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医師の原点
十数年前、当時高校生だった彼は自殺未遂をしてこの病院の救急に搬送された。
「十六歳男性、手首からの出血が激しいです。」
アイツに来てもらうしかないな。青い白衣を着る救急と外科の業務を兼任するとある医師は
のちに彼の指導医となる精神科医を呼び出した。
その精神科医こそ高岡医師だ。
「國村、呼んだか?」
高岡、お前の担当患者さんである片平典紀さんが急患で搬送されてきた。
手首は処置したが、お前の力がどうしても必要だ。
問題はない。だが片平さんは無事なのか?
自殺未遂で搬送だから死んではない。
「國村先生、片平さんが目を。」
救急の國村です。精神科担当医の高岡先生も来てますよ。
「先生、僕はどうしてここに…。」
構いすぎるお母さんから逃げたかったんだと思う。
そうなのか? 高岡
彼は母親の過干渉と言う大きな精神的な傷を抱えている。
俺が彼を診察するきっかけがそれなんだ。
「高岡先生のおっしゃる通りなんです。僕は将来、精神科医を目指してます。」
君は努力で自分と言う人間の価値を構築している
一方で繊細な人間でもある。
高校三年生である彼は医大の進学も決まっている。