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第2話 火原の実力とは?

『始め!』


その合図で2人は一斉に後ろに少しステップで下がり自分の間合いをとる。


相手の属性も使用する技の数字も分かんねぇ。だが、それは試験のときも同じことだ。

新太は落ち着いていた。

戦術の基礎基本は能力者が通う中学校や高等学校で習うものだ。新太にはそれがきちんと頭に入っていた。


こういうときに最も重要なことは、まずは相手の戦闘スタイルと属性を短時間で正確に見抜くことだ!


『火属性 術式8 〜数多なる炎〜』

新太が術の名前を唱えると同時に、地面に手を叩く。

その瞬間から無数の火柱が地面から湧き上がり、一斉に正面で構える火原の少女へと襲いかかる。


『へぇ、やるじゃん。一桁の数の術式は普遍能力の術式の中でも基本中の基本で二桁や三桁の技に比べて威力も弱いし質も低いわ。でもその一桁の技でこれだけの火柱が出せるなんて少しだけ見直したわ。』

火原の少女の新太に対する態度は根本的には変わってはいないが、少しはその実力を認めたようで、火原の少女の表情が少し変わる。

『でもねぇ、アンタなんか忘れてない?火原の一族の最も得意な属性は当然"火"』

火原の少女が自らの一族を語るその言葉の口調は随分と力強かった。


『火属性 術式 79 〜紅蓮〜』

少女は新太の方へ手を向けてそう唱えると、新太が火原に向けて放った火柱はみるみるうちに少女の掌へと飲まれ、徐々に少女の手に炎が集まっていく。


『げっ!?イキナリ2桁後半の技かよ...しかも素数って...』

新太は少し呆れながらひとりでに呟いた。

『さてと、あの炎どうやって回避しようかな』

新太は少し余裕そうに呟いて、地面に手をついたまま反動をつけて宙へと高くジャンプした。

『あら、油断しすぎじゃない?直撃するわよ?』

『これは油断ってもんじゃねぇ。余裕ってやつだ。』

某明治時代の流浪人が主人公のアニメに出てくる敵キャラのセリフを叫んでみると、『まあ、流浪人も同じ浪人じゃね?』などとまたも余裕そうな発言をする。


『風属性 術式3 〜浮遊〜』

新太は風属性の術式をうまく使い空中に留まる。


『こっちもいい加減行くわよ。』

少女の手には十分な規模の炎が溜まったのか、自らの手にあった炎を全て新太に向けて発射する。


『ヤベェ。幾ら何でも規模でかすぎじゃね?』

そう呟くと、宙に浮く新太は慣れたように後方に風を吹かせて加速して回避してみせる。


『ふう、助かった』

新太は安心したかのようにそう呟いた。

『誰が?』

新太の後ろにはすでに火原の姿があった。

『チッ、もう回り込んでやがったか。』

火原の少女は容赦なく思いっきり新太に対して蹴りを入れる。

その蹴りを受け思いっきり地面に対して投げ出された新太の身体は完全に自由を失っている。

『だから言ったじゃない。油断しすぎだって。』

少女は新太に聞こえるようにそう呟くと、すぐさま彼の方へと素早く加速した。

『大技は計算だったってワケか。』

新太は火原の少女に答えるかのようにそう呟くと、身体の自由を奪われた新太の後ろに回り込んだ少女のパンチを受けた。

『アンタって、見かけ通りホントに頭悪いみたいね。あんな簡単なフェイクに引っかかるなんて。』

再び新太の身体は自由を奪われ宙に放り出される。

またも、火原の少女は加速し新太に追いつき、畳み掛ける。

新太は宙に浮いてタコ殴り状態だ。

何発も何発も火原の少女の攻撃を食らう。


『流石、火原だ。スピード、パワー、戦術、術式どれをとっても一級品だ。どうして今年不合格になったのか不思議なくらいだ。今すぐにでも試験を受けても十分に合格は可能だろう。』

『もう一方の花前の考えも分からんでもないが...うまく行くのかねぇ。』

2人の実技講師である加代は冷静に2人の戦いの経過を観察し論評する。


『うお、すっげぇ〜火原の少女』

『顔もいいしそれでもってあんだけ強ぇのかよ。俺惚れちゃうかも』

『なんだよ、花前全然ダメじゃん』

『しっかりしろよ〜』

『されるがままじゃん』

などと周囲の生徒の様々な感想が2人を包む。


『火原の少女は大技も使えるしスピードもあるし、なかなか強いね。』

その周囲の生徒の内の1人が呟く。

『だよねぇ〜それに比べてあの花前って男全然ダメじゃん。技も一桁ばっかだし、体術だって全然火原の娘に歯が立ってないじゃん。』

隣の女子生徒がそれに相槌を打ちながらそう答える。

隣に立っている少し背の低い銀髪の少年が口を開く。

『もっと、戦いをよく見なよ。全然ダメ。逆だよ』

周囲は彼の言葉の意味を全く飲み込めていない。

『何言ってんだよ?だって見るからに火原が優勢じゃん。』

周囲にいた生徒の1人がそう返す。

『本当にそう見えるの?』

銀髪の少年は周囲にそう問い質すと、諭すように注意を促す。

『2人ばっか見て、全体を見ないからそうなるの!』

周りには彼の言ってることが理解できていないのか、周囲はほぼ全員キョトンとしている。

『まあ、いいよ。見とけば分かるから。それに客観的に観察しているのにその程度のことに気を配れないようなら多分見ても気づかないと思うしねぇ〜』

彼は挑発的にそう言い残して前の方へと移動して言った。

『新太君の術式相当洗練されてるみたいだし』



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