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第十話 新たな一ページ……黒歴史のな








 そしてやってくる、訓練開始の日。


「……さて、今日から始まるわけだが…………誰が行く?」


 ちなみに、俺の言う誰が行く? とは、最初の挨拶のことである。


「んー、俺は止めておこうかな。なんだか、一瞬で嘗められちゃいそうで……」


「そうか? コンルなら、数人の女子を落として上手くやれるだろ」


「あのね、アウェル。そんなことになったら……翌日俺は何処にもいないよ?」


「…………次、誰かいないか?」


 暗い表情になって、「それでも、好きなんだからしょうがないんだけどさ……」と呟くコンルから話題を逸らす。 

 ノロケが混じってるので尚更関わりたくない。……リア充め。


「……ワシがやってもいいが…………初日から脱落者がでんか?」


「あー、確かに。でも、それならそれでいいような…………」


 すると何処からともなく飛んでくるダーツ。

 カツン、と俺の座る椅子の背もたれへと刺さる。位置は……顔の真横だ。


「……OK、次」


「まさか、私にやれと?」


 有り得ませんね、と呟くネル。


「……だよなぁ。特に相手は貴族がいるし…………」


 実は貴族と言うのは男尊女卑が激しいところがある。

 一応、何か問題が起こらないように誓約書はかかせるが……出だしから女となると面倒な事になるかもしれない。


「消去方でいくと……今回は俺か…………」


 取り敢えず、出だしを上手く決めてから、貴族の男尊女卑の意識を叩き直す。

 貴族様よぉ、お前らは分かってねえよ……女の恐ろしさを。

 というか、一回ネルが凍結させちゃえば女の恐ろしさを理解するんじゃ――――――――


 そして飛んでくるダーツ。今度は、俺の眉間に。


「!?」 


 流石に驚いた俺は体のバネ全てを使っての全力回避。

 何とか頭上を通り過ぎていったダーツをやり過ごせた。


「…………分かってますよギルド長。ちゃんとやりますので帰ってください」


 すると教官室の角が少しブレる。

 そこから現れるギルド長。これは残念ながら何時ものことである。

 

「最初からそう言えばいいのだよ。アウェル、しっかり、やれよ?」


「ヤー。お任せあれ」


「よろしい。諸君らもしっかりと頼むぞ? 今回の訓練は、結果が評判に繋がるのでね」


 頷く俺以外の三人。

 ギルド長は満足したように頷くと、俺を一瞥してから教官室を出ていく。



 …………まさか、隠蔽系の魔法を使って見張ってるとは思わなかったな。

 まぁ何処かにいるとは思ってたけどさ。


「……と、言うわけで俺がやろう。無論、キチンとな」


 こうして初日の挨拶担当が俺に決まった。

 さて、どうするかな……。













 さぁ、思い出して床を転がりまくるようなあの羞恥を今ここに。




「初めまして。俺は今日から君たちの教官を務めさせてもらうアウェルだ。担当は総合基礎。ようは全体の基礎を教えることになる」


 俺の前にズラッと並ぶ三十六人。

 その全員が俺をジッと見てくる。


「さて、ここにいる三十六人は三日後のギルド試験に備えているわけだが……甘くみるなよ? 確かに、前回の訓練生は皆卒業しギルド試験に合格した。だが、あれは本人たちの意志あってこそだ」


