30話 白魔導士、出る必要無かった。
「お客さん!? 何やってるんですか、戻ってください!」
私に気付き、マルコとアルベルトさんの間に入るのを止めようとするメルさん。
いや……もふもふを馬鹿にされて止まれるはずがない!
けど──
「何だこの貧乳は!? ちっぱいは引っ込んでろ!」
「(#^ω^)」
あー……粛清理由追加。
君のような勘の悪いガキは嫌いだよ。
それを私が気にしてないと思うかい?
ははは、お仕置きの時間だよ。
「(#*´ω`*)」
私の右手に、魔力総量の10%を込める。
「あの貧乳……何かやばいぞ!? お前ら! まずはあの貧乳からやれ!」
私の10%は相対魔力総量200──一般人二人分の魔力だからねぇ。
こんなの食らったらひとたまりもないぞ♪
でもここは室内。
普通の攻撃魔法を使ったら、アルベルトさんや他のお客さん達に迷惑を掛けてしまう。
つまり、周囲に被害が出ない魔法──闇魔法を使えばいい。
勿論闇魔法の中には周囲に影響を及ぼすものもあるけど、闇魔法の基本性質は弱体化。
どれくらいの弱化効果があるかなぁ……?
麻痺効果で試してあげよう!
早速魔法を放とうとすると──
「お客さん。従業員はまだいいでしょう。ですが──」
アルベルトさんが私の前に立ち、マルコの兵士を──
「他のお客さんに手を出す奴はうちには入れねぇよ!」
「ひでぶぅぅぅ!!!???」
殴り飛ばした。
あーあ……口調も素に戻ってるし、こりゃ完全に怒ってますわ。
まあ私達に手を出そうとした事もそうだけど、多分それは建前。
獣人全体と自分の娘があんな事言われたらね……怒るのも当然だと思う。
そして、改めて実感した。
アルベルトさんS級冒険者だったよね。
こりゃ私達がお仕置きする必要も無さそうですわ。
にしてもとんでもないパワー……流石獣人さんだね。
素手で殴って10m近く離れた壁際までふっ飛ばすってどんだけよ……
「お、オーナー!? 何もそこまでしなくても──」
「いや……一度ならともかく、こいつらは何度も何度もここに来て、同じような事をした。だからこいつらの性根を叩き直す。相手が人間だからって、獣人がいつまでも抵抗しないと思ってんじゃねぇぞ」
私達もアルベルトさんの行為を止めない。
もふもふへの差別とか、言葉だけで万死に値するからね。
私の品乳をdisった事も許せぬ。
あ、でも──
「うるせぇぇぇえええ!!!」
ここでアルベルトさんに向かったのは、一貫性があって評価できるかも。
こういう時、日和って強い方に謙るが普通の貴族だからね。
それよりは私好きかな。
──まあ、万死に変わりはないけどね。
「ひでぶぅぅぅ!!!???」
案の定、アルベルトさんに殴られて吹っ飛ぶマルコ。
「…………うわー」
マルコ、きりもみ回転しながら壁に突き刺さったけど大丈夫?
生きてるよね?
──ピクピク。
あ、生きてるね。
もふもふを貶した罪をそこで反省するが良い。
そう思ってたけど──
「営業の邪魔だ、早く家に帰れ」
アルベルトさんは、壁に突き刺さったマルコとへたり込んでいた兵士を、扉の外に放り投げてしまう。
……餌と間違えないよう、ハクに言っておかないとね。
まあハク頭良いし、多分大丈夫だとは思うけど。
あ、マルコの顔面が血塗れで良い子は見ないでね状態だったので回復魔法を掛けておいた。
アルベルトパンチ……恐るべし。
すると──
「ふぅ……お騒がせしました。本日もお泊まり頂けた場合、宿泊料金は半額にさせて頂きますのでどうかご容赦下さい」
「やったのにゃ!」
何とびっくり、今の騒ぎで今日の宿泊料が安くなった。
まあでも、これは口止め料も兼ねてると思う。
今の話が街に出回ったら、お客さんが来なくなっちゃうからね。
それに、後からアルベルトさんに聞いた話によると──
『確かに半額にはしたが、後でヴェルドさんに迷惑料の請求をするからな。寧ろいつもより+になるんじゃねぇか?』
なんて平然と言ってた。
うっひゃー鬼畜、流石商売人……お金の稼ぎ方に慣れを感じるよ。
なるほど……さっきの半額は口止め料だけじゃなくて、お客さんにマルコが暴走した事の証言をしてもらう為でもあった訳だね。
しかも──
『あれ、ポスター? 応急処置ですか?』
騒動によって傷付いた壁をすぐに修繕するのではなく、ポスターや絵を貼り付けて誤魔化すアルベルトさん。
でも──
『それもあるが、これも証拠を残してヴェルドさんから受け取る迷惑料を増やす為だ。現場の証拠が残っている方が、当然その時の状況も鮮明になる。マルコ達が嘘の報告をしないとも限らないしな』
それを聞いて、私は確信した。
(マルコ……お前アルベルトさんを敵にしちまったな♪ )
徹底的すぎるオーナー。
絶対敵に回したくないですね……





