27話 『封印者に復讐を』
裏道を歩き、自然を装い視線に接近する事数分──
(途端に人の気配が消えたな。それだけじゃない、あの気持ち悪い視線も消えた)
再び嫌な予感がする。
視線も消えた事だし、俺はこの場で剣を抜き、【風刃】を付与しておく。
それから進む事数分──
「二人きり、だね……元奴隷のクロト」
(……女?)
片目を黒髪で隠し、後ろにもその髪を長く伸した女が、俺の進行方向に立っている。
翡翠に輝く瞳の色が印象的だ。
そして──
(何故、俺の過去を知っている?)
俺の過去を知っているのはエアリスの屋敷の奴らと、暫定的ではあるがアーデンベルク領の領民だけだ。
あとは奴隷商とその娘位だが、あいつらは人を番号で呼ぶようなクズだ。
俺の事など微塵も覚えちゃいねぇだろう。
こいつへの警戒レベルを引き上げ、俺は剣を構える。
「俺を見ていたのはお前か……?」
「クロトを見ていたのは私だけど私じゃないよ」
「どういう意味だ……?」
「あはははは」
酷く無機質な笑い。
気色が悪い。
だが、何故か──
(俺はこの女と、何処かで出会った事がある? それもかなり親しい立場として)
不思議な親近感が湧く。
「やっと、あの女と離れたね」
(あの女……エアリスの事か? いや、それ以前にこいつは何だ……? 何を目的に俺の前に立つ……?)
考えていると──
「悲しいなぁ……クロトが私をそんな目で見るようになって」
「な──」
次に女の声が聞こえたのは俺の目の前。
(動きがまるで見えなかった……)
五感が強化された上でこれだ。
そして、近付いた事で分かった。
──この女、やべぇ。
前の勇者パーティー全員で掛かろうが、まともな抵抗も出来ずに負けるだろう。
魔王軍四天王のロキよりよっぽど強いと感じる。
だが──
「あはははは」
女の声色や視線に、危険なものは感じない。
俺に対する敵意は無いようだ。
「お前は、何だ……?」
「あは、あはははは」
次にその声が聞こえたのは真後ろ。
「シアエガ」
「は……?」
「シアエガ、それが私の名前」
また正面に現れる女──シアエガ。
「じゃあ、私の目的はもう達成したからもう帰るね。クロトは【シアエガ】の視線に気付くって分かっただけで私の収穫だから。やっぱりクロトは……あはははは、あはははは!」
この女が何をしたかったのかは全く分からないが、シアエガ本人は満足したようだ。
「……クロトにアドバイスをあげるよ。この世界の【支配者】は五体の魔物だ。そして、その魔物達を創り出したのは人間。私達を封印する為に創ったんだよ、後先も考えずにね。そんな【支配者】が殺された時、次の【支配者】になるのは人間の王じゃない。私達【シアエガ】だ」
「…………何を、言っている?」
『私達【シアエガ】は、再びこの世界の【支配者】になる。勿論私も……そして──』
そこで、シアエガはにんまりと笑い──
「【シアエガ】もね」
「…………」
そう言った。
全く何を言っているのかは分からない。
ただ相変わらず、シアエガに抱く感情は親近感だけだ。
「じゃあまたね。『封印者に復讐を』」
シアエガが俺に背を向けた瞬間──
(人の気配が……戻ってきた)
あの気持ち悪い視線も無くなっている。
「……帰るか」
俺は金獅子亭への道を歩きながら、シアエガの話について考える。
「殆どは何を言ってんのかすら分からんかったが──」
──『魔物達を創り出したのは人間』
──『【シアエガ】もね』
「……まさかな」
かろうじて分かった単語の羅列に不安を覚える。
だが、俺は何にせよ──
「エアリスに付き従うだけだ」
Kuroto'sview end
1章のキャラ紹介をもう一度見てみると面白いかもしれません。





