甲虫の甲は伊達じゃなかった【1000文字】
ある日カナブンが部屋へと侵入しました。
ブブブゥ~ン
あの緑色なのに構造色で角度によって干渉した光を返すため、玉虫色となっているヤツ。
蛍光灯の周りを衛星の如くぐるりぐるりと回りながら上昇し、熱かったのか、落ちてくる。
そしてまた上昇しながら回り出す。
早く出ていってくれないかな。
最初はそんな感じだった。
掃除をしてないことが丸わかりの傘の上。そこで動き回れば埃が落ちてくる。
や、め、て~
そんな見えないとこは掃除しないんだよー。いや見えるところもだけど……
だが家にはその尻尾で掃除してくれるものがいる! (一番の埃の原因ともいう)
まあ、それは置いといてまずはブンブン五月蠅いヤツだ。
段ボールの板で回っているときに叩いてやる。
軌道が分かりやすくて狙いやすい。
ハエでさえ、叩きつければ気絶するのだ。
空中のハエはなかなか叩けないが、通るところを予想して来たところをにカウンター気味に叩くとさすがに自分の速度で逃げられない。
ある時期家で異常繁殖されて無駄に身に付けたこの技術。
繁殖原因はやはり尻尾のやつだ。瞳を丸くして下から見上げて「な~」と言っているやつ。
だがそんな技術の出番もなく、簡単に叩けた。
吹っ飛んだ。
だが気絶しなかった。
また飛び立つだと!
再度叩きつける段ボール板。
落ちて転がるヤツ。
地面に来たのが運の尽きだ。
殺虫剤を喰らえ!
Gですら直接噴霧にてくたばるんだ。
だが、驚いたことにまたしても飛び上がるヤツ。
そして本棚の奥へ。
ガサゴソガサゴソ
音が聞こえる間は、もがき苦しんでいると思うともう飛び回らないということだろう。
やがて力尽きるのを待てばいい。
それから2時間。
うるさかった音が消えた。
平和が戻ったかに見えた。
それは朝方聞こえ始めた。
ガサゴソガサゴソ
本棚の方からだ。
ヤツは生きていた。
仕方なく本の隙間に殺虫剤を大量に噴霧した。
音が激しくなる。
時間が経って、部屋に戻るとまだ音が聞こえる。
侮っていた。ヤツの装甲はGを超える。甲虫の装甲は化け物だ。
もう一度、本の隙間に殺虫剤を大量に噴霧した。
本を取り出すのは流石に重労働だから止めた。
そしてしばらく放置していたら、飛び出してきた。
生きていたのは分かっていた。
うるさかったからだ。
そしてまた蛍光灯の周りを回り始めた。
対策は分かっている。
段ボール板にて叩き落とし、地面に転がす。
ここで今度は腹側に殺虫剤を噴霧!
テーブルの足を登ろうとしていたが、すぐに力尽き、転がった。