病院外
「高岡先生、僕は新井さんに惚れたみたいです。」
良いと思う。医師と患者でも惹かれあうところがあるんだろ。
紀州の紀の字が共通項ね。
亀岡先生…。
僕はこの白い巨塔で教授に上り詰めることは考えてない。そう典紀は亀岡、高岡両教授に告げると、
臨床重視か。だが君はいずれ、教授選に巻き込まれる。と高岡教授。
後日、酔った勢いで有紀にそれを話した。
「典紀さんは教授になりたくない。だが周りは片平教授待望論が巻き起こる。教授のどんなところが嫌いなんですか?」
まるで有紀が彼の担当医のようだ。
「僕は軍隊政治をやりたくないんです。」
それは医療ドラマの見すぎですね。かくいう私も警視の昇進試験を受けろと言われるんですが。
たぶん、典紀さんはとことん聞くだけ聞いて、自分自身のことは後回し。
精神的につらいはずですよね。
じゃあ、有紀さんも…。
そうです。どこかで典紀さんみたいなところはあると思います
私が典紀さんを一人の男性として好きだと言ったらどうします?
すみません。何て言っていいか。
有紀が親身になって聞いてくれる…。彼は感無量のあまり、大号泣だ。
有紀の手が黒いスーツの彼を宥める。
(有紀さんなら、僕は落ち着いていられるし、何より甘えられる…。)
黒いパンツスーツの有紀も彼なら素顔を見せられる。
有紀は梅酒、典紀はビールだ。