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1000字以内の感覚で書いていくので次作もお願いします。
蝉のポップ・ソングから蟋蟀のジャズ・ソングに代わり切り、乾いた風に体を震わせ捲っていた袖を甲まで伸ばし風の遮るものが無いバス停で同じ大学の学生であろう生徒が数人いて皆下を向きながら時間に来るだろう大学行きのバスを待っている。
おはよー、と聴き馴た甲高い声が鼓膜に響き、声のする方に顔を向け朝だとは思えないテンションの万理華がいた。
万理華は最後尾に並びそれを見てまた下を向く。万理華はゼミのメンバーの一人で実家がこのバス停の近くでゼミ以外でもたまに喋る関係である。
バスがいつも通り2分遅れで到着し電子音と共に自動扉が開きステップを上がり空いている二人席の窓側に腰掛けリュックを横に置き外を見た。
太腿にずしりと重たい何かが乗った。何かと思い下を向くと横に置いたリュックが乗っており、置いてあった横を見ると紺色のスカートに花柄のブラウスを着た万理華が座っていた。
「カバンじゃまー」
「いっつもバス2、3分遅れるよねー」そう話しかけてき、そうだねー、と窓を見ながら返事を返した。
何度か話しかけて来たが素っ気なく返事をしたので万理華は話しかけるのを止めスマホを手にし触り始めた。何か調べているのだろうか可愛い、可愛いと呟きながら肩を叩いた。
「勇気はどれ服が可愛いと思う?」
万理華はスマホをこっちへ向け返事を返して欲しそうに目で訴えて来る。
「どれもいいと思うよ」
「ひとつ選んで!」
機嫌が悪そうに言われたので仕方なく
「右上のやつかな」
どの服も同じよに見えたが機嫌を損なわないように返事をし、万理華の顔を見ると満足した表情でスマホを見返した。
外を見ると住宅地はなくなり狭くバスがギリギリ二台通れる坂道を上がっていき大学に近づき、講義が始まってしまうという憂鬱な気分になった。
石陸大学薬学キャンパスへようこその看板が見えこんな山奥に来るやつなんて居ないよ、と思いつつそのまま過ぎていき大学前のロータリーに着きバスが停車しICカードの定期をかざし運転手に軽く会釈をし、バスを降り講義がある棟に移動する。