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蔓延る宵闇。滴る静寂。薄く埃がある窓から白んだ光が差し込む清き真白の間。そこには一人男がいた。男の黒衣は宵闇に溶け、その顔の双眸には僅かな光が宿っているのみ。いつ闇の内にその身体を横たえるともしれぬ彼の表情は憂いに満ちている。
「ぎぃ、」
清き真白の間と外とを繋ぐ重厚な扉が開き、そこから一人の少女が姿を現す。幼さをたっぷりと残した顔に、柔らかなはちみつ色を揺蕩わせる彼女はまごうことなき梟の預言者。幾年月を重ねても彼女の様相は変わっておらず、梟の預言者は男を見て嗤う。
「あ、貴女は……」
「久しぶりねぇ」
ぎぃ、と再び音をたてて扉を閉めた少女は一歩ずつ男の元へと歩を進める。そして男の眼前に立った彼女は緩やかな笑みを浮かべて彼の手を掴んだ。
「ねぇ、唐突で悪いとは思うのだけれど貴方にしかできないお願いをしたいの」
「私にしか、できない……?」
「そう。貴方にしかできないお願いよ。受けてくれる?」
梟の預言者の愛らしいぽってりとした薄紅色の唇が一つの名を囁けば、男の口角は歪に上がる。
「嗚呼、嗚呼。やはり我らが王は全てにおいて正しい私の助けを求めておられるのですね」




