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第二十九話 銀のギルド長

描写が下手で申し訳ない。

こじつけ多いかも。



 ギルド長と共に展示場に足を踏み入れる。

 中にはすでに大勢の人々が興味深気に様々な作品を眺め楽しんでいた。

 ある人は忠実なアクセサリー、ある人は装飾品、ある人は剣、ある人は盾などなど実に個性豊かな作品ばかりだった。


「さて、アウェルのはこれ以上に私を驚かせてくれるというのか? ああ、安心しろ、今回はドッペルは使用していない」


「……今の言い方だと、何時もは使ってますって言ってるようなものですからね?」


 ギクリと肩を揺らしたギルド長は、まるで誤魔化すように先へ先へと進んでいく。もうちょっとペースを落として欲しい。俺はあそこまで小さくないから動きにくい。それに余りに小さくてギルド長を見失ってしまいそうだ。

 俺は急いでギルド長の後を追う。


「おや、あそこに人が集まっているな」


 するとギルド長がストップをかけ、ある一点に集中する。

 そこには他の展示品以上に人が集まっており、ワイワイと賑わっていた。

 

「アウェル、行ってみるぞ」


「分かりました。……まさか、あのはっぴ集団はギルド長ファンクラブか?」


 これはまさかと嫌な予感がしながらも、俺とギルド長は人混みを分けて作品の前に。 

 そこには俺の予想通り、銀に輝きちょこちょこ動き回っている三分の二ギルド長シルバーモデルが存在した。

 俺はギルド長の反応を見ようと視線を向けると、珍しくカチンと固まり驚きの余りポカンと口を開けていた。

そしてそれを見ていたギルド長ファンクラブのアホどもが大騒ぎ。


「「「生ギルド長キタ――――!」」」


 そんなアホ共の騒ぎ声で再起動するギルド長。

 俺は念のため、勝敗の結果を訊ねてみる。


「あー、ギルド長。俺の勝ちでいいですかね?」


「あ、アウェル貴様! なんて物を作ってるか!! 何だコレは何で動く何でモデルが私なのだ!」


「勝つためにはコレしかなかったとしか言いようが。そもそも素人に任せるからこんな発想が出てきちゃうんですよ。取り敢えず、今回は俺の勝ちってことでお願いしますね」 


「アウェル貴様……く、久しぶりに煮え湯を飲まされるとは」


 可愛げに動き回るギルド(シルバー)を見て悔しげに呟くギルド長。俺と言えば、あれ? 当初の目的なんだっけと軽く目的をボウキャクしてしまっていた。

 最初は期待されて頑張ろうとして……なんでこうなった?


