表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/48

4話 魔剣士、切れ者だった。

今回からクロト視点になります。


 AnotherView:Kuroto




「黒魔術師のレティーナです。よろしくね♪」


 正直に言おう。

 この女を突然連れてきた時から、俺はクリスの正気を疑っていた。


 以前のクリスは今の仲間を何より大事にし、新しく仲間を加入させる時も、必ず今の仲間に確認をとってから加入させていた。

 事実、ヴァルハルトとアレンがそうだった。


「待ってお兄ちゃん、突然過ぎるよ。私達に相談してくれても……」


 エアリスがこう切り出してくれなければ、俺から話していただろう。


「ああ、エアリスの気持ちも尤もだ。だからウォルター周辺に出る魔物と、レティーナを交えて戦ってみよう。それでうまく行かなければこの話は無かったことにする」


 だが勇者パーティーである俺達にとって、何より大事なのは馴れ合いではない。

 魔王を倒すという目的だ。

 その目的の為にこの女がいて、戦闘が上手く行くなら俺に異論は無かった。




 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 その次の日──


 この日から、俺は女を警戒の目で見始めた。


「ヴァルハルトさん♪」


 クリスだけじゃなく、女の加入に懐疑的だったヴァルハルトまでもが、女にべったりくっつかれても抵抗しなくなっていた。


 確かにヴァルハルトは戦士らしく女好きだったが、命を預ける仲間となれば話は別だ。

 特にヴァルハルトは、その辺りの線引きはしっかりしていたからな。


 その様子を見て、俺達が怪しまないはずがない。




 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 その日の夕方──


 パーティーの自由行動中に、俺はパーティーの頭脳であるアレンをウォルターのレストランに呼び出し、あの女が来てからの違和感について相談した。

 

「君もやっぱりそう思うかい?」


 同じ違和感をアレンも感じていたらしく、それから少し相談し、夜はお開きにした。




 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 そしてその日の夜──


「……何をしている?」


 就寝していた俺だが、気配を感じて目を開ける。


 そこには──


「クロトさん……? ん……」


 あの女がいた。

 女は驚いた様に目を開くが、そのまま真っ直ぐに顔を下ろし、俺の唇と女の唇をくっつけようとしてくる。

 俺はそれをすかさず回避し、女を蹴り飛ばす。


「痛っ、ちょっとぉ、何するのよぉ?」


 胸元を大きく開いた服が目に入るが、俺にとって、そんな脂肪の塊を見た所で何とも思わない。

 他の男はこれの何がいいのだか、戦闘を考えれば動きにくくて邪魔なだけだろう。


 エアリスの方がよっぽど実戦的で魅力的だ。


「悪いが俺には彼女がいるんでな。そういうのは他の奴としてくれ」


 女は媚びたような視線を向けてきたが、無視してテントの外へ追い出した。


「何なんだまったく……」




 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 次の変化は明後日の朝──


「アレンさん♪」

「……マジか」


 とうとうアレンまでもが女にベタベタされ始めた。


 ここまで来ると戦力になるならない以前の問題になる。

 警戒を示していたアレンまでこうなったとなると、あの女が確実に何かをしたと考えるべきだ。


 となると一昨日俺の寝床に侵入したのは、俺に()()を仕掛けようとしたと見るべきか。

 まあおそらくだが、俺の寝床に侵入した際の格好を見る限り()()()()()なのだろう。

 身体の関係を持った男女が精神的に切り離しにくくなるのは、俺もエアリスで実感している。


 それに一般的に見て、この女の外見は男に好印象を与えるだろつ。

 アレン達にそういう経験があったと言う話も聞いてないしな。

 慣れてなきゃこうなるのかもしれん。


 もし俺の予想が全て合っているとするなら、かなり問題だ。

 パーティー内での男女トラブルは、パーティー崩壊の原因になりやすい。


 その日は一日中解決策を考え続けたが、結局いい案は思い浮かばなかった。

 寝て起きたらいい案が思い付くかも、という淡い希望を胸に、その日は床へついた。




 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




 そして次の日の早朝──


 朝起きてもいい案は浮かばず、頭を整理する為にも素振りをしようと外に出ることにした。


 そういえば、この日最後の夜番はエアリスとあの女だったか。

 あの女きっての願いで、クリスの順番と変えたんだったな。


「!?」


 ──それを思い出した時、俺はとてつもなく嫌な予感を覚えた。

 

「クソ……何で俺は警戒しなかったんだ! 同性だからって問題無い? んな訳あるか……!」


 俺は素振り用の木刀ではなく、本物の剣を携えて外に出た。

 

切れ者魔剣士。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