8話 魔剣士、新しい戦闘スタイルを生み出す。
初感想ありがとうございます!
エアリスが俺を拾って一年が過ぎた。
最近じゃ給仕だけじゃなく、剣術や魔法まで叩き込まれている。
「ふっ! らぁっ!」
「クロトちゃん、何でちゅかそのへなへなした剣筋は! ほーれこれでもくらぇい!」
ベシィッ!
「痛ぇぞクソババア! 馬鹿にすんじゃねぇ!」
「そうそれ、いい打ち込み!」
「なんつーババアだ……」
俺の事をやたらとバカにしてくるこのババアは、元Sランク冒険者のフィオネ・アクベンス。
見た目は若い。
だがこのババアは身体の一部、もしくは全身を竜に変える事が出来る竜族だ。
竜族は10歳〜30歳の間で成長が止まり、そこから何千年と生きる長寿な種族。
見た目は20歳位だが、中身は千歳を超えるババアである。
「【火の弾丸】!」
「そーんな安直な玉はあたりませーん♪」
「クソババアめ……!」
執ジジイ曰く──
「お嬢様のお付きとなれば護衛を兼ねる存在、ある程度の戦闘能力はあった方が良いでしょう。私の知り合いの元Sランク冒険者を呼んでおきましたので、今日からはその方に鍛えてもらってくださいな」
だとよ。
それで現れたのがフィオネのババアだ。
冒険者時代は【竜帝】とかいう大層な二つ名まで付けられていたらしいが、今のババアからはそんな要素が一つも感じられない。
如何せん性格がな……
ただ腕が立つのは事実だ。
こいつに鍛えられてからというもの、自分で軽く触っていた戦闘の技術が格段に上がった。
「ほーれほーれ、おしーりペーンペンww」
「クソが!」
あまりにもムカついた俺は、こいつを倒すために編み出した必殺技を披露する。
「【付与:風刃 】!」
剣に風を纏わせるオリジナル技──風刃。
武器に魔法を纏わせるという行為を思いついたのは、魔法の書物やらを手探りで読み漁っている時。
意外と使いやすかったものでな。
以後、鍛えてものにした。
「なんじゃそりゃあ!?」
「ハアッ!」
間合いの外で剣を振る。
剣から放たれた風の刃がババアを襲う。
「うおう!?」
初見の技にも関わらず、サッと避けるババア。
まあ、これくらいでババアを倒せるとは思ってない。
「せいっ、はっ、らぁ!」
間合いを詰めながら、その間も剣を振り続ける。
襲いかかる風の刃に、ババアは防戦一方だ。
(獲った!)
すかさず間合いを詰めた俺は、スキだらけの脇腹に直接横薙ぎを入れる。
だが──
「【竜装・紅玉】」
「なっ!?」
ババアの脇腹に赤い鱗が出現し、俺の剣を阻む。
体表に鱗を出現させ、物理攻撃の衝撃を大きく減らす竜族特有の技──竜装だ。
ババアめ……竜装を出せば始めから風の刃なんざ受けられただろうに、わざと誘ってやがったな。
状況は一転、スキだらけなのは俺だ。
「ぬはは! そーれ!」
そのスキをこのババアが見逃すはずがない。
剣が振り下ろされる。
が──
「うぁらぁ!」
「わーお……」
身体を強引に捻り、剣を回避。
すかさず距離を取り、ババアの間合いから離れる。
「凄いよクロト! 魔法を剣に付与するなんて考えもしなかった」
「それで意表を突いたつもりだったんだがな……あんたはすぐに対応しちまったじゃねぇか」
「ぬはは……ま、慣れってやつだね」
そりゃ数千年も戦ってりゃ勝負の駆け引きもお手の物か。
「良いものを見せてもらったお礼に、こっちも面白い事をしてあげよう!」
「なんだ──」
嫌な予感がし、防御の構えを取って一歩下がる俺。
だが──
「【跳躍の罠】」
「ぐうっ!?」
下がったのが逆に良くなかった。
俺が下がった場所には横向きに配置された罠魔法があり、俺の身体が物凄い勢いでババアの元に飛ばされる。
「ほい、自爆乙〜」
「クソが!」
ババアは剣前に突き出したまま笑ってやがる。
突き出した先には、勢いが止まらない俺。
このままだと正面から剣に突っ込む事になるが、俺にはそれを避ける術が無い。
「ぐふっ……」
命中、試合終了だ。
結局、全部ババアの手の平の上で踊っていた訳だ。
今回もなす術なく終わっちまった。
そう思ったが──
「いや、クロト凄かったよ!」
「ホホホ、そうですな。これならお嬢様のお付きを任せても良さそうです」
ババアと執ジジイには好評の様だ。
少しは強くなれたのかもしれない。
魔剣士らしさが出てきましたね。