36話 魔剣士、追う。
「ふぅ……」
マルコを魔力で強化した麻縄で縛り終えた俺は、エアリスと事について話す。
「本日も宿代は半額にさせて頂きます!」
「やったぜぇ!」「こりゃマルコに感謝だな!」
なんて事をアルベルトが客に話していた。
そして──
「昨日の君がエアリスだったのにゃ!?」
猫が俺達の会話に割り込んでくる。
「昨日はありがとうございます。そうです、私がエアリス・アーデンベルクちゃんです。エアリスって呼んでね」
「改めてよろしくにゃ、エアリスちゃん。私はフェルト、フェルトって読んでほしいのにゃ!」
「よろしくお願いします、フェルトさん!」
「おい」
一段落ついたところで、俺も会話に割り込み返す。
「事情はどのくらい把握している?」
「大体は。でも情報に齟齬があるといけないし、一応クロトの口から聞かせて?」
「ああ」
エアリスに一連の事情を話す。
「話してもらっておいてよかったよ。マルコが強くなってたとか、音を聞いただけじゃ分からなかったし」
「私は見ていたけど全く気付かなかったのにゃ……」
「それはお前がド素人だからだ」
「にゃんだとー! これでも私はB級冒険者の資格を持ってるのにゃ!」
「まあまあ……二人共落ち着いてって」
「キシャー!」と威嚇してくる猫。
(……さっき言っていたはずだが、名前忘れたな)
まあ興味も無いし、猫で十分か。
そんな事を思っている間にも──
「気になる点がいくつかあるから、整理する為にも書き出しておくね」
近くのテーブルを使い、気になる点をメモしていくエアリス。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
①マルコ「エアリス〜エアリス〜」
②クロトを見て襲い掛かる。
③昨日よりも数段腕を上げていた。
④メルさんにはほとんど見向きもしない。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「こんな感じ?」
「だろうな」
「支離滅裂にゃ……」
もはや昨日までとは別人だ。
後でマルコから直接問いただすつもりだが、嘘を言わないとは限らない。
こうして持っている情報から考えておく事も重要だ。
「私達の名前をマルコ達は知らなかったはずなんだよね……」
「そもそもマルコの狙いは何だったんだろうな……?」
分からない事が多過ぎる。
「一つずつ考えていくか」
「うん、それしかなさそうだね」
そうして、考えを深めようとしていた時だった。
「……にゃ? 臭いのにゃ! 食べ物が腐ったみたいな匂いがするのにゃ!」
「腐っ──っ!?」
その正体に察しがつき、慌ててその方向を向く。
「強化麻縄だぞクソがっ!」
そこにはマルコを縛っていた強化麻縄が、燃やされてあるだけだった。
魔力で強化された物は、魔法や物理攻撃に耐性を持ち、威力を軽減出来る。
そして同時に、燃やされる時に独特の匂いを発するのも特徴だ。
(ある程度の魔力を持った奴でも燃やせない、強めの強化を施したはずだ……)
いや、考えている場合は無い。
だが──
「あわわ、燃え広がるのにゃ!?」
マルコの燃やした麻縄から、木造の金獅子亭に火があっという間に広がる。
(クソ……何処から対処すりゃいいんだ)
考えていると──
「クロト! 火は私が対処するから、クロトはマルコをお願い!」
迷う俺にエアリスからの指示が飛んできた。
「……承知!」
その指示に俺は一旦冷静になり、玄関口を飛び出して逃げたマルコを追った。





