2話 白魔導士、不死身だけど幼くなってた。
と、思うじゃん?
「ぷはー!!」
私は何とか地面に這い上がり、呼吸を落ち着かせていた。
「ぜぇ……ぜぇ……」
危ない危ない。
レティーナ……いや、ロキの奴、全身麻痺させて川に叩き込むとか、鬼畜の所業だよホントに。
本気で死ぬかと思った。
というか死んだ。
私の身体はそんなに頑丈に出来てないからね。
元の魔力がどうとかで魔法攻撃に関しては耐性があるけど、私にはお兄ちゃん達みたいな筋力は無い。
それこそマジックボアの突進をもろに受けたりしたら死にかねない。
だからこそ開発した魔法なんだけど──
「【自然再生】の初めての発動が、まさか裏切りになるとはね……」
【自然再生】は私オリジナルの魔法で、死亡時に自身の身体を三年前の状態に戻すとんでもない魔法だ。
本当なら一週間前とか一年前とか、自在に戻る状態を変えたかったんだけど、どうしてもそれは駄目だった。
戻る時間は三年固定。
流石に自分が死んで魔法が成功してるか確認する訳にもいかないから、魔物に掛けて実験しまくった。
そして実験する事300回──遂にこの魔法は成功に至った。
ちなみに【自動再生】の存在は、私の実験を手伝ってくれたクロトしか知らない。
みんなに公にしないのは理由がある。
それは、一人にしかこの魔法を掛けられないから。
誰に【自動再生】を使うかで、仲の良い勇者パーティーに亀裂が走ったら嫌だからね。
「まずはお兄ちゃん達にレティーナの事を知らせないと……」
呼吸が落ち着いてきた所で、一旦辺りを見回す。
景色は変わらず森の中だし、川にぶち込まれてからそんなに時間は経ってないはず。
今ならお兄ちゃん達の元に帰れるかもしれない。
そして念の為、【自動再生】を再度自分に掛け、光魔法を使って夜の森を歩く。
光は魔物を引き寄せるけど、それでも何も見えないよりはマシだ。
それよりも──
「何かいつもより視点が低い気がするんだけど……」
そこで思い出した。
身体を三年前に戻す代償が、【自動再生】にある事を。
何となく嫌な予感がして、自分の身体を見下ろしてみる。
すると──
「胸が……!?」
仄かに、微かに、朧げで、でも確かに存在していた私の胸が無い!
「なんでだよぉぉ!!!!」
私は幼くなっていた。
僅かな胸が無くなったことに発狂した。
私の声で魔物が集まってきたけど、そんなものはどうでもいい。
「グルルルル……ガウッ!」
「うるせえ死ねぇぇぇ!!!」
私の胸を砕いたレティーナへの怒りを、集まってきたシルバーウルフに容赦無くぶつけてやった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
その結果──
「クゥン……」
「ご、ごめんね?」
シルバーウルフは私に怯えてしまった。
考え直したら、この頃の私は豊乳体操をしてなかったし、今からやり続ければ昔の私よりも胸が大きくなるかもしれない。
そう考えてたら、何だか冷静になってきた。
何となく申し訳ない気分になったので、シルバーウルフに回復魔法を掛けてあげる。
本来ならこんな事をしたら襲われるけど、ここまで私に怯えていればそんな事はしないでしょ。
そしたら──
「クゥン♪」
「……え?」
何 故 か 懐 い た。
だけどシルバーウルフは魔物。
私は勇者パーティーの一員だし、一緒に行く訳には──
「クゥン……」
項垂れるシルバーウルフ。
……………………
…………
……
「ええい一緒について来い!」
「クゥン♪」
シルバーウルフはもふもふの毛で覆われた頭を、私に擦りつけてくる。
くぅ、魔物のくせしてあざとい奴め!
ただ……ちょっとくちゃいね。
「【水生成】!」
「ガウゥゥ!!」
強引に水を浴びさせたけど、シルバーウルフは気持ち良さそうにしていた。
お前ホントに魔物か?
シルバーウルフを魔法で乾かした後、このシルバーウルフにハクと名付け、私はハクと一緒に、お兄ちゃん達の元へ向かった。
不死身×不老を兼ね備えたチート魔法。
私も欲しいです!