FID - 4 「足を喰らう口」
[11.02.2015]エリック医師の報告
10.29.2015
先月の二十日頃、当病院に一人の幼い子供が救急外来として送り込まれてきた。
その子供は右足首から大量に出血しており、その断面は綺麗に切断されていた。
数十人による緊急治療によりその子は一命を取り止めたが、案の定犯罪疑惑が浮上した。
警察はこれを殺人未遂として捜査し、子供の回復を待った。
数日後子供が回復し退院後、リハビリを終えると警察は捜査ついでにその子供にある頼み事をした。
「部屋にカメラを設置するので君が眠っているところを撮影させてくれないか」と言うものだ。
子供とその保護者は「眠る際は電気を真っ暗にするのでそれは難しいかもしれない」と返す、すると部下はカメラを取り出し、このカメラには赤外線モードが存在する事を説明した。
すると親子はその頼みを快く受け入れ、捜査に協力したらしい。
これではまるで人体実験ではないか、そう思ったがどうやら寝室の外に複数人の警察が待機していたようだ。
その日の夜警察は子供の寝室の隅に上から布を被せた状態でカメラを設置し、録画を開始した。
だが私が思うにこの子供が襲われた理由は足を出して寝る、という癖が悪かったのではないだろうか。
彼の白い肌が暗い部屋の中で目立っていたような...いや、そんな事を考えるのも不毛だ。
深夜2時をまわり、カメラの録画充電が残り30%を切った頃、事件は起きた。
寝室の奥にある窓が勝手に開いたのだ。
鍵もかかっていたし、誰かが周囲にいたという事もない、完全に独りでに開いてしまったのだ。
ゆっくりと開いたためそれに気がつくのには2度3度と見返してからだった。
そして次の異変はそれから正確に20分後に発生した。
「それ」は突如睡眠中の彼の横、何もなかった空間に出現し、カメラの方向を見て微笑んだ。
見た目は犬などの動物に近い人間、といっても分からないかもしれないが、人間と狼のハイブリッドのようなものだ。
身長は2メートル程で、狼に酷似している割に2足歩行で一切の体毛が生えておらず、皮膚は真っ青だった。
そいつは寝ている子供の方向に向きなおすと、布団から出ている足を見て涎を垂らした。
直後そいつは彼の足首を鋭利な刃物のような物で切断し、半透明の袋に詰めた。
異常を察知した警察が部屋に突入すると、あの化け物の姿は忽然と消えており、開いた窓は再び閉じられていた。
子供はその後出血多量で死亡している。