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1章 幸せの落とし穴

内容を変えました。


申し訳ありません。

1


ねぇ、もうちょっとやる気出ないの?



マジカルソングの中心にある最も大きな学校である白蘭学院は5クラスの40人編成である。中等部と一緒になっているから全体でおよそ1200人の生徒が通っていることになる。

有名な進学校で、よくテレビにも取り上げられるこの学校。受験の模試は難しいが入ってしまえば将来は安定する。それに最新の設備も整っているため、受験する人もかなりの数いる。毎年倍率が10倍もあって競争が激しい。

と言えばここにいる俺がすごく頭が良いみたいに見えるがそうでもない。

なぜなら――――

「ルト=アイグレッテ!ルト!!」

「・・・・・はい?」

バンっ

「いて!」

頭を抑えて見上げると丸めた教科書を握り締めた怒りの表情の中年の男が立っていた。最近、学年主任として昇格した50歳。

つまり俺の先生である。

「お前はまたよそ見して・・・・そんなに俺の話がつまらんか。」

「い、いやぁ・・・・・・ちょっとぼーっとしてただけですって!」

「・・・・・・お前、今回頑張らんと卒業できんぞ?」

「・・・・すみません。」

・・・・。こんな俺が頭が良いと誰が思うだろうか。

ここに入れたのは俺が中学に入学したときにまだこの学校がエスカレーター式だったからという簡単な理由だ。その次の年から白蘭学院中等部は高等部に進学ではなく、別の高校に行ってもいいという制度に変わった。

つまりゆとり学年最後の白蘭学園高等部3年は馬鹿でも仕方がないということである。

・・・・我ながら完璧なるいいわけだな。

というわけで俺は今、4時限目の授業中なのだが全然話を聞いていないのだが、それにはいくつか理由があるのだ。

俺は教室の時計を見つめた。授業時間は約50分。あと10分ほどで授業は終わる。今の時間の教科担任であるウラン先生は次が昼休憩だからって早く終わってくれたりする優しい先生ではなく、むしろ休憩がなくなろうがその次の授業があろうが自分が決めた範囲が終わるまできっちり授業をする鬼のような教師である。

俺はこの鬼教師が嫌いだ。

それが一つ目の理由。まぁ、これはあまり関係のない話。

一番の理由はあることで頭がいっぱいだからだ。

そのせいで俺は授業に集中できない。早く終われ、早く終われと、それしかこの授業で考えてない。

だが終わらない。当然だ。時計を見ていたって終わるわけがない。むしろ長く感じる。なぜこう、早く終わって欲しい時にいつも長くなるのだろう。

イライラする。

早く。早くしないと取られてしまう。大げさにいえば今日はこのために学校に来たというのに。

苛立ちが限界にきそうで足が勝手に貧乏ゆすりをし始める。

くそ、早く終われっての。

ウラン・・・・授業時間内に終わらねーと承知しねーぞ。

心の中で毒づいていた時だった。

「ちょ・・・ちょっと!ルト!」

小声で俺を呼ぶ声がした。

後ろを振り向くとショートヘアの女が不機嫌そうな顔をしてこちらを見ていた。

「なんだよ。マリアン。」

「貧乏ゆすり、やめてくれる?なんか目に入って気が散る。」

「あぁ、ごめん。少しイライラしてな、じっとしてられないんだ。」

「それは態度でわかるって・・・・。あとちょっとなんだから我慢しなよ。」「でもよ、こんな授業退屈すぎてちょっとが長くねぇ?」

「そう?結構興味深いでしょ。」

なんという女だ。こんな無駄に長い歴史の話、誰が好きで聞くか。

まぁ学年1位のマリアンならそりゃ難しい話でも簡単に理解できるだろうけどよ。俺にとってはこんなのただの耳障りに過ぎない。

「なぁ、これのどこが面白いんだ?」

「全部面白いじゃん。もっと聞きたいくらいよ。」

「だって神話だぜ?胡散臭いにもほどがある。」

「胡散臭いからこそ面白いんじゃない。神が人間を作ったなんてロマンチックじゃん。」

ロマンチック、ねぇ。

女はそういうのが好きなのだろうか。

「・・・まぁ、そうかもしれないけどな。でも実際そうじゃないんだろ?」

「うん。まぁ、本当のところどうやって人間が生まれたかなんて分かんないんだけどさ。細菌とか微生物が進化してだんだん生物が生まれていっただの、宇宙の中で突然生命が偶然生まれただのいろいろあるけど神様が作ったっていう説よりは現実的よね。」

マリアンはマリン色の髪の毛先をいじりながら淡々を言う。

「ふうん?じゃあさ、魔力っていうのも偶然生まれたものなのか?」

「そうともいえるね。元々、大陸がなんかの弾みで魔力を生み出してそこから生物に魔力が入り込んでさ。人間も大陸から魔力をもらってきたって感じ。」

「でも最初だけだよな?その、大陸から魔力が人間へと流れ込んできたのって。」

「今はもう大陸が完成したから。最初の人間はかなりの量の魔力をもらったみたい。」

「・・・へぇ。なんかよくわかんねぇ話だな。」

「ルトって全然授業聞いてないの?前に言ってたじゃない。」

「あー。もう忘れたんだよ。興味ねーもん。そんな歴史。」

俺はめんどくさそうに言った。

その言葉に嘘はなかったが自分の国の歴史をまるっきり知らないわけでもない。

人間が魔力をもったというのは一部のことだということ。

前に本で読んだことがある。

最初に魔力をもった人間は3人。その3人のおかげで魔法が使える人間がいる。

そしてある一部の人間は魔力を持たないただの人間。

まぁ、つまりそれは俺のことなのだが。

「魔力のない俺には実感の沸かない話だったからな。」

「あ、そうか。そうかもしれないけどさ、もう少し授業に集中した方がいいんじゃないの?テストも近いんだし。」

「めんどくせーよ。俺が好きなのは体育だけだっつーの。この俺が唯一いい成績をとれる科目だからな。」

「それだけとれてもなにもならないでしょ。剣術のテストはひとつであと残り10個あるのに。」

「う・・・・。」

なにも言えない。

俺はマリアンから目を背け、前を向き直す。

完璧な馬鹿丸出しだった。ひとつだけとれて赤点とらずに済むなら最初からこんなに苦労していないしもっとな楽しく学園生活を送っている。授業だってうけなくてもいいだろう。

・・・・それなら学校の意味ねーな。

俺はこの背けられない現実にため息をついた。

ちらっと後ろを見る。

マリアンはせっせとノートをとっている。よほど興味があるのかそれとも気づいてないのかこっちを向いている俺を全く見ない。これのどこが楽しいのか俺には理解できない。

時計に目をやった。もう終わる時間だ。

でもまだウラン先生はペラペラと話している。

・・・くそやろう。終わらねーのかよ。

俺は再び後ろを向く。

「おい、先生の話区切りつきそうか?まだ終わらないけど」

「・・・・ん?なに。・・・!え、あ、いや。」

「長くねぇ?俺、もう耐えらんないわ・・・。なぁ、どう」

「俺の話が退屈すぎてたまらんようだからもう終わるぞ。」

「へ?」

あ、やべ。

前を振り向こうとするとさっきよりも強い力で

バシッと頭をしばかれた。

キーンコーンカーンコーン

「・・・・・・すんません。」

先生のマジギレに本気で謝る俺だった。


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