「ま、まぁいいや。後で思い出すだろ。それよりもギルド長」


「む、一体何だ。というかその前に商談だ。この展覧会が終わり次第アレを私に売却しろ。規定以上の高値で買い取ってやる」


「いいんですか? 別に俺はそのままギルド長に差し上げてもいいんですけど」


「構わん、けじめだと思え。取り敢えず商談成立だ。それで、一体今度はなんなんだ?」


「実はですね、あのギルド長にはもう一つだけギミックがありまして」


「おい、まさか喋るとか言わんよな?」


「それは考えたんですけど、記録する魔道具が不良品だったので断念しました。代わりに、俺がこのギルド長に触ると――」


「――触ると?」


 俺はギルド長の視線を受けながら、ゆっくりと手をギルド(シルバー)に当てる。

 そして魔力を流し込み、俺の体と回路を繋ぎ循環させる。すると、


「魔力を定期的に循環させ、中に組み込んだ回路と魔結晶の欠片が反応して……光るんです」


「……は?」


 一体お前は何を言っているという顔をされたので、魔力が行き渡ったのを確認してから最後の回路を解放。

 魔結晶に魔力を流し込む。

 そして、銀のギルド長は光り輝いた。ついでに動きもよくなる。

 天使やぁ―――! と壊れ始めたファンクラブ会員たち。

 一般人はそれほどでもないが、光り動くギルド長を見て可愛いと言葉を洩らす。

 本当なら台座ごと移動ではなくロボットのようにしたいとも思ったものだが、流石に技術が足らず残念な結果になってしまった。

 だが、皆の反応を見て俺は満足していた。 


「仕組みは簡単。彫像の中に魔力を通しやすいように回路を作ります。そして彫刻の中心部に魔結晶の欠片を埋め込んで、魔力の循環の技術を使って彫刻を俺の手足の延長と設定。俺から彫刻へ、彫刻から余った魔力が俺に戻る。といった風になってまして。欠点と言えば、結構練度の高い循環に加え、魔力の流れをある程度感じ取れるようになる必要になることくらいですかね」


「それはつまり、お前以外には光らせる事は出来ないんだな?」


「まぁそうですね。今は全体に魔力を循環させられるのは俺くらいでしょうし。でも、ラインとかミト、それにハーレ辺りは扱い上手いですしその内出来るようになるかと。まぁ、魔力の流れ自体はスキル使って微妙な線なので他の人がどうか分かりませんが。」


「では、もう一つ問う。その技術を教えられるのはお前だけか?」


「あー、まぁマイナーな技術ですし。この街ならばそうじゃないですか?」


「そうかそうか。……帰り道には気をつけろよ?」


「ギルド長!?」


 何だろうか、最近夜道に気をつけろと言われることが多くなったような?

 気のせいであって欲しいと切に願う。

 ちなみにこのギルド(シルバー)の詳細だが、彫刻本体はギルド長まんまである。観察眼に加えて彫る時の道具を魔力で強化した上で、強引に魔力を表面に流し込み想像の中のギルド長像をトレースし大体の形を整えた。削って彫って、不格好な部分は圧縮した魔力の波で強引に削ったと言うこと。それと中、つまるところ内側も俺が強引に圧縮した魔力を押し込み血管の様に魔力を通しやすい回路を形成した。

 出来上がったとき、俺物づくりに転職しようかと思った。よくよく考えてみれば、ここまで上手くできたのはモデルがギルド長であったからであっさり断念したが。

 ちなみに外側を整える時に使った技術は、魔力を通しての物質圧縮の劣化版。魔力を物質に纏わせ、それごと圧縮するという技術。まぁ、空想の技術と言われていて使えないが、それを目指した研究者のレポートやら資料やら他の技術やらを集め総合した結果できたのがこれだ。表面に魔力を纏わせ、強引に押しつぶすようにしながら削り取る(・・・・)。そうやって押しつぶそうとする魔力を感知し、そこを彫ることによってその魔力の後押し援助を受け彫りやすさと彫る場所が明確に分かり精度が上がる。そう、実際の効能はまったく別だったりする。が、見栄を張って劣化版とさせてもらう。

 内側に使ったのは魔力糸と呼ばれる技術の応用だ。この糸は魔力で編まれ、密度が高ければ高いほど斬れ味と威力が増加するというもの。俺はそれを使用しつつ圧縮を加え威力を増加。更にそれをドリルの様に回転をかけ慎重に回路を形成したのだ。

 ただ、前日に客人が来た際に多少乱暴に扱ってしまい、確認の際に回路が歪んでしまったのに気づくし床はへこむしで大変だった。歪んだ回路では循環が上手くいかないし、かと言って一度掘った回路の歪んだ場所を見つけ矯正するのは難しく、難航した。そこで、一度魔力を回路に流し、流れが悪くなったところを感覚で理解し、もう一度掘り直した。まぁこんな切欠で魔力の流れの感知など、スキル使って必死にやっていた。

 次に魔結晶だが、これは以前アミルが触媒として使った際に砕けた結晶の欠片を再利用したものだ。アミル程の使い手が使えば、例え欠片になろうとも微弱ながら魔力を内包するようになる。これに属性魔力を流し込むだけで魔力が蓄積されその属性にあった光りが発生する。後はそれを回路に流し込むだけで彫刻全体が光り輝くと言うわけだ。当然流す属性は『光』である。魔力、と聞くと害があると思うかもしれないが、これは魔法の一種、有害設定は術者の方で変えられる。

