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FID - 6 「Uターン禁止」

[05.11.2013]ある男性から傍受した通話音声


(通話開始から34秒経過)

おい!本当なんだって!聞いてくれよ、さっき(雑音により解読不能)があのトンネルに入って行ったまま出てこないんだ。

さっきトンネルの中から物凄く巨大な爆発音が聞こえたもんだから俺が驚いてたらアイツ、見てくるよって言ったまま笑いながら走っていっちまったんだ!

俺が怖さに足を止めてる最中にアイツはどんどん真っ暗なトンネルに入って行っちまったよ!

だから頼む!助けを呼んでくれ!

どれ位の間って...入って行ったのが11時だから、もう3時間近くこのままなんだよ!

(耳を劈くような爆発音、その後50秒の沈黙)

なぁ、俺思ったんだけどさ。

俺もいかなくちゃいけないような気がして来たんだ。

長電話しちまって悪いな、アイツを探してくるよ。

じゃあな。

(終了)



警察の資料[06.2.2013]


当トンネルについて我々は様々な調査及び検証を行ってきた。

そこで得た結果をここに記述する。

まずあの男性が説明していた、「爆発音」とは恐らく約2時間50分おきに発生する地響きのような破裂音を指しているのだろう。

現在までこの音については一切の原因が不明となっており、全国の60を超える研究機関が総力をかけたが何の結果も得る事が出来なかった。

そして、この音については異常な点がもう一つ存在する。

それは「音が引き起こす人間への精神被害」だ。

先程も記述した通り、当トンネルからは2時間50分周期で周囲に爆音が響き渡る。

その際にその場に居合わせた人間の約5割が真面目な表情から一瞬にして嬉々とした表情に変化し、一部はその場で発狂し、また一部はトンネルへと向かって走っていった。

またそれに対し強制的、物理的な方法で静止を図った者は突如反撃され、怪我を負ってしまうという惨事となった。

その2時間50分後にもう一度爆発音が響き渡り、今度はその場の殆どの人間が激しく唸り声をあげ、何かに憑依されたかのようにトンネルへと向かって歩き出した。

上層部はすぐに捜査を中断させ、半径5キロ圏内から離れるよう指示。

これ以上の被害者の増加は抑えられた。

また、周囲の住人も同じく半径5キロ圏内から退去させられた。


5日と4時間後、我々は当トンネルの内部を捜査するよう指令を受けた。

完全な防音加工を施した安全な設備にて待機し、そこで3班に別れる。

そして数分後、我々は内部へと進入した。

10メートルおきに配備されていたはずの外灯は全て電気供給がストップしていたようで真っ暗だった。

懐中電灯で何とか辺りを照らし、奥へと進んで行く。

内部は6月にも関らず熱帯雨林のように暑く、身体は汗でビショビショになった。

そして前進し続けている内に、我々はある不審点を発見した。

当トンネルは入り口から出口まで約50メートル弱のはずだ。

それなのに進入後歩き続け1時間が経過したにも関らず出口はどこにも見当たらず、人間も誰一人として見当たらなかった。

すると部隊長から引き返すよう命令が入り、我々はやむを得ずUターンし、来た道を戻った。

それからは長い間歩き続けた。

2時間、いや3時間は歩いただろうか?周囲に救助の到着を伝えようとしても返事が帰ってくる事はない。

進入した際はここまでゆっくり歩いて1時間だったというのに、駆け足で走って来た際の倍以上の時間がかかっている。

明らかな異常に我を失いそうになりながらも部隊長に無線で連絡を入れると、そこで私は気を失った。

「お前達!生きていたのか!5ヶ月間もトンネルの中で何をしていたんだ!?」と部隊長は叫んでいたのだから。


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