FID - 8 「落とし穴」
[02.06.2016]青年の日記
12月3日
今日俺は直径5メートル程の巨大な穴を(ノートに穴が空いている)学校の校庭に掘ってやった。
いつも嫌がらせばかりしてくる教師共への仕返しだ。
深さは2メートルもない位だが、人が一人落ちる分には充分な深さだ。
怪我をしないかどうかが心配だけどな、一応俺にも人の心はある。
俺は落とし穴から30メートル離れた場所にある草むらから少しの間眺める事にする。
...2時間が経過したが人っ子一人通らない、明日も見に来よう。
12月4日
誰も落ちない理由が分かったぞ、恐らくカモフラージュが足りないのだろう。
確かに上から砂をかけただけじゃバレバレだ、30メートル離れた場所から見える程だしな。
と、いうわけで俺は上からかき集めた葉を被せておいた。
逆に目立っている気もしなくないが...良しとしよう。
12月5日
何かがおかしいぞ、何でカモフラージュ用の葉がずれてるんだ?
1メートル近く横に葉がずれている。
俺の他にも仕組んでる奴がいるのか、それとも邪魔しているのか?
戻しておくのも面倒臭いし、そのままにしておこう。
12月6日
やっぱりおかしい...今日は昨日の2、3倍近く葉が横へスライドした。
どういう事なんだろう、まるで掘った穴のほうが動いているような感じだ。
近づいて見てみると穴の深さが6メートル位あるように見えた。
少なくとも以前より深くなっていて、底なんて暗くて見えない程だ。
不思議な事もあるもんだ。
12月7日
今日、俺は今までの人生で最も驚いている。
4日前に掘り、今まで監視を続けてきた落とし穴が当初の100倍近い大きさに拡大していた。
校庭だけじゃなく校舎までをも沈ませていたそれだったが、何故か周囲の人々は気にも留めない。
深さはもう足がすくむ程で、試しに石を投げ込むと30秒後位に巨大な爆発音が轟いた。
恐らく一番下まで物凄い速度で落下したんだろう。
日記はここで終了しており、彼の行方は分かっていない。
尚、彼の掘った落とし穴はその後も拡大を続け、(文字が潰れている)町は完全に穴の底へと沈んだ。
そして半径110キロ程まで広がるとそこで拡大は停止し、次の日にはその穴は完全に消滅していた。
だが失われた町が戻る事はなく、この事件で6248人の死亡が確認された。
恐らく彼もその中の一人なのだろう、と警察は捜査を進めている。
捕捉
過去にも度々このような事例は確認されているようで、町中にポッカリと穴が開いてしまう現象などが5年に1度程のペースで発生しているとの事だ。