 それと光る仕組みだが、実は一回失敗した。いや、銀に透明度なんてないのをすっかり忘れていて内側から光る様に設定していたのだ。当然光るわけもなく、仕方ないので回路を表面まで伸ばした上で、台座がら上へと光りが放たれるようにして問題を解決した。

 発生した魔力自体は台座に組み込まれたモーターを動かしつつほんの少し残存した魔力が劣化バッテリーに行くようになっている。ここでまた有害設定の変更がいるが、小手先だけが器用な俺からしてみれば切り替え技術の一環でしかない。流石にゼンマイの動力だけじゃ今一だったからな。

 どうだろうかこのツギハギだらけの彫刻は。見ためはいいのだが中身は実に滅茶苦茶。実際光っているのは台座から照射された光りからがメインであって、回路の意味は殆ど循環以外効果がなかったりする。まぁ素人じゃあこんなものだろう。流石は中途半端な技術を総動員させた結果だ。正直シルバー以外も使っているので不安だったが問題なく展示されたようだ。

 ギルド長はちょぃとお怒りのようだが、まぁ俺的には満足できたのでよしとする。ギルド長にも勝てたし。


「く、見てられん! ギルド長室に帰る、アウェル、お茶をいれろ! とびきり美味いのを。今の私は口うるさいぞ……」


「了解です。あーまぁ機嫌直してくださいね?」


「それはお前がいれるお茶次第、後、お茶菓子」


「気合いれて作らせていただきます」


 くるりとギルド長室に向かうちみっこい背中を追って、笑いながら俺もまた踵を返そうとしたところジッと視線を感じとった。まさかまた殺気とか妬みかとも思ったが、実際は全く違うものだと分かる。

 恐らく興味惹かれたという類のものだと思う。

 もう視線で相手の考えが軽く読めるとか、生きることに特化しすぎているような気がしてきた。

 

「あーこれは本当に君が作ったのかい?」


 するとあろうことか、視線の主が直接俺に話しかけてきた。

 性別は男、髪はボサボサの白髪、体型的には……ヒョロ男と言ったところだろうか。白衣っぽいものを来ていることから研究者だと思われる。というか何だろうか、彼を見ているどうもアミルに近い感覚に襲われる。

 本能が、コイツは面倒くさい奴だぞと告げているような気がするのだ。


「まぁそうですね。ああ、所有権はすでにギルド長にあるので差し上げる事はできませんよ?」


「それはさっきの会話から分かっているよ? ただ、ちょっとでいいんだ、ちょっとだけ――分解させてくれないかな!?」


 ふんすーと鼻息荒く迫ってくるヒョロ男。

 ああ、マズッた。会話した時点でアウトだったこの人種。

 ガッチリと握られた俺の手。少し離れた位置から、


『研究者風の男と訓練所の教官!? あ、なにかしら、何か、何か素晴らしい作品が降りてこようとしている――ッ!』


 などとは聞こえない。聞こえないったら聞こえない。

 はぁと一度ため息をつくが状況は変わらない。ああ、どうしたものかと考えあぐねていると、この状況を破った者達がいた。それは奇しくも、先程まで騒いでいたギルド長ファンクラブの会員たち。


「貴様か、貴様がこのギルド長を壊すと言ったのか!」


「この幼女を分解するだと? 変態め!」


「この神々しい彫刻はギルド長本人の隣がふさわしい! というかその光景が見たい!」

 

「ちょ、ま、痛、痛たたたた!?」


 ゲシゲシと踏まれ蹴ったりされているヒョロ男。

 俺は助けようとも思ったが、案外楽しそうにしているので放置を決定。無視してギルド長室に歩きだした。


「もう会うこともないだろが、達者でな」


 だが、コレが後に俺の元に変人がやってくる原因となるとは思ってもいなかった。





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