといけないのが野盗化した不良やらなんやらのアウトロー連中、人殺しや拷問が好きないかれた奴ら、この事態を神がくれた恵みとばかりに狂喜している奴ら。


 社会の底辺と言われていた非正規連中は当初手当たり次第に女を襲い、商店やデパートを襲って回っていた。


 こういう事態になって一番最初に被害に遭ったのは、若い女の子達だった。


 年齢関係なく男という男が片っ端から狙うのだ。


 もちろん全ての男がそうだったわけじゃない。


 中には守っていた男連中もいたが、性欲の強い男は野性味が強い、つまり喧嘩···争いに長けていた。


 皮肉なもので、理性や常識のある人間の方がこういう世界では弱いのだ。


 チンパンジーや日本猿に真っ向勝負しても人間は"力とスピード"じゃ勝てないのと同じ理屈だ。


 そうして理性ある男達は駆逐されていき、女の子達は慰みものにされたり奴隷にされたりしていった。


 今じゃ強い男に媚びる事が女の生き延びる方法になり、この国の文明は3週間で崩壊した。


 神は死んだのだ。


 だから、私がこの国の新しい神になる!


 みんなを救う救世主に!


 ────────


「皆さん! この国の八百万(やおよろず)の神々は死にました! 神の与えた試練? この事態を与えるのが神ですか? そんな神がいるわけがない!」


 "そうだ! そんな神なんかいらない!"


 "試練なんて都合の良い事を言って苦しみや悲しみを与えてきた以前の神々達はまやかしだ!"


 "神は死んだ!"


 "神は死んだ!"


 "神は死んだ!"


 "新しい世界には、新しい神を!"


 "じゃあ、新しい世界にふさわしい神は誰だ!?"


 "我々を指導し、導いてくれた神宮寺様!"


 "そうだ! 我々が今安心して暮らせているのは神宮寺(じんぐうじ)様あってこそだ!"



 "神宮寺ぃ! 神宮寺ぃ! 神宮寺ぃ! 神宮寺ぃ!"




 ──くっくっくっ、はーっーはっはっー!!


 これが笑わずにいられるか?


 ついこの間まで私は一人で行くあてもなくさまよっていたんだぞ?


 それが今や神扱いだ。


 ──この地域に来た時住民どもは、略奪の限りを尽くされ老若男女関係なく疲弊していた。


 そこでまず自警団を作った。


 それからはこの地域に続く道という道に2m以上の高い鉄柵を作らせた。


 周りに鹿や猪用の罠も仕掛け、鳴子も仕掛け警備力を上げた。 山に囲まれていたこの地域は元々獣害対策に長けていたからそれをそのまま応用させただけだ。


 次は見張り塔になりそうな3階建ての住宅に猟経験のある佐木を起用──猟銃も所持していたのが決め手だ──見張りは日中だけなので快く引き受けてくれた。


 次に犬という犬を放し飼いにさせ、番犬に。


 戦闘要員には基本18歳~50歳前の男を。


 18歳~30歳の男は戦闘、外の世界からの物資の調達、女の拉致専門。


 31歳~50歳の男は戦闘員や農業、建築を担当。


 それ以外の男女は農業専門。


 それによってこの地域は劇的に変わった。


 そして男達にはさらった女を与える。


 男達は満たされ、忠誠心は上がるし人口を増やす事にも繋がるから女は本当に使い道がたくさんある。


「よーし! みんな! 静かに! 静かにー!」


 ピタッと歓声は止まり、この地域の住民は完全に私の物だ。


「みんなも知ってる通り、この世界は終わってしまった! 平穏だったあの日常に戻るかわかならない! 正直この地域は狭い! 数は力だ! 人口を増やす! さらった女も増えてきている、赤ん坊も増える、だから私はそろそろ領土を広げる為に東に侵攻しようと思う! みんなの意見を聞きたい! 否定的な意見なども聞くから各々何でも言ってくれ!」


「神宮寺様のお考えに僕は賛同します!」


「人口は確かに増やさなければ、数で攻めてくる集団が現れた時に負けてしまう! そうなったら我々はまた略奪されるだけの存在になってしまうから私も賛成だ!」


「そうだ! 弱ければ奪われる! 俺の彼女もさらわれた!」


「俺の嫁もだ!」


 人間を煽るには憎しみと恐怖を刺激してやれば良い。


 本当に単純だ。


 その時「あ、すいません。」と佐藤というじいさんが声をかけてきた。


 なんだ? 反対意見か? この場で?


「ん? どうした佐藤さん。」


「いえ、侵攻するなら西に向かえばダムがありますし、農村も何個かあり若者も少ないからそちらに向かえばよろしいのでは? と思いまして。」


 ──西か、西には侵攻させるわけにはいかないんだよ。


「いや、今必要なのは物資と人だ。無駄飯食ら···おっと失礼、年寄りは戦闘員にもならないし赤ん坊を孕めない。今は年寄りの数を増やしたくないんだ。」


「なるほど。確かに年寄りばかり増えても戦力にはならないですもんね。」


 その年寄りも()()()として必要になるが、今じゃない。


「では、東に侵攻するにあたり精鋭部隊─10人─を偵察&物資調達、拉致に向かわせる! 男は殺せ! 女はさらえ!」


 おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!


 さぁ! 新生神の救いを人間に与える行軍の開始だ!

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