FID - 5 「転移電子レンジ」
[11.02.2013]内部告発者のメモ
当電子レンジは以前我々の電気会社が製造した最新型の物だ。
あらゆる改良が施され、その度に我々はより多くの方々に使って頂けるよう新しいアイデアを練っていた。
だが先月20日に我々の電子レンジを購入された方から一件の苦情が届いた。
何でも「電子レンジの中に入れ、加熱した物体が取り出した時にはまた違う物体となって出てくる」という事だ。
その方は食べ残した餃子を加熱したらしく、次に取り出した際は何故か何かの動物の肉や皮に変化していた。
すぐに社長は当電子レンジをお買い上げ下さった全員に謝罪をし、危険な電化製品だという事で回収をかけた。
そして約9割の回収に成功し、その内の1割以下の数台が苦情の電話での説明通りの動作を行った。
また、その電子レンジの調査に警察が協力した所、レンジのタイマーをセットし作動させた時点で対象からは15μSv/hの放射能が放出されている事が検知された。
その後はやはり未知の方法で内部の物が転移し、様々な物へと変貌を遂げていった。
それは時に危険な物であり、時に興味を惹く物でもあった。
実験内容の報告 [11.12.2013]
我々は当電子レンジに何が出てくるか、という実験を続けている内に対象は入れる物によって結果が変化する事に気がついた。
コーヒーを入れたコップ → 粘度の高い真っ黒なスライム
から揚げ → 狐の目玉
ポテトフライ → 蛆の湧いた謎の生物の屍
コップ(単体) → 罅割れたティーカップ
ハンバーガー → 変化なし
ハンバーグ(単体) → 変化なし
トマト → 腐敗したケチャップ
マウスの死体 → 変化なし(内部で破裂)
人間の手 → 謎の生物の手と思われる部分
布生地の服 → 千羽鶴
紙コップ → 内部で切り刻まれる
豆腐 → 変化なし(内部で破裂)
肉団子 → 人間の頭部
スナック菓子 → 268匹のダンゴ虫
他にも様々な記録があるが、これらが特に我々が着目した点だ。
恐らくこれ以上の実験は無意味と思われる。
異常と判断された電子レンジのみに付属した取扱説明書[11.05.2013]
(操作説明は破りとられている)
当電子レンジは(読解不能)と地球とを繋ぐ最新のトラベルマシーンです!
特別な操作を必要とせず、いつでも惑星間でのやり取りが出来る夢の時間をお楽しみ下さい!
尚、この取り扱い説明書がいつ作成されたかは不明。