 俺は三十六人に見つめ返す。


「彼らは足掻いた、折れなかった。幾ら這い蹲ろうと這い上がってきた。君たちも、それくらいの意志を持て! でなければ、何時までもここから抜け出せない!」


 すると一段と強い視線を向けてくるのが……二人。

 案の定、プライドの高い貴族二人だ。


「お言葉出すが……わたくしたち貴族が這い蹲る? ……ありえませんわ!」


「俺は貴族とかどうでもいいけどよ。それでも、格下相手にやれらやしねぇよ!」


 反論してくる二人。

 他の訓練生たちは苦笑いしている。

 恐らく、初めての顔合わせからこうだったのだろう。


「……君たちはたしか、レイウ・ファウストとキース・ウェルストンだったな。では、君たちのとっての格下とは……なんだ?」


「無論、貴族以外の全てですわ!」


「は、このお嬢様は。貴族でしか物を考えられないのかよ。……俺なら、俺以外の全てって答えるぜ?」


 にらみ合う二人。

 俺は二人の資料を思い浮かべる。



 レイウ・ファウスト、彼女は確か魔法が得意な少女。その上才能もあり家庭教師を抜きさり教えれるものがいないとか。その結果、高飛車に拍車がかかり両親困惑。

 根性を叩き直してくれ、と言うことでこの訓練場へ。




 キース・ウェルストン、彼は頭の回転の早い兄とは違い、冒険者を目指す。剣より魔法を使うが、魔法より剣の方が才能がある。

 しかし、自己中心的な性格故に孤立しやすく独断専行も多い為この訓練所にて基本を叩き込んでくれ、との事。



 ふむ、ようはこの二人の鼻をへし折って一から立て直せばいいのだろう?

 で、あれば…………




「よし、二人の言い分はよく分かった。……そこでだ。ここでの格下格上を認識してもらうために模擬戦を行いたい」


 ザワリと訓練生たちが動揺する中、好戦的な目に変わる貴族二人。

 ……釣れたな。


「場所はこの先にある訓練所の森の中で行う。君たちは……フォーマンセル。つまりパーティーを組んで行動しろ。そして俺たち教員四名をターゲットとし倒してみせろ。無論、実戦形式故になんでも有りだ」


 あちらこちらから「無理だ」と聞こえてくる。

 ならばもう少し餌をぶら下げようか。


「もし、君たちが俺たち教員を倒すことができたなら、そのパーティーには俺たちから各々奥義級のなにかを教えてやる。まぁ、習得できるかはわからないがな」


「……いいでしょう。受けて立ちますわ! わたくしが負けるわけありませんもの」


「俺もいいぜ。おい、お前らもやる気だせよ!」


 他の訓練生もワラワラとやる気を見せ始める。 

 やはり貴族、カリスマは元から高いんだな。


「よし。では今から三十分時間を取る。その間にパーティーを組み待機。三十分を過ぎたのなら森の中へ入れ。……以上」


 さて、後は三人に協力してもらうだけだ。……俺一人だと逃げ回るくらいしか出来ないからな。

 俺はそのまま踵を返し、教官室で待つあの三人になんて言おうか考え始めた。














 嘗めているのかしら。

 わたくし、レイウ・ファウストが教官とは言え庶民ごときに遅れを取ると?

 有り得ませんわ。わたくしと教官の間にどれだけ経験の差があろうと、才能がそれを覆すのですから。


「あの、レイウさん。取り敢えず作戦を考えませんか?」


 一人、緑色の髪を持つ少年が話しかけてくる。


「要りませんわ。わたくしが入れば全て解決。あなたがたは……そうですわね、教官の探索に勤しんで下さる?」


「え、でも、それじゃあパーティーを組む意味が……」


「あら、では何か妙案がありますの?」


「だ、だからそれを考えようって……」


「考えるだけ無駄ですわ。……それよりも、あのウェルストンよりも早く、多くの教官を倒さなければいけませんわ」


 緑色の髪の庶民は、顔を伏せて他の二人の元へと帰っていく。

 そして残る二人は、わたくしに向かって嫌な視線を向けてくる。


「まったく、これだから庶民は。ですが、わたくしは貴族、器の大きい者ですから許して差し上げますわ。オーッホホホホ!」


 そしてわたくしは、教官とウェルストンがどんな顔をするのか想像しながら日陰へと移動した。

 本当に、お父様もお母様も何を考えているのかしら。わたくしをこんな低レベルの所に放り込むなんて。

 ……まぁいいですわ。丁度いい機会になりそうですもの……わたくしに勝てる者などいないという証明の、ね。







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